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PACE5-3→散華不知

夢続

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

くるくる幼子舞い

    

ぽーんと鞠を跳ね挙げて

    

ぽちゃんと落ちる

    

梅の花片……

    

    

    

    

    

    

    

   

   

華の国に神の使いがくるらしい。そういう噂がたっていた。

この世界には二種類の人がいる。術を使えるもの、そうでないもの。術を授かったものは守り、使えないものは守られる、それが古くからの暗黙の規則だった。

   

けれど華の国に例外が生まれた。

   

術を授かった守られる者。

   

決して散らない梅の花の、化身。

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

朝早く師匠に叩き起こされて連れて来られた先は知らない場所だった。

空は青だけど、太陽らしきものは三つ。下をむいた三角形の形に並んでいる。むき出しの地面は平らだけど、舗装されていないし、轍のあとがくっきり残って道の両端はへこんでいた。あまり文化は進んでないみたいだ。

    

「ねぇ師匠何処行くんですか?」

  

隣に歩いている師匠に問いかけてみる。ダークグレーのスーツに身を包んだ師匠は、何って任務地だ。とはぐらかした。そんなことなら僕だって解る。出不精の師匠が仕事以外で僕を連れ出すなんてあり得ないことだし、だいたい師匠が僕より早く起きるなんてなかなかあり得ないことなんだ。耐えきれなくてもう一度、今度はうるさいという返答だ。うん、師匠らしい。

   

「ねぇねぇ師匠ー!」

   

「あぁもううるさいなお前は……じゃぁどこも行かない。」

  

「じゃぁ今してることにむじゅんが生じるじゃないですか!」

   

「お前矛盾て意味解ってるか?十歳のこどもが使う言葉じゃないぞ?」

   

またはぐらかされた。むっとして立ち止まると、歩け。と背中を押される。予想外に強い力。

師匠に結んで貰ったリボンタイが風に揺れた。柔らかい気温と風。

     

「じゃぁ師匠、今度の任務はどんなものなんですか。」

   

「さぁな。」

  

まただ。頬を膨らますと彼は困ったように苦笑した。

   

「そう言う顔になるぞ?」

   

なるもんか。

轍の横の草が風に揺られてさらさらと音をたてる。この柔らかい風などはあの時一度だけ行った、過去の日本に似ていた。この道なんかも、そう。

   

「あぁここか。」

   

師匠が立ち止まる。開けた道の向こう、木造の建築が立ち並ぶ村みたいなところが見えた。鞠をついて遊んでいた四五歳の子供二人がこっちを見てる。つぎはぎの着物。建っている建物はやっぱり簡素で、これがよく言う『風情がある。』ということなのだろうか。

   

「……帰りたくなってきたな。」

   

「なんでですか?」

   

「面倒になってきた。」

   

「……師匠、それで結局ここはどこなんですか?」

   

師匠が答えようとしたのか口を開く、けど、何かを言う前に違う声が僕の質問に答えてくれた。

   

「ここは流円支部、珠守族定住の、安朱という場所です。局としては地球支部のお隣に当たります、局。ついでに私は、アリビル局流円支部珠守課の平、詩葉と申します。以後お見知りおきを。」

    

声の主、詩葉さんはそれだけを一気にまくしたてるとにっこりした。紺色の長い髪に、白衣。黒縁の眼鏡。随分背の高い優しそうな人だ。そう言えば、知らない人について行っちゃいけないとこの前テレビでやっていたっけ。

   

「久しぶりだな、詩葉。生きてたのか。」

   

口をひらいたのは師匠。声に気付いた詩葉さんが師匠をみ、あ、と声を上げた。

    

