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第12話:立ち食いの……

ふ~、疲れた。


今日やらなくてもいい仕事を片付ける為に、少し残業をして遅くなってしまった。

明日はこの前の合コンメンバーでの飲み会だ……。


行きたくないと北野に言っても、逆に来てくれないと困ると言われて参加する事になってしまった。


晩飯はどうしようか?


もう20時をとっくに過ぎている。スーパーで買い物をして飯を食う気になれない。


食って帰るか。


何を食べようか?

晩飯だから多少はアルコールが欲しいが、この時間から飲みだすと帰るのが遅くなる。

今日はサッと食べて、パッと帰りたいな。


もうすぐ最寄り駅だ、どうしよう?


考えている間に駅に着いてしまった……。


(このまま行こう!)


いつもの駅から2駅先で降りる。

階段を下りて改札を出れば目的の店が目の前にある。


(良かった、混んでない)


店に入る前に、タバコを吸っておく。


会社を出る前から吸ってなかたし、俺は飲みの席でも食べながらタバコは吸わない。

まして、これから行く店では他の客の迷惑にもなるかも知れないから。



タバコを吸い終わり、道路を渡って暖簾をくぐる。


「いらっしゃい、飲み物は?」


愛想はないがこれでいい、俺は常連ではないのだから。


「瓶ビールで」


簡潔に答える。


「瓶ビールです」


若いオニイサンがビールとグラスを出してくれる。


ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ!


クゥーーーー!


仕事の後の1杯が堪らん。冬でもこの美味さは健在だ!


「何にします?」


相変わらず愛想がねぇな。


「マグロとタコで」

「マグロとタコ」



「ハイよ、マグロとタコ」


俺の前に、マグロとタコの握りが置かれる。(流石に早いね)


俺が今日の晩飯に選んだのは寿司だ。寿司と言っても色々な店がある。

カウンターだけの高級店や庶民派のリーズナブルな店に、回転寿司。


俺がいる店は駅から徒歩10秒の立ち食い店だ。


横に5人も並べばキツい程の狭い店だが、侮ってはいけない。

この店の本店は近くにあり、この店と本店の他にも2店舗もある有名な寿司屋なのだ。

ちなみに、立ち食いはここだけで、普通の庶民的な2店舗と、回転寿司店が全てここから3分圏内にある。


立ち食いだが職人が握り、値段が安い。本当に安い。(大事だから2度言った)

値段は2種類しかなく、明朗会計で味は普通。


今の俺には十分な店だ。


寿司ネタは全店共通で、たまに本店にトロが無くなったとか連絡がきて、慌ててネタを持って走る姿を見る。


回転寿司店はロボットが握る事を思えば、プロが握るこの店の寿司で満足できる。


ふっ、マグロは普通にマグロだが、これでいい。


この値段だからこの味でいい。


おー!タコが美味そうだ。この店のタコは茹でたタコではない。生のタコだ。

生故の弾力と柔らかい身の食感が良い。甘ダレなのが憎いね。


口の中に甘ダレの余韻が残る内にビールだ。


ゴク、ゴク


これが意外に合うんだ~。(熱燗はもっと合うよ)


1貫ずつ残ったマグロとタコを食べ終え、何を頼むか考える。


俺意外にも2人程の客がいるが、好きなモノを注文し、静かに寿司を楽しんでいる様だ。

立ち飲みや立ち食いの良い所は、手軽に済ます事ができ、自分の世界に浸れるのが良いと思う。


たまにはこんな日もいいモンだ。


「エビとシメサバで」

「エビとシメサバ」



「ハイよ、エビとシメサバ」


相変わらずデカイエビだ。

ここのエビは、回転寿司の方では上エビとして提供されるワンランク上のエビなのだ!

このエビが安い方の値段なんだから、食べなきゃ損だよ~。


シメサバちゃん、君と会うのは久しぶりだ。なかなかタイミングが合わずゴメンよ……。

地味に好きだが頻繁には欲しくない。そんなシメサバが愛おしい。




お~さぶっ!


