開戦
お、何気に90話超えてましたね。100話で完結目指します。
「それじゃあ行ってくる。子供達は頼んだよ」
「コウさん、やっぱり私達も……」
シャルだけではなく、ミリィやヴィエラもついてこようとする。
「だからダメだって。お前達は子供を守ってやってくれ。な?」
「でも……」
ここにはレイン爺さんもいるし、近接戦闘が得意なミリィと後衛火力のヴィエラ。更に回復が出来るシャルと、女性陣のパーティとしてもバランスがいい。
ヒースさんにもお願いしてアイサ、アイラ姉妹もこちらに寄越すように伝えておいたからきっと大丈夫だろう。流石にヒースさん自身や団長は守るべき場所があるので頼むわけにはいかなかったが。
「シャル、コウの言う通りだ。俺達も子供を守るために戦いに行く。だから帰ってきたときに皆がいなくなっていたなんてことがないように頼みたい」
「アランさん……」
アランも俺と気持ちは同じなんだろう。シャルを説得してくれている。
「ほっほっほ。なに、あやつの性格からしてわざわざこちらに攻め入ってくるようなことはないじゃろうよ。きっとあちらでコウ達を待っておる」
「レイン爺さん。すまないがシャル達を頼むよ」
レイン爺さんがいるなら問題ないだろう。
「よし、それじゃとっとと行くとしようぜ! 一月も必要ねえ、一週間で終わらせてやる」
「イガさん、それじゃ移動だけで過ぎるって」
ゼデンス大陸は遠い。ましてや陸路でとなると尚更だ。一週間やそこらで着けばいいが……
「あん? こっちに来たときみたいに転移でパッと行けねえのか?」
「……あ」
そうだった。その手があったんだった。
「ヴィエラ、俺達を飛ばすことは出来るか?」
「もちろんよ、むしろそうやって行くと思ってたんだけど?」
はいすいませんでした。分かってなかったの俺だけですね。
「なら頼む。俺達三人が寄ってればいいな?」
「ええ、それでいいわよ。ほらとっとと準備しなさいよ。」
なんかやけに刺々しい。やっぱイガさんと離れるせいなのか? ツンデレか? ツンデレなのか?
「よしじゃあイガさん、アラン。こっちへ来てくれ。ヴィエラ達は巻き込まれないようにそのままな」
「分かってるわよ!」
そんなに怒らんでも。
ヴィエラが集中に入り、呪文を唱え始める。うーん、俺じゃ遠距離の転移は出来ないから正直助かるな。
「じゃあな、出来るだけ早く帰ってくるよ」
「アラン、コウ、イガラシ。絶対に帰ってくるのよ。全員無事で帰ってきて頂戴」
「ああ、三人で帰ってくるよ。必ずな」
俺達の身体が闇に包まれていく。もう少しか。
「シャル、ショウを頼む」
「うん、待ってからね。絶対帰ってきて」
当然だ。何度だって帰ってきてやる。
「任せろ。なんせ死んでも帰ってきたんだからな。今度も必ず帰ってくる」
「約束だからね!!」
その言葉を聞いた途端、浮遊感に包まれた。転移が発動したんだろう。
数瞬波間を漂うような感覚の後、急に現実に引き戻された。さて、ここはどの辺りかな……
辺りを見回してみれば荒れた土地が広がっている。それに魔素も濃く感じるし、恐らくゼデンス大陸に着いたと考えて間違いないだろう。
「おや、もう来たのかい? 随分早かったね」
「その声は……!!」
一度空から周りを見渡そうかと思ったがその必要もなかったようだ。
「フラッグ。お前を倒すために来てやった。どこにいる!!」
「せっかちだなぁ。そんなに急かさなくても大丈夫だよ。ボクは逃げも隠れもしないさ」
声はすれど姿は見えない。透明にでもなっているのか、あるいは離れた場所から声だけが届いているかのどちらか、か。
「あ、そうそう探してもボクはそこにはいないよ。魔王城から話しかけてるだけだからね。キミ達がアクオスを破壊してくれたおかげでこんなことも出来るようになったのさ」
「そうか。で、招待したからには当然案内してくれるんだろ?」
探すのも面倒くさい。とっとと案内させて倒して帰るとしよう。
「もちろんさ。ただキミ以外にも色々着いて来てるみたいだからね。ボクのところまで来る資格があるか試させてもらうよ」
「試す?」
何か罠でもあるのか?
「簡単さ。今からそっちに魔物の群れを向かわせるからね。この大陸にいる魔王を除いた魔族と魔物の全て。それを全部蹴散らして辿り着いておいでよ。それくらいして貰わないとわざわざボクが戦う必要すらないしね」
「そりゃどうもご親切なことで」
くそっ、こんなところで消耗している暇なんてないのに!
