旅立ちの前夜
教会に戻り、中に入ると異様な光景に戸惑う。
「これは……どうしたんだ?」
俺の正面には仁王立ちのアーシェがいて、アーシェの前にはじじいが正座させられている。かなりシュールな光景だ。
「司祭様が必要なお金を賭事で全部すってきたんです!」
怒られるじじいはほんのりと赤い顔でニコニコしている。酒を飲んでるな。
「だって、勝てると思ったんじゃもん」
ギャンブルに溺れるダメ人間のお手本のような回答だ。
「お金が無くてどうやってメトで生活すればんですか!?」
「金って、路銀も含めて全部なのか?」
「私の個人的なお金が残っていますが、教会のお金は全部なくなりました。残っている分ですと、移動は徒歩になりますしメトについても冒険者登録くらいしかできないでしょう」
と、盛大に溜息を吐く。
「まぁ、仕方ないんじゃないか?元々はじいさんの金だし、悪気があったわけでもないだろ?何か金を稼ぐ方法とかないのか?」
「道中で魔物から魔石と素材を取れれば少しはお金になると思いますが……」
「魔石?道具屋のオヤジも言ってたが、魔石ってのは金になるのか?何に使うんだ?」
アーシェはそんなこともわからないのかとばかりに溜息を吐き説明する。
「魔石というのは、私たち人族も魔物も体の中に必ず持っています。生き物は魔石に魔力を溜めて魔法を使ったり、スキルを使用したりできるんです。魔力が込められた魔石は灯りをつけたり、便利な道具や武器になるんです。冒険者が迷宮に入るのも、魔石を取ってお金を得るためなんですよ」
「人の中にもあるのか。俺の元いた世界とは体の構造も違うって事か」
「元いた世界には魔石はなかったのですか?だったら随分と不便だったのでは?」
「俺がいた世界には魔物もいなかったし魔石もなかった。もちろん魔法も使えない。代わりに電気で物を動かしたりしてたんだ。この世界より便利だと思う。まぁ、とりあえず道中の魔物退治でもしながら稼いでいこうぜ」
「魔物がいない世界から来たミツハルに戦闘ができるかどうかはわかりませんが、やれるだけやってみましょうか」
「おう!任せておけ。ネトゲで鍛えた戦闘スキルが唸るぜ」
「では、そういう事ですので司祭様は反省だけキッチリ……」
じじいはすでにいなかった。逃げ足速!
「明日は早めに出発します。簡単な食事を用意していますので、食べたら休みましょう」
アーシェが用意してくれた食事を摂り就寝する。食事中もアーシェとは会話もなかった。じじいがいないとやりずらいが、これからは二人きりだ。少しは打ち解け合わないといけないな。と考えている内に意識は夢の中へと落ちていった。




