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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第1章 非日常の日常
20/85

メトに向けて 「別れは決意」

「……おかぁさん……。起きてよぉ……」


 先程まで死体しかなかったはずの場所に十歳くらいの少女がいた。母親と思われる遺体に話しかけている。


『ネコ科の獣人の子供ですね』


 リヒトの言う通り、少女の頭にはネコのような茶色い耳とお尻には尻尾が生えている。


 少女は涙を流しながら母親であろう獣人の遺体に話しかけている。


「お前の母親か?」


 少女は血だらけだ。おそらく、母親が自分の身体の下に庇っていたのだろう。


「うん。お母さん動かないの。死んじゃったの?」


「そうだ。お前の母親は死んでしまった。もう動かない。父親はいるのか?家はどこだ?」


 母親を失ったばかりの少女には酷だが、自分の母親が死んだことは理解できるようなので、事実だけを話す。


「お母さんしかいない。お父さんはずっと昔にいなくなったの……。前の家は魔物に襲われて無くなっちゃったからメイキュウガイっていうところに行く途中だったの」


 少女が住んでいた村か何かは魔物に襲われた。家を失ったために都会に移住しようとしていたら、またもや魔物に襲われて、今度は母親を失ったということか。


『やるせないですね。いつだって弱い者は失ってばかりです。僕はこんな間違った世界を救わなければならない』


 リヒトが何か決意表明のような発言をする。


「リヒト……。お前には、この子供がそんなに弱いヤツに見えるか?俺には全く見えない。こいつの眼を見てみろ。もう泣いてなんかいない」


 少女は母親の遺体からは目を離し、真っ直ぐ俺を見ている。涙を堪え唇を噛み締めている。ライトグリーンのその眼が映し出す感情は悲しみなんかじゃない。復讐だ。


「お前の名前は?」


 少女は真っ直ぐ俺を見つめて答える。


「ミーニャ・トルバ……」


「俺はミツハル。俺達は冒険者になるためメトに行く。ミーニャ、お前はどうする?ムルステまで戻るか?それとも、このままメトまで一緒に行くか?」


 少女は迷わず答える。


「あたしはメイキュウガイに行く。強くなってたくさんの魔物を狩る!また襲われても大丈夫なように強くなる!」


「わかった。じゃぁ、俺達と一緒に行こう。あっちにもう一人仲間がいるから紹介する」


 ミーニャを連れてアーシェのいたところに戻る。すでに泣き止んでいたアーシェは遺体を一箇所に並べる作業をしていた。


「先程は取り乱してしましました。すみませんでした」


 深々と頭を下げる。


「いや、こんな状況だ。仕方ないさ……。もう大丈夫なのか?」


「はい。もう落ち着きました……。その子供は?」


 顔を上げたアーシェがミーニャに気づく。


「あぁ。唯一の生き残りのミーニャだ。一緒にメトに行って冒険者になる」


 アーシェはミーニャに駆け寄り抱き締める。


「よかったぁ……。生きている人がいて……」


「ミーニャ・トルバです。よろしくお願いします!お姉ちゃん」


「私はアーシェ。よろしくね。ミーニャ」


「ところで、遺体を集めてどうするんだ?」


「夜になれば闇精霊の力が増します。闇精霊は遺体を動かしたり、アンデットにしたりします。真っ暗になる前に焼かなければなりません」


「そうか、じゃぁ手伝おう」


 ほとんど陽は落ちていたが、俺達は黙々と遺体を一箇所に集めた。襲われて亡くなった人数は十二名だった。


『やはり、おかしいですね。これだけ人数がいれば普通ゴブリンは襲って来ないはずですよ。戦闘慣れした冒険者なら一人で五匹は相手にできますから。商人も素人ではないはずですし……。ゴブリン達の動きも妙に統率がとれていましたし、逃げたゴブリンに留めをさした魔法も気になります』


「後で考えようぜ?生き残りのミーニャに聞くのも酷だしな」


『そうですね……』


「闇を払いし光よ!この者達の魂を安寧の地へと導きたまえ!」


 アーシェの詠唱が終わると、集めた遺体から青白い炎が上がり、数分のうちに灰と化した。焼くというよりは消すといった表現が近いだろう。


「お母さん。さようなら……」


 ミーニャのライトグリーンの眼から一筋の涙が流れる。


 全てが終わった時には夜中になっており、俺達は少し離れた場所に野営を張り休むことにした。





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