■第一話 転生した錬金術師は田舎で暮らしたい
転生したので田舎で錬金工房を始めます のイメージゲームを作成しました。
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「……ここ、どこ?」
目を覚ますと、知らない天井があった。
木製。
しかも、妙に古い。
沙樹はゆっくり身体を起こした。
「痛っ……」
頭がズキズキする。
最後に覚えているのは、仕事帰りの電車だった。
連日の残業。
ほとんど寝ていない。
コンビニで買った夕食を食べながら、
『明日こそ定時で帰ろう』
そう思ったところまでは覚えている。
その後の記憶がない。
「……まさか」
沙樹は自分の手を見た。
小さい。
細い。
明らかに子供の手だった。
「ええええええっ!?」
思わず叫んだ。
すると、部屋の隅に置かれていた鏡が目に入った。
恐る恐る近づく。
鏡に映っていたのは――十歳くらいの少女だった。
茶色い髪。
大きな瞳。
見覚えのない顔。
「……転生?」
口にした瞬間だった。
頭の中に、知らない情報が流れ込んできた。
名前。
年齢。
この世界の言葉。
そして――。
「錬金術?」
沙樹は首を傾げた。
どうやらこの世界では、魔法が存在するらしい。
火を出す。
水を作る。
傷を治す。
そして、素材を組み合わせて別の物を作る錬金術。
沙樹には、その才能があった。
しかも
「錬金術の適性……最高ランク?」
よく分からない。
けれど、戦闘能力はほぼゼロ。
剣術もダメ。
魔法も苦手。
体力もない。
ただし錬金術だけは異常に得意。
「……まあ、いいか」
沙樹はベッドに戻った。
「戦わなくていいなら、それでいい」
前世では仕事に追われ続けた。
朝起きて。
仕事へ行って。
残業して。
帰って寝る。
休日は疲れて寝ている。
そんな人生だった。
だから今度こそ。
「のんびり暮らそう」
沙樹は決めた。
それから数日後。
彼女は町外れに小さな工房を借りた。
家賃は驚くほど安かった。
理由は簡単。
ボロボロだったからだ。
壁には穴。
屋根には隙間。
床はギシギシ。
「……まあ、寝る場所があるだけマシかな」
沙樹は腕まくりをした。
そして、錬金術を使った。
「修復」
淡い光が広がる。
バキバキッ。
壁の穴が塞がった。
屋根の隙間も消えた。
床も新品のようになる。
「……便利すぎる」
沙樹は思わず笑った。
これなら快適に暮らせる。
問題は――食事だった。
町で買ったパンは硬い。
肉は高い。
野菜も保存が利かない。
そして何より
「石鹸がない……」
前世では当たり前だった。
手を洗う。
身体を洗う。
髪を洗う。
全部、石鹸やシャンプーを使っていた。
だが、この世界では石鹸は高級品だった。
沙樹は腕を組んだ。
「……作れるんじゃない?」
錬金術師なのだから。
材料を並べる。
油。
木灰。
香草。
そして少量の魔力。
「錬金」
ボンッ。
小さな煙が上がった。
煙が晴れる。
そこには白い石鹸があった。
「できた」
沙樹は石鹸を手に取った。
香りも悪くない。
試しに手を洗う。
泡立つ。
「……最高」
久しぶりに感じる清潔感だった。
沙樹は嬉しくなった。
「これなら毎日お風呂に入れる!」
そして翌日。
町の市場へ向かった。
そこで、沙樹は石鹸を一個だけ売った。
「これ、いくら?」
店主の老人が尋ねる。
沙樹は少し考えた。
材料費は安い。
だから
「銅貨三枚で」
老人が固まった。
「……三枚?」
「はい」
「本当に?」
「え?」
老人は石鹸を手に取った。
匂いを嗅ぐ。
指で表面を撫でる。
「お嬢ちゃん」
「はい」
「これ……どこで仕入れた?」
「作りました」
「……」
老人が黙った。
「錬金術で」
さらに沈黙。
沙樹は首を傾げた。
「何か変でした?」
老人は頭を抱えた。
「いや……」
そして、小さく呟いた。
「こんな値段で石鹸を売る奴、初めて見たよ……」
沙樹は知らなかった。
この世界で石鹸は、庶民にとっては贅沢品だった。
そして彼女が作った石鹸は、一般的な石鹸より遥かに品質が高かった。
しかし――本人にはそんなことはどうでもよかった。
「じゃあ、いっぱい作ろう」
その日沙樹の小さな錬金工房で、最初の商品が生まれた。
後に王都の商人たちが血眼になって探すことになる、
『泡立つ白い石鹸』の始まりだった。




