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お正月編-キサラギの野望- 第二幕

ようやく日常編って感じですね。最近ちょっとシリアス回が多かったのでちょっとはっちゃけてます。ご容赦を。

 さて、どこから手をつけたもんかな。


 オルデン君には掘りまくっていいって言われたが、だからといって王都の回りを穴だらけにするわけにはいかない。


 ある程度目星を付けて掘り進めたいところだが……


「なぁビゼン。」

『なにー?』


 羊の姿でふよふよと漂っているビゼンに声をかける。すっかりこの姿が定着しちゃったな。


「精霊同士って話が出来たり、他の精霊の存在を感じ取ったり出来たりするのか?」

『出来るけど、力の弱い精霊はまず明確な意思を持ってないから微妙かな。精霊の存在は感じようと思えば感じられると思うよ。あまりやったことはないけど。』

「ならこの辺で水の精霊が集まってそうなところはあるか?」

『ちょっと待ってね。調べてみるよ。』


 頼むぞ。お前の働きに全てが懸かっているんだ。


『うーん、あまり強くは感じないけど、ちょうどあそこの辺りかなぁ? ねえ、さっきから一体何をしようとしてるんだい?』

「それは見てのお楽しみだ。」


 ビゼンが指差した(指なのか?)方向に向かう。


 水の精霊がいるからといってここが正解だとは限らない。だが無差別に掘っていては王都の要塞化が捗り過ぎてしまう。


「さてさて、それじゃこの辺で、と。」


 デザート・イーグルを取り出し、魔素を取り込み始める。あまり規模が大きいと大変なことになりそうなので、出来るだけ弱めにしておく。


「ドリル・クラッシャー!(弱)」


 地面に向けてドリルクラッシャーを叩き込む。俺よりも少し大きいくらいのドリルは地面を掘削しながら、やがて見えなくなってしまった。


 しばらく待つこと10分ほど、既にドリルは消え去っているだろうが、地面からは何の反応もない。


「うーん、ここはハズレかな?」


 仕方ない、次だ次。


「ビゼン、もう一度頼めるか?」

『いいけどこれって一体何なのさ? そろそろ説明くらいしてくれてもいいんじゃない?』


 仕方のない精霊だな。やっぱり風の精霊だからせっかちなのか?


「温泉を掘ろうと思う。」

『オンゼン? それはなんだい?』


 まあ精霊だし知らなくても無理はないか。


「地球の文化で風呂という物があってな。暖かいお湯にゆっくりと浸かることで身体の血行を良くし、更に身体の汚れも落とせるという素晴らしい文化だ。で、温泉ってのはそれを更に良くしたものだと思っていい。」

『へー、身体の汚れを取るなら別にお湯じゃなくて水浴びでいいんじゃないのかい?』

「だからこそこっちの世界では風呂が流行らないんだろうな。特に人体についての知識とかも回復魔法で解決してしまう弊害かもしれない。身体の血行が悪いと頭痛や冷え性になったりする原因になるんだ。それに血が固まって死んでしまうこともある。風呂に入ればその可能性を低くすることが出来るし、意外と理にかなってるんだぞ。」


 なんで俺は人外に温泉の良さを語ってるんだろうか。


『なるほどー。で、風呂の話は分かったけど結局オンセンって何さ?』

「温泉は地面から湧き出るお湯のことだ。それもただのお湯じゃなく、お湯に溶け込んだ成分が人体にいい影響を及ぼすってことで、地球、特に俺の生まれた日本では色んな地域で名物の温泉があったりするんだ。何より気持ちがいい。」


 そう、こちらに来てから風呂に入る機会は一度もなかった。ただ暖かいお湯に浸かるだけの行為なのに、その施設がないというだけで入る機会を持つことが出来なかったのが口惜しい。


 けれどもはや四の五の言ってられない。俺の身体はOFUROを欲している。何より足が伸ばせて広々と入れるONSENを。この身体は欲している。


 そのためなら王も精霊も利用してやる!!


 それから俺はビゼンの導くまま、穴を堀り続けた。掘って掘って掘り続けた。


 けれども一向に温泉が出る気配はない。まさかこの世界には温泉など存在しないというのか。


 いや、俺はそんなこと認めない。いくら神がそう決めたからといって、諦めてなんてやるものか!!