言い忘れていたが、この店は屋台の様な造りで、背中は外気に晒されている。ビールで身体が少し冷えたな……。


「熱燗ください」

「熱燗ね」


湯煎で温めた熱燗をコップに入れて、オニイサンが前に置いてくれる。


「どうぞ、熱燗です」


ズズッ


口で迎えに行かないとこぼれる。


あー、染みるわー。


ここの銘柄は俺が普段から飲んでいる一般的な日本酒なのが嬉しい。間違いがないから。


「ハマチとタマゴで」

「ハマチとタマゴ」


簡単な復唱の直ぐあとに皿が置かれる。(早いね)


おう、肉厚に切られたハマチ。この時期の魚は全体的に脂が乗って美味しいわ~。


タマゴも美味い。

実はこの寿司ネタに使われているタマゴ、目の前にいる無愛想なおっさんが焼いているのだ。それもだし巻き玉子風で。

最近の寿司屋では自分でタマゴを焼かずに、専門の業者から買っている店も多いのだが、ここはちゃんと焼いている。だからこの店に来たくなる。


ジューシーな出汁の風味が絶品だ。


酒だ、酒。


ゴクッ!


この一瞬が永遠になればいいのにな。



そろそろ高い寿司にいくか。


高いと言っても2貫で420円、安い寿司はその半額。なんて安いのだろうか⁉

俺の流儀として、安い方の寿司は2種類を同時に注文する事にしている。

お会計は皿の数をカウントする為、210円の寿司を同時に2種類頼むと420円の皿で出てくる。店員に手間をとらせたくない。


この店に来たら必ず注文するのが【アワビ】だ。

小さいアワビをスライスしているが、胆を焼いて寿司に添えてくれるんだ。(小さいけど)

これが熱燗に……、言わなくても解るだろ?


「アワビください」

「アワビね」


胆を網で焼き、焼けるまでの間に握る。

この瞬間、胆が焼ける匂いが漂い、匂いだけでも酒が飲めそうで怖くなる。


「ハイよ、アワビ」


持ってました!


ふー、ふー、パク!


んーーーー!


ホロ苦い胆のコクと旨み。死んでもいい!


いっそ、今死にたい程に幸せだ。


コリ!コリ!


アワビの食感も良い。安物のアワビと知っていても良い。

だって、胆焼きが付いて420円で文句は言えないし、言うヤツがいたら店に代わって俺が殴ってやんよ!



はーー、幸せ。


〆といこうか。


「うなぎで」

「うなぎね」


俺の注文と同時に、2切れのうなぎが網で軽く焼かれる。


軽く焼き直して握るうなぎの寿司が絶品なのだ。


最近は鰻が高額になり過ぎて食べる機会が減った。この店でも以前は、うなぎの握りは安い方の値段で提供していた……。悲しい世の中だ。


「ハイよ、うなぎね」


タレが焦げて香ばしい香りがする。


これもプチ贅沢だよな。


味わって食べよう。


パク!ハフ!ハフ!


温かいを通り越し、熱いうなぎの身と人肌のシャリが混ざり、タレの風味が全体を包む。


今すぐ死にたい!


あと1貫。


パクッ!ハフ!ハフ!


やっぱり美味い……。


寿司の風味が残る内に酒!


ゴクッ、ゴクッ


はぁ……。



満足した。


もっと食べられるが、このくらいが立ち食いにはちょうどいい。

立ち食いに長居は似合わないし、不格好だ。


「お勘定お願いします」





「ありがとうございました」


最後まで愛想がない声を聞きながら、暖簾をくぐって店を出る。


おーさぶっ!


コートは着ているが、マフラーもいるかな?


明日は飲み会か……。

お寿司は好きですか?


皆さんの好きな寿司ネタは何ですか?


その土地にしかない寿司ネタや寿司がありますよね?


関東ではうなぎの握り寿司が無いと聞いた事がありますが、本当ですか?

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