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おデート-後編の前編-

頑張って書いたら8000字を越えてしまったため、急遽後編の前中後編に分けることにしましたorz


中編はお昼頃の予約投稿、後編は明日0時の予約投稿にしますね。

「……」

「…………」


 --マズい。会話がない。


 手を繋いで見たのはいいものの、最初こそ歩きながら他愛もない話でお互い意識しないようにしてたんだが、会話が途切れてしまってからというもの、次の話題が出てこず、ひたすら目的もなく歩き回ってる感じだ。


 要はなんとなく気まずいのである。だけどこの空気に負けて手を離したら本当に負け。そんな気がする。


 うーん、何か会話の糸口があればな……


 いつもだったら本当にくだらない話とかでいくらでも話してられるんだが、手を繋ぐというだけでこうも違うものなのか。


 いや、そもそも今までは色々誤魔化してたけど、俺が意識し過ぎてしまっているのが原因か。でもそれならシャルも無言だし……


「コウさん、どこまで行くの? もう街の外まで来ちゃってるよ?」

「あ、ああ、特に何も考えずに歩いてた。すまんすまん。」

「どうしたの? なんか変だよ?」

「いやこう、なんていうかな。俺も緊張してるというか……」


 さっきから情けない言葉の連発である。そのうち愛想つかされたりしないだろうか。


「そ、そうなんだ? それにしてもこの辺りは何もないんだね。流石は王都に続く街道ってことなのかな?」

「え? ああ、ここか……」

「何か知ってるの?」


 最初に魔物が王都を襲ってきたときにバアル・バーストをぶっ放したところだった。自分でも気づかないうちにこんなところまで来てたのか。


「えっと、以前魔物の大群が王都を襲ってきたことがあってな? ちょっとその時に……」

「……なんとなく分かったよ。これコウさんがやったんだね……?」


 はいその通りです。だってあの時初めて全力で魔法使ったんだもの。こんなことになると思わなかったんだもの。


「いやあの時はなんというか、若気の至りというか……」

「確かにコウさんは凄いと思うけど、あまり無茶ばっかりしちゃダメだよ?」

「はい、すいません。」


 怒られてしまった。


「でもほら、今や王都の名物に……」

「なってないと思うよ。」

「はい、なってません。」


 これは流石に穴だらけにした場所は見せられないな……あっちには近づかないようにしよう。


「それにしてもこの辺は少し空気が違うんだね。なんというか空気が濃いというか……」

「空気が濃い? うーん、俺はあまり感じないけどなぁ。」

「私も何て言っていいのかよく分からないんだけど、意識してないのに魔素が身体に流れ込もうとしてくるというか……魔素が濃いっていうのかな?」


 そんなことが分かるのか。というかもしかして俺が分からないだけなのか?


「うーん、魔素が濃い、か。俺はあまり感じたことはないけど、シャルが言うならそうなのかもな。」

「私もなんとなくなんだけどね。」


 この辺ってなんかあったっけな……あ、あれか。


「そういえばここでイガさん達とベヒモス倒した。」

「ベヒモス……って見たことはないけど、そんなに凄い魔物なの?」

「そうだな。超でかかった。イガさんとアランも苦戦してたくらいだしな。」


 確かにアレだけの魔物が死んだ場所なら魔素が濃くてもおかしくないのかもしれない。でもそうなると……


「キャー!!」


 って感じに安全とは言いがたい場所ってことだよな。


「シャル!」

「うん! 行こうコウさん。」


 俺はシャルの手を離して走り出し……かけてやめた。


 俺が走り出すと思っていたんだろう。シャルが俺にぶつかってしまった。


「きゅっ。」


 あ、ちょっと今柔らかかった。


「もー、なんでいきなり止まるんだよ。ぶつかったじゃない。」

「すまん、でも走るよりこっちの方が早いと思ってな。」


 そう言ってシャルから手を離す。少し名残惜しいが仕方ない。


「あっ……」


 シャルも急に手を離すとは思ってなかったんだろう。少し残念そうな声に聞こえたのは俺の自意識過剰だろうか。


「ちょっと我慢してくれよ?」

「え? コウさん何を。」


 我慢しろって言ったからな。異論は認めない。


 右手でシャルの腰を抱え、左手でベレッタを抜く。


「ブースター。」


 今やお馴染みとなった俺の便利魔法その一だ。走るよりも圧倒的にこっちの方が早い。


「ひっ! コウさん、ちょっと!! 速いよ! 速い!!」


 そう言ってシャルがしがみついてくる。柔らかい感触パート2、ブースターにこんな使い道があったとは考えもしなかった。


 --ただこの後が怖いが。


 バカなことを考えながら声のした方を目指す。


 この辺りの魔素が濃いということは、魔物が集まって来やすいということに他ならない。ということは誰かが魔物に襲われている可能性もあるし、実際悠長なことを言ってられないのも確かだ。


「見えた。やっぱり誰かが襲われてるな。シャル、フォロー頼む。」

「ううー、気持ち悪いよー。」


 急発進、急加速で宙を舞うという初体験により、シャルが少しグロッキー気味だ。気持ち悪そうな表情を見て少し反省する。


 前を見れば年齢は10歳にも満たないほどの少女がワイルドウルフに襲われていた。が、少し様子がおかしい。


 少女の後ろを数人の男がいて様子を伺っている。特に助けに入るような素振りもなく、少女が死んだら死んだで構わないという風だ。


 --まさか。


 もしかしたらかつてのシャルのようにどこかからさらわれて来た子なのかもしれない。


 いや、それを考えるのは後だ。とりあえず目の前の魔物を排除しなければ。


 とは言っても相手はワイルドウルフ一匹だ。俺はベレッタの銃口を向け、ファイアボルトを発動する。


 少女の目の前で焼けただれていくワイルドウルフ。相手が魔物とは言え、無慈悲に焼かれその命を落とす光景は、幼い少女の目にはどのように映るのだろうか。


「おい、アンタら。」


 俺は男達に声をかける。少女が誘拐された子なら保護をして親元に帰さなきゃいけないしな。




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