光、その先に
翌朝、俺は一人でロイの雑貨屋へ転移した。
「よぅ、兄ちゃん。約束の武器は出来てるぜ」
店のカウンターに頼んでいた武器が並んでいた。
「ありがとうロイ。それと、ついでと言ってはなんだけど、このワンドを壊さないで外観だけ変えてくれないか?」
「こりゃぁ、前に俺が兄ちゃんにやったワンドじゃねぇか?ま、いいだろ。すぐに出来るからちょっと待ってろ。出来た武器でも振ってるといい」
ロイは店の奥に引っ込む。俺はカウンターの武器を一つずつ手に取り振ってみる。
小太刀を鞘から抜くと青みがかったアダマンタイトの刀身が光る。前回造ってもらった小太刀はメトで一番の鍛治師の物だったが、ロイが鍛えた刀はそれ以上の輝きを放っている。そもそも素材自体が違うのだが、手に持っただけでロイの鍛治師としての腕前が並外れていることがわかる。
俺は手に持った小太刀を鞘に戻し、大剣を手に持つ。持った瞬間に柄に嵌め込まれた魔石から魔力が俺の中に流れてくるのがわかる。
すぐにでも振りたくなり、外に出て大剣を振るう。
両手持ちで一閃すると剣身の青い残像を残し、まるで空間まで切り裂いているような感覚が手に伝わる。俺は夢中になって大剣を振るう。
実際には何も切っていないのに振るうごとに魔力が流れ込んでくる。
「周囲の魔力を変換してるのか?ハハハ……。こいつはスゲェや」
「どうだ。スゲェだろ?その魔石の効果かわからねぇけどよ。魔力を吸っちまうんだぜ」
「あんたは最高の鍛治師だよ。こいつは伝説の武器級だ」
「伝説の武器か!そいつはいいや!六英雄の武器にも負けねぇな!ガハハハハハ。それと、ほらよ!急造りだから強度は保証できねぇが見た目はだいぶ変わっただろ?」
ロイが投げてよこしたワンドをキャッチする。中ではリヒトが冷や汗をかいているだろう。魔石の部分は金属で覆われ柄のデザインも変わっている。見た目は完全に鈍器だ。
「恩にきるよ」
「なぁに、久しぶりにアダマンタイトで武器を造れたんだ。こっちのほうこそ礼を言わせてもらうぜ。ありがとな!」
『ありがとうございます』
ロイには聞こえないがリヒトも礼を返す。
ロイに別れを告げ俺は再び宿へと転移する。宿ではすでに出発の準備を終えた三人が俺を待っていた。
三人にアダマンタイト製の武器を渡す。アーシェにはメイスの他にリヒト入りの鈍器も渡した。アーシェとクリスはメイスとレイピアを手に取り感嘆の声を漏らす。ミーニャは元々武器には無頓着な上に短剣はあまり使わないため、すぐに腰にぶら下げるが……。
「じゃぁ、行こうか!今日こそ四十五層を突破する!」
「はい!」
「おー!」
「ミツハル様となら何処へでも!」
四人で手を繋ぎ、四十五層に転移する。
目を開けるとすでに何回も見ている四十五層の入り口に立っていた。いつもは俺達がレベリングをするだけで攻略しているパーティは滅多にいないのだが、今日は大勢が階段し並んでいた。
「な!お前ら何処から現れた!?」
いきなり現れた俺達に近くにいた冒険者がギョッとして声をかけてくる。
「上から来たんだよ。見えなかったか?疲れてるんじゃないか?」
通常の転移は対の魔石を使って魔石屋の一箇所にしか転移できないため迷宮に転移できるなんて思いもしない。俺はシレッと嘘を吐く。
「そ、そうだったかな……。少し疲れてるかもしれないな……」
冒険者は俺の嘘を疑いもせずに信じる。それにしても大人数だ。五十人はいるかもしれない。
階段は冒険者ですし詰め状態だ。あちこちから「押すな」「お前が前に行け」などと聞こえてくる。
「みんな聞いてくれ!僕達はこれから四十五層を攻略する!前人未踏の四十六に到達するのは僕達のクラン“黄金伝説”だ!」
あぁ、こいつらが黄金伝説か。どんな作戦なのか聞いてみるかと思っていると前のほうで叫んでいたリーダーらしき男が後ろに移動してくる。
は?作戦ないの?突っ込むだけのつもり?