 だが俺の意思に反して温泉は一行に湧き出る気配がない。くそ、徐々に魔力も練れなくなってきた。ここまでなのか……


『コウ、君はよくやったよ。けれどももう……』

「くそっ! 出るはずなのに。温泉はきっとあるはずなのに!!」


 項垂れている俺の肩に誰かの手が置かれた。


「ボウズ、諦めるのはまだはええ。言っただろ? 自分でやれることがある限りは諦めんなって。」

「そうだとも! ワシも話は聞かせて貰ったぞ。小僧、何故ワシらにも相談せん。」

「コウよ、お主はよくやっておる。だが人は一人では限界がある。しかしそれが二人なら、三人ならどうじゃ?」


 次々と俺に諦めるなと。一人ではないのだと声がかかる。そうか、俺は一人じゃなかったんだな。


「イガさん、団長、オルデン君……」


 俺は感動した。自分が一人ではないと知って。確かな絆がここにあると知って。


「さあボウズ、オレ達も協力するぜ。なんとしてでも温泉を掘り当てようじゃねえか。」

「うむ、ワシも久々に腕が鳴るわい。」

「イガラシ、ダンカン。今日はワシもやるぞ。皆が頑張っているというのに、それを見ているだけで何が王か。さあ、立つんじゃ。ワシらの戦いはこれからじゃぞ。」


 三人から手が差し伸べられる。俺はその手を取り、固く握手を交わした。


 そう、俺達はもはや立場がどうのこうの言うような関係じゃない。もはやソウルフレンドだ!!


「ドリルクラッシャー!!」

「村雲流剣技。土竜貫。」

「ウオリャアアア!! 食らえい!! 大爆斧!!」

「ヌゥゥゥン!! 打岩拳!!」


 四人が四人ともに最大の威力を持って穴を掘る。つかオルデン君。その技は何?


「HAHAHA、ワシも若い頃はちょっとしたもんでな。ミリィには内緒じゃぞ?」


 所詮カエルの子はカエルだったってことか。どう見てもそこらの武術家よりも腕が立つように見えるんだが。


 そんなこんなでみんなで穴を掘りまくった結果、結局温泉が湧き出ることはなかった。


「くっ、やっぱり、やっぱりダメなのか……!!」

「ボウズ……お前はよく頑張った。見ろ、この無数の穴を。オレ達はこんだけ頑張ったんだ。結果じゃねえ、そうだろ?」

「イガさん……」

「そうだな。小僧はよくやった。この穴は決して無駄にはしない。我々騎士団の手でこの王都を難攻不落の城塞都市へと変えてやるわ! ガッハッハ!!」

「団長……」


 ちなみにこの団長の発言から二年後。俺達の掘った穴は別名地獄の落とし穴と呼ばれ、王都が城塞都市と呼ばれるようになったのはまだ先の話である。


「うむ、若いということは良いものじゃ。どれ、皆疲れたであろう。湯殿を用意しよう。ゆっくりと身体を休めるが良い。」

「「は?」」


 思わず俺とイガさんの声がハモる。いや待て今このジジイなんつった?


「陛下、湯殿……ですか?」

「うむ、半年前にコウが空けたと思われる大穴から湯が沸いてきおってな。当初は飲料水として使えるかと思ったが、臭いもきつく、とても飲めた物ではなかったんじゃ。じゃから放って置いたらどんどん沸いてきおる。湯浴みくらいなら使えるじゃろうと思ってそのままにしておったら、ついには穴に湯が溜まって泉のようになったんじゃ。それからは湯浴みをした者達の報告でとても肌が綺麗になるといった報告や、温度もちょうどよく、浸かれば疲れも吹き飛ぶと評判になっての。今や王都でも人気の施設としてワシが管轄しておる。」


 あ、あの時の穴か。いや、それにしても、そうだとしたら……


「俺の努力はなんだったんだあああああああ!!」


 --バタンッ。


 一気に気力も抜け落ち、俺はその場に倒れ伏してしまった。


 その時に見えたイガさんの表情も俺と似たようなものだったから、その心中や押して測るべし。だろう。


オチとしてはありがちかな?

さて、お正月編も次で終わりの予定です。

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