ドワーフと紅い杖
その後、じじいとアーシェから街までの道のりや旅に必要な道具の説明などを聞いて、出発は明日の朝という事になった。
アーシェは準備が忙しいらしくあちこち走り回っているが、俺は特にする事がないので、村を見て回る事にした。ちなみにじじいはいつの間にか消えていたが。
小さな村だが、迷宮街から一番近いらしく宿屋・道具屋・食堂などの店は充実しているように見える。武器を持った冒険者風の格好をした人間も多い。
「よう、兄さん。何か買っていかないか?ポーション類に武器、日持ちする食料までなんでも揃ってるぜ」
道具屋の前に並ぶ商品を見ていると背が低くがっしりとしたドワーフのような風体の男に話しかけられる。
「いや、ちょっと散歩しているだけだ。金を持ってない」
「ちっ。金がないならとっとと失せな!邪魔くせぇ」
金がないとわかっただけでえらい扱いだな。道具を見てもよくわからないので店から離れようとするが、またドワーフに声をかけられる。
「ちょっと待て、兄さん」
「なんだ?金がないから邪魔なんだろ?」
ドワーフは俺の顔をマジマジと見て驚き腰を抜かす。アワアワと手足をバタつかせ逃げようとするが、力が入らないのか全然動けていない。
「そ、そんな……。お前は昨日死んでたやつじゃねーか!教会に運んだはずだ!アンデットにでもなっちまったのか!?」
こいつが俺が死んでると勘違いして運んだのか。
「それは間違いだ。俺は生きてるしアンデットじゃない。今度から倒れてる人を見たらちゃんと確認しようぜ?もう少しで埋められるところだったんだ」
手を差し出し、ドワーフを助け起こそうとする。ドワーフはゴツゴツした手で恐る恐る俺の手を掴み立ち上がる。
「あ、温かいな。ちゃんと生きてるみてぇだ……でもあの時は……」
納得がいかないのかブツブツと言っているが、特に見るものもないので立ち去ろうとする。
「兄さん!ちょっと待て」
「なんだよ。忙しいおっちゃんだな。店は暇そうなのに」
「ガハハハ、言ってくれるじゃねぇか」
俺の嫌味に嫌な顔もせず豪快に笑う。小説なんかではとっつきにくくて気難しいのがドワーフだと思っていたが、違うようだ。
「ちょっと待ってろ」
と言い、ドワーフは店の奥へと入っていく。数分の後、小振りな杖のようなものを持って出てくる。
「これは兄さんのか?」
長さは30センチほどで天辺に直径5センチほどの紅い宝石がくっついていて尻すぼみに細くなっている。見た感じは魔法使いが使いそうなワンドだと思うが、見覚えはない。
「いや、見た事ないな」
「そうか、これは昨日兄さんを見つけた場所の近くで見つけたんだが、兄さんの物かどうかはわかんねぇけど持って行きな」
くれるという物を断る理由もないし、悪意もなさそうなのでもらっておく。
「いいのか?こういうのって高く売れるんじゃないのか?」
「そうだな。魔術師の杖で高価なものだと一生遊んで暮らせるくらいなんだが、この杖はよくわかんねぇんだ。俺も色々と魔導具やら武器やら見てきたが、これに関しては何で出来てるのかもわからん。普通は魔石から魔力を感じるんだが、この杖は全く魔力を感じねぇ。客に売るわけにもいかねぇし、俺が持ってても仕方ねぇから兄さんにやるよ。兄さんフォーリアの人間だろ?フォーリアの人間だったら使えるかもしれねぇからな」
杖を受け取ると意外と重い事がわかる。燃えるような紅い宝石とは裏腹にビックリするくらい冷たい。確かに鉄や銀とは違って妙な質感だ。
「ありがたく貰っておく」
内心は重い荷物が増えて迷惑と感じているが、俺はコミュ障ではないのだ。ちゃんとお礼も忘れない。
「おう!持ってけ!」
道具屋のドワーフと別れの挨拶を交わし、村の中をブラブラと歩き夕方には教会に戻った。