後ろに移動した男が剣を抜き号令を掛けようとする。
「突……」
「ちょっと待て!」
男の号令を遮り待ったをかける。全員が後ろを振り向く。
「なんだ君は!?」
号令を邪魔された男が不機嫌そうに後ろにいた俺を見る。肩まで伸びた金髪はウェーブがかかっている。整った青白い顔はまるで貴族のお坊っちゃまだ。
「そうか!君達も参加したいのか!?それじゃぁ一緒に攻略しようじゃないか!功績を挙げれば“黄金伝説”に入れてあげよう」
男が盛大な勘違いをして横柄な態度を取る。
「そんなクランに入りたくないんだが」
男の顔付きが険しくなる。髪型や煌びやかな防具から美青年を気取っているつもりなのだろうが刻まれたシワは三十代後半か四十代のおっさんだろう。
「僕達のおこぼれを貰うつもりだな!どうせここまでもコソコソと後ろを付いてきたんだろう!」
「アニキはそんなことしない!」
前のほうから赤い髪の男が叫ぶ。顔は見えないがチャラチャラした髪の跳ね方からシルトだとわかる。同じ位置には仲間の五人も確認できた。
「お前ら、なんでそんなところにいる!?このクランは抜けろと言ったはずだろ!」
シルト達の周りが気不味い雰囲気に包まれる。
「そうか、君達か……。彼等を誑かして抜けさせようとしていたのは。実は彼等から脱退の申し入れがあってね。最後として、この伝説となる戦闘に加わってもらったんだよ」
「何が伝説だよ。ただ突っ込むだけで攻略なんてできるわけないだろ。死者数の伝説でもつくるつもりか?」
「フンッ!素人にはわからないだろうさ。僕達は四十五に十回以上挑戦しているんだ。今日は踏破できるはずさ」
十回以上もノープランで挑んできたのか……。救いようのないゴミだな。
「お前では無理だ。やめてお……」
「お前ではなくレイン・エヒト・オーリスだ!そこで見てるがいい!本当の伝説の目撃者にしてやろう!全員、突撃ー!」
レインは人の話も聞かずに突撃の号令をかける。不安な表情でこっちを見ていたシルト達も冒険者の波に呑まれ前へ前へと押し出されていく。
「マズイぞ!あれは全滅する!前のスペースが空いたら俺達も行こう!最悪でもシルト達を助けてやらないと」
「「「はい」」」
黄金伝説のメンバーは怒涛の如く突き進むが統率が取れておらず、五十メートルほど進んだところで完全に停止して四方を敵に囲まれる。
集団は一気にパニック状態に陥り、前に進まず後退しようと必死に足掻く。俺達は黄金伝説の後に続いてアンデットの壁に突っ込んでいくが、前方に人がいるため強力な魔法は使えない。
「逃げるんじゃない!前へ進め!くそ!役立たず共が!」
レインが必死に叫んでいるが逃げる側はもっと必死だ。
黄金伝説の集団まで近づくと、俺達が創ってきた道を我先にと逃げていくが、すぐに敵が押し寄せ道がなくなる。
シルト達六人を見つけ声をかける。
「シルト!全員いるか!?」
「アニキ!全員無事です!どうすればいいっスか!?」
「転移はできる状態か!?」
「無理っス!魔力切れで転移はできないっス!」
大方、全力で突っ込む指示しか出ていなかったのだろう。集団の中に転移で逃げる者は少数だ。
「わかった!このまま突っ切るぞ!俺達の後ろについてこい!他のヤツも死にたくなければ後ろに続け!」
最前列に出た俺は大剣に半分程の魔力を込めて縦一閃する。剣撃の通った箇所の敵がバラバラに飛び散り道を創る。
「ミーニャ!合図したら花鳥風月だ!」
「わかったー!」
すでに矢を番え準備は終えているようだ。それを確認しながら前へと走り続ける。開けた道が少しずつ狭まっていく。
「今だ!射て!」
「いくよー!花鳥風月!」
同時に射った四本の矢がまっすぐに敵を粉砕していく。レベルが上がった事で威力も増しているようだ。
更に先に進むが、前回まではこの状態から先に進めなかったが、今回は違う。
「クリス!アースランスを撃て!」
「はい!土よ!大地の魔力よ!鋭き槍となり敵を貫け!アースランス!」
クリスのアースランスはミーニャ程ではないがなかなかの突貫力で前方の敵を押し潰す。クリスの魔法が消える前に俺は残しておいた魔力を帯びた剣撃を放つ。その先に四十六層への階段が見える。
「見えた!もう少しだぞ!」
大剣から小太刀二刀に変えて道を塞ごうとするアンデットを斬り伏せ、あるいはメイスで叩き潰しながらひた走るが、もう少しのところでシルト達が遅れをとる。
このままでは俺達の後ろだけ敵に囲まれてしまう。そう思い、後方へ下がろうとするのをアーシェがとめる。
「ミツハルはこのまま前を!私がなんとかします!大丈夫です!」
アーシェの青い瞳は自信に満ちている。俺はアーシェを信じ前の敵に集中する。
「わかった!後ろは任せたぞ!」
アーシェは速度を落として後ろの集団に合流する。俺は兎に角、斬って斬って斬りまくって前に道を創る。
何体倒したのかはわからないが、俺達“三人”はとうとう四十六層への階段に滑り込む。
急いで背後を確認すると無数の光の矢がアンデット共に突き刺さるのが見え、光の先からアーシェ達が走ってくる。階段の近くのアンデットを処理しアーシェ達を迎える。
俺達はとうとう四十五層を踏破したのだ。
遅くなってしまいました!
なんとか45層を攻略しましたよ!1年くらいかかった気がしてしまいます。
外は猛吹雪です……。私は帰り道を攻略できるのか!?
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後書きって20000字も書けるのですね!




