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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第1章 非日常の日常
19/85

メトへ向けて 「悲しみの向こうに」

 アーシェは倒れている人達に近づき、声をかけている。しかし、誰からも返事はない。全滅ではないかと思ったが、馬車の後ろ側にまわると、微かな息づかいが聞こえてきた。最後まで戦っていた冒険者風の男だ。


「おい!大丈夫か!?」


「アンタ達が……ゴブゥ……倒してくれた……のか……」


 男は肺を刺されたのか、口から血を吐き出しながら答えようとする。


「もういい、喋るな!神官がいるから、ちょっと待ってろ。アーシェ!こっちに来てくれ!まだ生きている!」


 すぐにアーシェがやってくる。アーシェは男に手をかざし詠唱を始める。


「お願い!大地よ!光よ!慈悲の輝きでこの者の傷を癒したまえ!フルサークル!」


 男が光に包まれる。


『おぉ。フルサークルとは……。彼女は戦闘能力も高いですが、神聖魔法の使い手としても一流ですね』


 アーシェの魔法により男の傷は完全に塞がり出血も止まる。


「ありが……とう。だいぶ楽に……なった。」


「無理をするな。傷は塞がったが顔色が悪い。だいぶ血を失ったんだろう」


「いや……。俺はもぅ長くありません……。二人にお願いがあります」


 男は言うと、腰のポーチに手を伸ばすが、手が動かず上手くポーチの蓋を開くことができない。


「あれっ?おかしぃなぁ……」


 無理してつくり笑いを浮かべるが、ほとんどの血液を失ってるのだ。痺れて指は動かないはずだ。


「このポーチの中か?とってやるよ」


 俺は、男のポーチの蓋を開け、中から袋を取り出す。ずっしりと重い。


「あぁ……。ありがとう……。それをメトの冒険者長屋にいるエレン・ビネガーという女性に届けて欲しい。中には金が入っている。そして、伝えて欲しい。ルイスをよろしくと……。二人を愛していると……」


 男は瀕死とは思えないくらいの力で俺の手を握り懇願する。


「あぁ……。わかった。必ず届けて伝える。お前が逃げずに勇敢に戦った事も。名前は?」


「ゲイル……。ゲイル・ビネガーだ。痛みも消えて静かに逝けるなんて俺は幸せ者だ……。他の冒険者に恨まれちまうな……ハハッ……」


 ゲイルは笑い、目を開けたまま動かなくなった。


「起きてください!傷は治ったんですよ!どうしてですか!?」


 ゲイルを揺さぶるアーシェを止め、ゲイルの瞼を閉じてやる。


「もう終わったんだ。傷は治っても失った命は戻らないんだ」


「そんな!なんで!誰も救えない!私は何もできなかった!」


 アーシェは涙を流し叫ぶ。


「アーシェは十分やったよ。見ろよ、こいつの安らかな顔を……。お前が救ってやったんだ」


「うわぁぁぁん。ヒッ、ヒゥ、ごめんなさい。ごめんなさい」


 日が暮れてきたがアーシェは泣き止まず、俺は他に生存者がいないか見てまわった。


「おかぁ……さん」


 アーシェはゲイルの側で泣いていて、動けずにいる。


「……おかぁさん……」


『今、声が聞こえましたよ?』



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