「ややっ、鈴欠さんじゃないですか! 奇遇ですねぇ観光ですか? 私これから仕事なんですよ。あぁ本当に面倒くさい。鈴欠さんやってくれません? なんだかねぇ、宇宙局地球支部の人間課課長さんが来るんですって。かちょーさんが。そぉんな偉い人が来るんだったら私なんて帰っちゃって良いとおもいません? 私なんかもう500年になりますけど、全然出世できませんよ。課長さんは492だそうですから、あぁ凄く優秀なんでしょうね。あ〜うらやましいうらやましい。……ん? 鈴欠さんって確か490くらいでしたよね? ……なんで此処に? え?」

     

一人で喋っていた詩葉さんが止まる。そう言えば師匠は492だとか何とか言ってた。

    

「悪かったな。お前を帰すわけにはいかないさ。」

    

にやりと笑った師匠が、煙草に火を付ける。もう一回微笑んで、言った。

   

「今謝れば、課長の報告だけはやめておいてやろう。まぁ……こき使ってやるから楽しみにしとけ。」

  

「ひぃぃ、やめて下さいよ。鈴欠さんいつから鬼になったんですか?……もとからでしたね。」

   

「よし。覚悟しろ。」

   

「じょ、冗談ですって!」

   

なんだか知り合いらしい。それより僕が気になるのは、師匠が課長ってこと。課長ってもしかしなくても偉いんじゃないだろうか。師匠が偉い?そんな……信じられない。

   

「弥、なんだ、その顔は。」

   

「……いえ。」

   

「ん?なんだ弥?」

   

にこにこ笑ってる師匠は恐い。絶対考えてることばれてる。

   

「……そ、そう言えば、もう一人くるんでしょう?ま、まだ来てないんですか?!」

   

慌てた詩葉さんに助けられて、何とか師匠の気がそれた。少し考えた後、まぁ時間内に来ることはあり得ないだろうと呟く。

   

「あぁ、奴は遅刻魔だからな。あいつに出来るのは物事を深く考えることくらいだ。時間にルーズなのは仕方ないだろう。頭がわるいから時計読めないんじゃないか?」

   

軽蔑した笑い。確かその人は師匠の部下さんなはずなんだけど…愛着がないのはいつものことだ。師匠に人並みの感情を期待しちゃいけない。

    

「誰が頭悪いんっすかぁ?」

   

「!……秋穂。」

    

驚いた、と言うように振りかえる師匠。師匠の後ろに立っているのは、日焼けした肌に薄い茶髪の男の人。なるほど髪の色が稲穂みたいに見えなくもない。

    

「何っすか〜?」

   

 「……いや。」  

  

と、師匠を覗き込んだ秋穂さんが急にはっとした。

    

「生え際やばくないですか?」

   

ぴくっと師匠の眉があがる。秋穂さんはにやにやと嫌な笑い。

   

「あ、もしかして忙しすぎてストレスで、は……。」

   

「それ以上いったら俺の手は滑るからな?お前の首が飛ぶように滑るからな?」

   

「あ、ヅラでしたっけ?」

   

師匠の眉が凶悪に跳ね上がる。本当にヅラだったりするんだろうか。確かに、老眼鏡だしあり得なくもないけど……あんな色のってあるのかな……。

   

「仕方ないっすよね〜忙しいし、仕事多いっすもんね。それははげても仕方ないかもしれませんねぇ。心情お察しします。で。M字ですか?バーコードですか?」

   

「生憎髪は自前だ。お前な、勘違いするような事を言うな! それ以上言うとお前の頭ふっとばすぞ?」

   

「口先ならなんでも言えますよ。課長ですもん。課長減給するってよく言いますけど、そんな権限ないの、俺知ってますし。」

   

「あぁもううるさいなお前は!無駄な事を考える暇があったら仕事をしろ仕事を!」

   

「だって飽きたんですよ。疲れたし、仕事なんてつまらないですし。」 

   

「つまるつまらんの問題じゃないだろうが。お前は人一倍働いて丁度いいんだよ。」

   

「えー……納得いかないっす。」

   

師匠の頬がぴくぴくしてるのに気付く、怒ってるのか、呆れてるのか。怒った師匠は何をするか解らないから、ちょっと心配だ。

      

