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………。

清一の仮説を聞き終わった俺たちはそれぞれ思いつめた表情をした。


「確かに今までの行動や発言からすれば辻褄はあってる気がするけど…。」


 その仮説がまだ完全には信用できない俺は呟いた。


「まだ確証を得られたわけじゃない。この仮説を証明する一番手っ取り早い方法は石原氏のご両親と話をすることだ。」


 清一が答えた。


「そうね、でもどうやって両親と接触するの?仮説が正しければ親戚の私ぐらいしか会ってくれそうにないけど。」


「その通りだね。そこは鳴海氏に任せて僕達は仮説が正しいか調べてみよう。」


「木村はどうするんだ?」


「もちろん木村氏にも今からの僕たちの作戦は伝える必要がある。正信、木村氏とは連絡取れるかい?」


「電話してみる。」


 俺はポケットからスマホを取り出し木村に電話を掛けた。だが「プルルル」という着信音が続くだけで一向に出る気配がない。


「出ないの?」


 様子がおかしいと感じた杏子が言った。


「ああ出ない…。いや待て。」


 出ないかと思い切ろうとしたその時着信音が鳴りやみ、「うう…。」とうめき声のような木村の声が電話の向こうから聞こえてきた。


「木村どうかしたのか?」


『気絶してたみたいだ…。』


「気絶⁉どうして?」


 俺の言葉にただ事ではないことを感じ取った3人は心配そうな表情で俺を見る。


『それがな、…。ちょっと待ってくれ何だこの状況は。』


「何だ?どうしたんだ?」


 仮説の内容が内容だけに俺たちの中に緊張が一気に走る。


『いや、どうやらベンチに座らされていたみたいなんだが俺の周りにたくさんの人だかりができてるんだ。しかもスマホを俺に向けて写真を撮りまくってる。』


 確かに言われてみれば電話の向こうで沢山の人の声が聞こえる。それも笑い声が。


『いや待て、俺の服装が変わってる。真っ白なスーツ?ん?ちょっと待て………。』


 そう言うと木村はしばらく黙ったかと思うと。


『なんじゃこりゃー‼』


 あまりの大声に驚き思わずスマホを床に落っことしてしまった。他の3人も受話器からの声に驚いたのか目を丸くしている。


 何だ⁉


 俺はとりあえずスマホを拾い上げ液晶画面にひびが入ってないことを確認し話に戻った。


「どうしたんだ⁉」


『今俺の姿をガラスで見たんだが。お、俺…。』


「何だどうしたんだ⁉」


 どうやらただ事では無いらしい。


『お、俺今カー〇ルサ〇ダースになってるーーーーーーーー!』


 ……………。


 俺たちは無言で顔を見合わせた。


 とりあえず無事そうだな。


 俺はスマホの画面に映し出された受話器が下がった記号を指でタッチした。 


「いや待って待って肝心なことを木村氏に全く言ってないよ。」


 焦ったように清一が言う。


「やべ、思わず切っちまった。」


 だがほどなくしてお目当ての相手から折り返し電話がかかってきた。


『おい、切らなくてもいいだろ人が大変な目に合ってるというのに。』


 確かに気が付いたらカー〇ルサ〇ダースになってるという経験がない俺にはその気持ちは計り知れない。


「悪かった。理由は自分でもわからないんだが反射的に切ってしまった。それでどうしてそんなことに?」


『ああ、それなんだが誰がやったとかなんとなく予想はできてるんだが。ちょっと話が長くなりそうなんだ。』


「なるほどな。ちょっと待ってくれ。」


 俺はこちらの会話が聞こえないようにスマホの音を拾う場所を手で押さえた。


「どうやら説明すると長くなるらしい。それならいっそのこと合流して話をするか?」


「そうだね。とりあえず木村氏と合流することにしよう。」


 俺は通話を再開する。


「こっちも話したいことがあるんだ。お互い話が長くなりそうだから一旦合流しよう。木村は今どこにいるんだ?」


『俺は今さっきまでケン〇ッキーのベンチに座らされていたんだがとりあえず日の出公園に向かってる。幸いもともと来てた服は袋に入れられて足元に置いてあったから。』


 なるほどその格好でそこのベンチに座らせられていたのか。そりゃ人だかりもできるってもんだ。


「わかった。とりあえず俺たちも日の出公園に向かう。そっちで合流しよう。」


「わかった」という木村の返事は心なしか疲れているように思えた。


 まあ無理もないな。


 とりあえず俺たちはお会計を済ませ原田さんの車に乗り込み日の出公園へと向かうことにした。杏子が助席側の後ろの席に座る。俺は運転席後ろに座ろうとドアを開けようとしたのだが…。


車に乗り込もうとした俺はふと止まる。


「なあ清一、トイレットペーパー号はどうしたんだ?」


清一は確かファミレスに馬で来たはずだ、だが周りを見渡しても馬の姿は見受けられない。


「実は私の友人に持って帰ってもらいました。」


と車の運転席の窓から顔を出した原田さんが言った。


清一は「そういう事」とでも言わんばかりの笑顔で俺を見る。


ああなるほどね。


随分と俺も慣れて来たんだな。


何のツッコミも入れず素直に乗車した。

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