「ハッ、つまりテメェんとこに辿り着いた時にはついでに魔物の掃除も済んでるってことか。エラく親切じゃねえかオイ」
「そうだな、恐らく魔王はフラッグと共にいるんだろう。ならつまり目的の一つは果たせるってことだな」
イガさんとアランが頼もしいことを言ってくれる。そうだな、萎えてる場合じゃない。
「おやおや、随分強気なことで。それなら見事辿り着いてみなよ。ニンゲン」
「ああ、せいぜい首を洗って待ってろよ。堕神」
そしてプッツリとフラッグの声が途切れた。さて、どっちから来るか。
--ドドドドドドドッ!!
少しずつ地鳴りの音が大きくなってくる。早速お出ましか。
遠めでも分かる。大中小の魔物の群れ。--おいおい、一体何匹いるんだ。
「ボウズ、オレ達にゃ今更雑魚の数なんて関係ねえ。とっとと蹴散らしてあのふざけた野郎をぶっ飛ばす。それだけを考えろ」
「コウ、イガラシ。出し惜しみはなしだ。一気に行くぞ!!」
「だな。じゃあ行くとしますか」
デザート・イーグルを抜き放ち、開戦の狼煙をあげる。当然使うのはこの魔法だ。
「バアル・バースト!!」
銃口から激しい光が放出される。それは扇状に広がり、魔物の群れを飲み込んでいく。
だが流石はゼデンス大陸の魔物と言ったところか。半数以上は削れたようだが、まだまだ視界を埋め尽くすくらいの数は視認出来る。
「オレ達も続くぜ!! コン! 早速出番だ! 三尾で行くぜ」
『かしこまりましたごしゅじんたま!!』
さんび? それにコンって小狐丸の名前か。
あ、そうか小狐丸は刀の銘だから精霊の名前は別にしたのか。にしてもコンって……
「ファルコ、俺達も行こう」
『承知した』
アランも微妙に剣の銘と違う名前をつけている。あれ? もしかして刀の銘と精霊の名前が一緒なのって俺だけ?
『コウ、気にしなくていいよ。僕はこの名前気に入ってるしね』
「……フォローあんがとよ」
くそう、なんか釈然としない。
『コオオオォォォン!!』
「オラアアアァッ!! 吹っ飛べ!!」
可愛らしい声を上げながらコンが顕現する。あれ? 前見たときより少し大きいような?
「火炎車!!」
イガさんが言うが早いか、コンが弾丸となって魔物の群れに突っ込んで行く。あ、尻尾が三本だから三尾か、なるほど。
そんなことを納得している間にコンが炎を纏いながら高速で回転する。まさに縦横無尽に群れの間を駆け巡り、どんどん魔物を焼き尽くしていく。
可愛い外見とは裏腹にえげつない……
「ファルコ、風刃!!」
アランも続いて剣を抜き放ち、ファルコを呼ぶ。が、こちらは顕現ではないようだ。
「イガラシ! コンを上空へ!!」
「あん? コン! 跳べ!!」
イガさんがコンに指示を出したことを確認し、アランが剣を一閃する。これはアレか、光刃の風バージョンか?
と思っていたらやっぱりそのようだった。けどこれは……
「でかっ!!」
横の幅が半端じゃなく広い。10メートル以上あるんじゃないかこれ?
そんな感想を抱きつつ風刃が向かう先を凝視する。
……おお、でっかい魔物が見事に真っ二つだ。
「二人とも凄いな」
「なに、ファルコのおかげだ。それに師匠にもとことん鍛え直されたからな。俺に足りないのは豪快さだと言われて思いついたのが今の風刃だ」
成る程、確かにアランはスマートな印象があるもんな。でも豪快成分はイガさんで十分なんでほどほどでいいと思います。
「コンもまだまだこんなもんじゃねえぜ。まああんまりやり過ぎると消耗が激しいがな」
いや、あんまりやり過ぎないようにお願いしたいです。
「ほっほっほ。凄いのう。サニーや、よーく見とくんじゃぞ」
「何をのん気に言ってるのよ!! 先生達の邪魔になるじゃない!!」
……おやぁ? なんか聞こえるはずのない声が聞こえるぞっと。
「レイン爺さん、それにサニーまで……」
「せ、先生。違うんです。このクソジジイが勝手に……」
「悪いが便乗させてもらったぞい。なに、お主らの邪魔にはならんよ」
いやそりゃ爺さんの実力ならそうだろうがサニーは危険だろ。
「サニーちゃんはワシが守るから問題なかろう。そんなことよりほれ、まだまだ来るぞい」
群れの方を見れば確かにどんどん沸いて出てくる。
「くそっ、爺さん。サニーを頼むぞ!」
「頼まれんでもサニーちゃんはワシが守るわい」
「ハッ、全部蹴散らすから問題ねえよ!」
イガさんが威勢の良いことを言う。まあ確かにその通りなんだけども。
「コウ、付いてきてしまったものは仕方ない。イガラシの言う通り全部蹴散らしてしまおう」
おお、アランが豪快になってる。それにしてもアランの師匠って一体何者だ?
「まあ考えるのは後か。よし、じゃあ皆、行くぞ!!」
「「おう!!」」
--目指すは魔王城!! 待ってやがれ!!
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