「ま、課長はきっと生え際ヤバイと思いますよ?ヅラでしょヅラ。」

   

「……秋穂。俺にも限界ってもんがあるんだからな?」

   

「えーだって事実でしょう? だって課長の眼鏡実は老眼鏡だし。」

  

あ、起爆剤。師匠の笑みが深くなる。ついでに師匠の眼鏡が老眼鏡だっていうのは本当の話。彼はこれを最大の秘密としているので(レンズを見れば解ることだと思うけど、あまりにも師匠が哀れなので言わないことにしている。)この話に触れると凄く怒る。本当にあり得ないくらいに。

   

「……。秋穂?」

   

ざわっと、周囲の木の枝が揺れる。不自然な揺れ方に眉をひそめると、急に風が強くなった。師匠のまわりを渦巻くように風が巻きあがる。師匠の力の外部干渉、感情に同調するように、風があれる。

    

「うわ、怒らした。」

   

事の起こりの秋穂さんは避難避難と詩葉さんの後ろに隠れた。事情が飲み込めてない詩葉さんは、きょとんとしたまま。……ご愁傷様だ。

       

「え、私なんで盾にされてるんですか?え?」

   

「お前も一緒にしんどけ。」

  

「え?!なんですかそれ!私自己犠牲精神なんてないですよっ!」

    

雲行きまで怪しくなってきた。鞠をついて遊んでいた子供が異常に気付いて怯えてる。これ以上任務地に悪影響をおよぼすのは良くないと思うけど、生憎師匠は乱心中だし……。僕は小さくため息をついて、子供の方に歩いていった。

    

「ねぇ。」

   

「!」

   

子供は二人。一人は黒髪で、もう一人は師匠みたいな銀髪。きれいだ。

   

「だっだれだっ!流水のやつか!?」

   

「るすい?違うよ。あの……あの人見える?」

   

銀髪をかばうように黒髪の男の子が立つ、師匠を指差すと、男の子の目が急にやさしくなった。

   

「なんだ、神さまの使いのひとの召使いか。」

   

「めしつかい?!」

   

失敬な。僕は歴とした師匠の弟子で、召使いのつもりなんか一つもない。危うく怒り出すところで、後ろの銀髪の子が口を開いた、女の子のような、男の子のような、気弱そうな声。

  

「あのぉ……むらおさに、用事……?」

    

むらおさ?首をかしげると、その子は何かを言おうとする。それを遮るように、後ろから声がした。

  

「あぁ、で、コレが弟子の弥だ。まぁ召使いみたいなもんだから適当に使ってくれ。まだ十だが、それなりに使える。掃除洗濯料理、ついでに特技は暗記だ。ほら弥、挨拶だ挨拶。」

   

解ると思うけど、師匠の声。ぐいっと僕の頭を掴んだ師匠が頭を下げさせる。空の青から世界は地面の薄緑に、どうでもいいけど力が強すぎて首が痛い。

  

「あぁ、自分は散華の村の村長を務める瑠宇と申します。以後お見知りおきを。」

    

優しそうな声。師匠のお友達の詩葉さんといい、今回出会う人は優しそうな人が多い。師匠とは大違いだ。師匠の手がゆるんだのを見計らって顔をあげると、予想以上に穏やかで優しい男の人が微笑んでいた。

   

「よろしくお願いします……。」

  

「えぇよろしくお願いしますね。あぁこちらからも紹介したい子がいるんです。……美子、こちらへ。」

  

真っ青な空のした。鮮やかな赤をまとった少女。

   

華の色。あるいは……。

燃えたぎる血潮のような。その、赤。

   


更新遅れてごめんなさい。色々考えていたらこんなことになってしまいました……。えー文章が汚いというご指摘もうけ、どうにかなおそうと努力している今日この頃です。内容が汚いのは許してくださいませ。では今日はこのへんで。

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