十二、学園
久しぶりのお友達です。
翌朝、菜月は姉と二人で登校した。
いつもは絶対に一緒に登校しない二人だが、今日は学園長に謝りにいくのである。
「菜月、緊張するとは思うけれどしっかりと質問されたことを答えるのよ」
菜月は内心、国王陛下に会ったばかりなのに緊張するわけがないと思っていたが
「分かってる」
と答えた。
「それならいいわ」
春香はそういった後に登校している生徒に「ごきげんよう」と挨拶した。
なにしろ並ぶと目立ちまくる二人は学校につくまでにずっと「ごきげんよう」というはめになった。
学校に着くと、二人は学長室に向かった。
「高千穂です」と春香が言うと、「入りなさい」という声が聞こえた。
「失礼します」二人はそう言って、学長室に入り、学園長の正面の椅子に座った。
「では、高千穂さん説明してもらいましょう」
「はい」
菜月が言った。
「私は二週間ほど前、リゼイン国の渚王子様とお見合いをいたしました。その時に」
「そこの前置きは生徒会長から聞きました。結論から言いなさい」
「はい。私の無礼な行いは不問。陛下からの処罰も今のところはありません」
菜月は渚と付き合っているという事はだまっておこうと思ったが
「その後、渚王子様と付き合いが始まったのですね」
学園長の一言で意味のないことになってしまった。
「その通りです」
「では、高千穂さんの今後についてですが、お咎めなしとします」
「その理由をお聞きしてもよろしいですか」
菜月の記憶によれば、無断欠席は反省文など軽いものだが、罰はあるはずだ。
「それは、あなたが無断欠席をせずにそのまま休日まで渚王子様に謝りにいかなかったら、カマール国は危険にさらされていたかのしれません。あなたの行動は正しかったのです」
「ですが、そのような事への火種をまいたのは私です」
「そうかもしれませんが、その事に関して私は高千穂さんを罰する権限はもっていません。ですから、お咎めなしです」
「分かりました」
菜月と春香は学長室をあとにした。
「ごきげんよう」
菜月は廊下で三人の姿を見つけて声をかけた。
「あら、お久しぶりですわ。ごきげんよう」
早苗が言った。
「今まで渚王子様のところにいたんでしょう?」
「どんな方でしたの?ご立派な方でしたか?」
理沙と真紀が言った。
「ええ。まだ、お二人は知りませんの?」
「もしや、何かあったんですか」
真紀が菜月の目を覗きこんでいった。
「私、今渚様とお付き合いさせていただいてますのよ」
「えええっ?!」
三人の声が廊下に響いた。
「お静かに」
「すいません」
先生に注意され、三人は頭を下げた。
「その噂ほんとうだったんですね」
理沙が驚きつついった。
「噂?」
真紀が言った。
「ええ、昨日渚王子様が高千穂令嬢を追いかけて国王に了承を得るためにカマールに来たという噂ですわ」
「菜月さん、本当なんですの?」
「まあ、本当のことですわ」
菜月は口元に微妙な笑みを浮かべていった。
「でも、別に特に何かしたわけじゃないのよ。ただ、二人で町中を歩いただけだから」
「ええっ!」
今度は先ほどよりも小さな声が響いた。
「二人きりで歩いたの?!お供なしでですか?!」
「そうですわよ?特に不思議なことじゃないと思うのだけれど」
「何を言っていらっしゃるの?菜月さんは渚王子様のこと何にも分かってないのでしょう!」
「そうかしら。だいぶ詳しくなったとは思ってますのよ」
「「それは違います!」」
早苗と理沙が声をそろえて言った。
「渚王子様は女を嫌っているというのは有名な話ですわよ」
「それに、お見合いもすべてその場で破談にさせるという伝説ももっている方ですのよ」
「そんな伝説をもつ渚王子様が女性と二人で歩いたというだけで前代未聞!」
「大事件ですのよ」
「「分かりましたか?!」」
「ええ・・・まあ」
菜月は二人の熱気におされ気味だ。
「それなら、どうやって渚王子様をおとしたんですの?」
真紀が言った。
「特に何も、おとそうとはしなかったですわよ。一度お断りしましたし」
「断るってどういうことですの?」
理沙が言った。
「私、学生の間は恋愛をしないことにしてましたから、一度告白されたときお断りしましたのよ」
「ええええええええええっっっっ!!!!」
三人の声が校舎を震わせた。
「そこの四人うるさい!反省文っ!放課後までに提出するように!」
近くにいた先生がいった。
「菜月さん、どうして一度お断りしましたの?」
放課後、教室で4人で反省文を書きつつ話題は菜月と渚の事になった。
「言ったでしょう?私は婚約者をつくるつもりがなかったの」
「そんなことでお断りしたの?」
「そうよ。今も婚約したわけじゃないのよ」
「えっ!」
早苗が言った。
「婚約してないとはどういうことですか。婚約したのとそうでないのでは天と地ほどの差がありますのよ」
「分かっているのよ、私だって。でも、婚約したら学園に来れないのですもの」
「理由をお聞きしてもよろしくて?」
理沙が言った。
「リゼイン国の王族は婚約したら、相手と一緒に寝なくてはいけないの。それは代々決まっている事のたいなのよ」
「そうなんですのね。」
「ええ。でも、渚様は私と婚約したいからどうなるのかは分からないけれど」
菜月は最後の一文を書きながら言った。
「お二人は両思いなんですの?」
真紀がふと思い出したように言った。
「真紀さん、それはないと思いますわよ。渚王子様は生粋の女嫌いなのだから、きっとお父様に進言されたのよ」
早苗が言った。
「それなら、小国のカマールの公爵令嬢を相手に選んだ理由が分かりませんわ」
「菜月さんはお綺麗ですもの。リゼイン国にほしいと思ってもおかしくありませんわ」
「ですが」
「お二人とも」
理沙が意味深に視線を送った。
真紀と早苗はそっと菜月の方をみた。
菜月は引きつった笑みを浮かべた。
5月です。
GW、楽しいです。




