10
窓ガラスに激しく打ち付ける雨と、大きく響き渡った雷の音で僕は目を覚ました。
辺りを見渡す。ここはどこだと……。
僕は目を覚ますと、どこか知らない、家のソファ―で横になっていた。ソファ―の背には、古い窓ガラスがある。
そこから僕は外を見ると、春の嵐でも来たのかと思うくらい、外の天気は荒れていた。
部屋の中は、壁もフロアも基本的には木材で、木の机や本棚の上にはアンティークの時計や本、人形といった雑貨が飾ってあった。
そして、この部屋から下に続く、木製のやけに広い階段を下りて、下の階を覗いてみると、店のようなカウンターがある。
一階は、たぶん店なのだろう。二階の部屋よりも多くのアンティーク雑貨が、ショーウィンドーや、付け棚の上に並んでいた。
僕達の住む街にこんな、こじゃれたアンティーク店があったのだろうか、と僕は思いながら、階段を下りて、何があるのかを見に行くと、店はこの時間帯は閉まっているのか、扉には『OPEN』の下げ看板が内側を向いてかかっていた。
僕は棚に飾ってあるアンティーク雑誌を順に見てまわる。部屋自体は薄暗いが、別に見えないわけではない。
そうしていると、僕は木の壁に飾ってあった、一枚の絵画にふと心を奪われた。
その絵は、うえ半分が、太陽と青空がある地上が表現されていて、大きな鯨が、海の中からその体半分を空に向かって突き出し、水しぶきをあげている。さらに絵のした半分は、海の底が表現されており、海の底には街頭や、建物の光が輝く、大きな街があった。
そして、その中でも僕が特に気になったのは、その海の底にある街に落ちてくる、白い服を着た少女の姿だ。その少女は、まるで地上の世界に身を付きだす鯨の体から、手をうっかり放してしまったというように、地上を目指して手を伸ばしながら、街に向かって落ちていた。
この女の子はもしかしたら……。
と、僕が思った瞬間、一階のアンティーク店の証明が付けられ明るくなった。
「湊君……?」
僕の名前を呼ばれた方を向くと、階段の上に杏佳の姿があった。
『……大丈夫?』
杏佳は、僕に向かって首を傾げてそう言う。