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芋くさ令嬢ですが悪役令息を助けたら気に入られました  作者: 桜あげは 
番外編

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121/121

120:芋くさ夫人は弟の恋を応援する(ポール&アニエス視点)

時系列→ポール卒業時です。


 ポールは無事に隣国の学校を卒業した。

 けれど、エバンテール侯爵家は両親の罪のせいで爵位を剥奪されているので、ポールに帰る先はない。

 ひとまず、姉夫婦の屋敷に滞在することになった。

 居候の身というのは気乗りはしないが仕方がない。

 義兄のナゼルバートが砦で働く人員を募集しているので、そちらで彼の補佐の一人として就職するつもりだ。

 スートレナはいつだって人手不足なので。


(ただ飯食らいになるわけにはいかない)


 決して屋敷に初恋の相手であるケリーがいるから、いい格好をしたいというわけではない!


(はああ、ケリーさん……ある意味、同居になるのか……?)


 恋愛初心者ポールのドキドキは止まらない。

 馬車から降り、大きな荷物を持ったポールは、ふよふよと空中を移動しながら、スートレナにある領主の屋敷の門をくぐる。

 すると姉夫婦が出迎えてくれた。


「やあ、おかえり、ポール。たくましくなったね」

「ただいま戻りました、義兄上、姉上」


 眼鏡をきらめかせ、ポールは堂々と胸を張る。

 そう、隣国で鍛え上げられたポールは目に見えて逞しくなった。

 背も伸びたし、今の体つきはトッレのように筋肉質だ。

 もちろん、精神的な成長も遂げたと自負している。

 すると、アニエスが屋敷の方を向いて声を上げた。


「あ、ケリー。ちょうど、ポールが帰ってきたわよ~」

(え……)


 瞬間、ポールの心臓はバクバクと大きく脈を打ち始める。


(け、けけけけケリーさーーーーん!?)


 数年片思いしてきた相手が、恋文を送り続けてきた相手が……今、目の前にいる!

 体がガクガクと震え、顔に、いや全身に熱い血潮が巡る。

 そうとは気付かないアニエスが、にこやかな表情を浮かべ、ケリーをポールの前まで連れてきた。


「ケリーは歓迎会の準備をしてくれていたのよ」


 素の顔を崩さないまま、ケリーがコクリと頷く。


「はい。主役のポール様はこちらへ」


 その流れで、ケリーはポールを屋敷へ案内しようとした。


「へ、ふぁい」


 裏返った声で答えたポールは、吸い寄せられるようにケリーの後ろに続く。


(どうしたポール! なんだその負抜けた返事は! 成長したのではなかったのか! たくましさはどこへ飛んで行ったんだ……!?)


 心の中でもう一人の自分が叫ぶ。だが、どうにもならない。

 ポールはふわふわとした頭で、ただ歩くことしかできなかった。


 ※


 私――アニエスはナゼル様の隣で、ケリーの後ろを付いていくポールを眺めていた。


「あらまあ、ポールったら。緊張でガチガチ」

「微笑ましいね」


 ナゼル様が優しい声で告げた。


「ここはもっと、キリッとケリーに挨拶してほしいところだけれど」

「アニエス、珍しく手厳しいね」


「はい。ケリーが私のお義姉さんになってくれたら素敵ですので。ポールには頑張ってもらいたいです」

「ポールのお嫁さんなら義妹になるね。俺もケリーが身内になってくれたら嬉しいと思うよ」


「そうと決まれば、ポールの応援に行きましょう」

「いや、アニエス、それは……」


 このままでは、いつまで経ってもポールの恋は発展しない。

 姉として、私は歓迎会で弟の恋を後押ししようと決めた。

 しかし……。

 歓迎会でのポールは緊張もあって、なかなかケリーとの距離が縮まっていない。


(見ていてもどかしすぎる~!)


 ここは、姉として応援する場面だ。そうに違いない。

 私はさりげなくポールを誘導する。


「ポール、主役なのに悪いんだけど……ちょっとケリーを手伝ってあげて。向こうでテーブルの移動があるみたい」

「……! は、はい」


 ちょうどテーブルを動かそうとしていたケリーに近づいたポールだが、意気込みすぎたのか、その場で躓いてずっこけた。

 テーブルの脚に頭をぶつけている。


(ポールぅぅぅ! なんでそうなるの~!?)


 ふらりとよろけた私を、傍にいたナゼル様が支えてくれた。


「ポール様、大丈夫ですか?」


 離れた場所で、ケリーが倒れたポールをのぞき込んでいる。


「ひゃい、だ、大丈夫れす」


 声は上擦り、距離があってもわかるくらい顔が真っ赤である。


(ああ、ポール……)


 弟の恋は難易度が高いと思っていたけれど、これは難しいとか、前途多難とかいうレベルでは済まないかもしれない。


(このまま進展しないかも……)


 立ち尽くす私を、ナゼル様が抱きしめてくれる。


「うんうん、アニエスは頑張ったよ。ここはそっと見守ろう」

「はい……」


 それから、ポールはケリーに連れられて一旦その場を退室した。 頭に出来たたんこぶを、彼女に手当てしてもらったようだ。


(あら? なんやかんやで距離が縮まった?)


 しばらくして戻ってきた彼の顔は、最初の比ではないくらい真っ赤で、茹で蛸のような色に染まってしまっていたのだった。

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