リヒトの謎2
腹が満たされた俺達はそれぞれの部屋に戻る。エールによく合う料理だったため少し飲みすぎたかもしれない。アーシェもほんのり頬に赤みが差していた。
『ミツハル……。飲み過ぎですよ。僕の身体なんですから……』
「おいおい、まだまだこんなもんじゃないぞ?医学部出身は酒に強いんだよ」
そうだ。医学部では先輩医師や教授連中に誘われて、毎日飲み歩く。学生のうちから高級料理やバカ高い酒を飲みまくるのだ。
という事で、葡萄酒と干し肉を分けてもらい、部屋で独り二次会をする。
「なぁ、リヒト……。お前が入ってた迷宮ってどんなだった?」
全然関係のない話から自然に話しかける。
『フォーリアの迷宮は、ここより少しだけ小さいですかね。ただ、中は魔物が多く、恐らくはメトより強いですよ!これは僕の予想なんですけど、迷宮が小さい分、魔物に多くの魔力が流れているためだと思うんですよ』
ウンチク魔王のリヒトが得意げに教えてくれる。ご丁寧に自分の見解まで話してくれた。
「やっぱり、迷宮に行った事あるんじゃねーか。なんで隠してるんだ?」
『あ……』
「もう隠しても無駄だからな?教えてくれよ」
『はぁ……。しょうがないですね……。ズルいですよミツハルは。そうです。僕は五年前から迷宮に行ってました。そして最下層まで攻略した事もあります』
迷宮に行ってた事だけでなく、すでに攻略済みという事らしい。
「攻略済みって、何層まであるんだ?」
『たぶん迷宮によって違うのかもしれませんが、フォーリアの迷宮は九五層で行き止まりでした。僕の捜していた人がいなかったんです。ですから、僕は見つけるまですべての迷宮を攻略しなければなりません』
そういえば、龍の神子を解放するとか言ってたっけ。
『そうです。僕が捜しているのは龍の神子です。解放してファフニールを見つけ出します』
「おいおい、ファフニールってのは迷宮にいるんだろ?龍の神子を捜さなくても、いずれどこかの迷宮で見つかるんじゃないのか?それに龍の神子はファフニールの居場所は知らないって言ってたぞ?」
『龍の神子に会ったことがあるんですか!?』
「ん?お前はないの?俺の頭の中にいたと思うんだが」
『あの時いたもう一人の人が龍の神子……。こんなに近くにいたなんて』
「あー。それと……。お前の捜してる神子さんは迷宮じゃなくて、メトの神殿にいるらしいぞ?すっかり忘れてたよ」
『!?』
「あー。うん。泣くなよ?迷宮攻略して強くなれたんだからいいじゃないか。神殿の事はわからないからなぁ。アーシェにでも聞くしかないかな」




