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120話 捕食者との戦い



 ぼくがニコを撃破した、数日後。

 王都ギルド長のもとへ、報告へ行ったときのこと。


「な……に、これ……」


 王都は、血の海に沈んでいた。

 みんな四肢のどこかを失って、道路に倒れ伏している。


「みんな……! どうしたのっ!?」

「え、エレン様……」「良かった……たすかっ……た……」


 みんな血の気を失っている。

 何かに食いちぎられたようなあとが散見できた。


「待ってて! すぐに治療を……!」


 ぼくは不死鳥の炎で癒そう、そのときだ。

 ドドウッ……! とどこから発砲音がした。


『若様っ!』

「ランッ!」


 神狼のランが、ぼくをかばってダメージを受ける。


 癒やしの炎ですぐに治療する。


「ごめんよ、ラン」

『だいじょうぶです、それより、お気をつけて。敵がおりますゆえ』


 ぼくは攻撃がきた方向を見やる。

 金髪の男が、建物の屋根上に立っていた。

「ちっ、外れやがったか。余計なことしやがって畜生がよぉ」


 すたっ、と彼が屋根から飛び降りる。

 着地のさい、あまりに音がしなかった。


 ぼくは、この人がかなりの手練れであると思った。


「なにものだ!?」

「オレ様は【ハジメ】。転生者さぁ」


「転生者……」


 サブローやニコ、ぼくが戦ってきたヤツらと、彼は仲間のようだった。


「待ちくたびれたぜぇ。町のヤツらはあらかた食っちまってよぉ。腹ぁ減ってたところだぜぇ」


 野獣のように舌を出し、じゅるりと舌なめずりをする。


「……あなたたちは、どうして」


 ぶるぶる、とぼくは体を震わせる。


「転生者の方々は、どうして一般人に酷いことができるんだ! 彼らがあなたたちに何をしたっていうんだっ!?」


「あー……? 別にぃ~? ま、しーていうなら、ストレス解消?」


 ……意味が、わからなかった。


「あっちの世界じゃよぉ……オレ様達はそりゃあそりゃあひでえ扱い受けていてさ。けど発散しようにもオレ様達にはなーんの力も無くってよ、もうストレスMAX」


 でも、とハジメが邪悪に笑う。


「こっちに世界はいいよなぁ! 剣も魔法もある! 人の命が向こうよりも軽い!」


 野獣のように牙をむいて言う。


「しかも転生の際には力までもらえる! ならもうやりたい放題するに決まってるだろぉ! なぁ! 別にこの世界のヤツらなんて、オレ様たちにはなーんも関係なんだいからよぉ! 殺し放題だぁ! ぎゃーはっはっはぁ!」


 ぼくは……拳が白くなるまで握りしめる。

「……もういい。あなたは、ぼくが止める。勇者エレンが相手だ! 悪鬼め!」


 にぃ……とハジメが笑うと、両手を広げる。


「やってみろよ勇者ぁ。全部食ってやる」


 彼の手の色が、黒く染まる。

 獣のようにとげとげしい皮膚へと変わる。

「【不死鳥の火矢フェニックス・アロー】!」


 肩から炎の翼をはやし、火の矢を高速で打ち込む。


 魔族すら簡単に打ち抜く炎を、ハジメは右手で掴んだ。


 そして、ぐしゃり、と握りつぶす。


「くく……うめえうめえ。良い攻撃だ。もらっとくぜぇ!」


 バッ、と逆の手を彼が差し出す。


「【不死鳥の火矢フェニックス・アロー】!」


 左手から放出されたのは、ぼくが放った火矢だった。


 翼を生やし、ぼくは飛び上がってそれを避ける。


「おらぁ……! どこ見てやがるぅ!」


 一瞬で背後に回られ、右手を振るう。

 ぼくは回避したが、炎の翼を右手でつかまれ、握りつぶされた。


「くっ……!」


 すぐに新しい翼を生やす。


「くくく……いいねえいいねえエレンくーん。いい力もらってるじゃーん」


 バサッ……! と彼が黒い炎の翼を広げる。


「能力を……食べて自分のものにしているのかっ!」


「そのとーり! これがオレ様のチート能力【能力捕食スキル・イーター】! 食えば食うほど強くなる、まさにチート級の力よぉ!」


 彼が炎の翼をひろげてぼくに突撃してくる。

 ぼくはそれを空中でひねってよける。


「いいねえ! 飛行能力はなかったからよぉ! おらおらぁ!」


 両手に拳銃を取り出し、ぼくめがけて撃ってくる。


 避けようと思った先に、銃弾がちょうど来た。


「ちっ、炎の翼でガードしやがったか」


 ぼくたちは空中で相対する。


「今のは……ぼくの避ける先を予知したのか?」


「ちっげーよ。【読心】スキル。相手の心を読んだんだよ」


 ぼくが聖剣を取りだして切り掛かろうとするが、それをかわし銃弾を撃ち込んでくる。


 炎でガードするが、こっちの攻撃がまったく効かない。


「ちっ。スペックで上回られてるから、思考を読んでも勝ち星がとれねえか。厄介なガキだぜ」


「……どうして」


「あ?」


「どうしてそんな強い力を、おまえらは悪事にしか使えないんだ!」


 ぼくは悲しかった。

 同じ風に与えてもらった強い力を、こんなにも多くの人が、私利私欲のために使うなんて。


「あなたたちがいれば! 魔王は倒せたはずでしょう!?」


「だろうなぁ。サブローやニコとパーティ組めばよぉ、魔王なんてイチコロだろうなぁ」


「なら!」


「け・ど! ぜってぇやんねぇ!」


 べろっとハジメが舌を出していう。


「なーんでオレ様がそんな一ミリも自分の利益にならねえことしなきゃいけねーんだよタコ!」


「……利益、だと?」


「そーだよ! せっかくのこの力を自分の好きなように使わなくてどうする! 金! 女! 今まで手に入らなかった物が全部手に入るこの世界で! どこの誰が、自分のためにならない人だすけなんてするかよぉ!」


 ……ぼくは、理解した。

 転生者は、みんなこんな感じなんだ。


 ニコも、サブローも……みんな我欲で目が曇っていた。


 ……でも、当然のことなのかも知れない。

 彼らにとって、この世界は自分たちの住んでいた世界じゃない。


 縁もゆかりもない世界の人達を、助けろって言う方が無理な話なんだ。


「くくく……よーくわかってるじゃあねえかエレンくーん。おまえとは友達になれそうだぜぇ……」


 思考を読んだハジメが、ぼくに近づいてくる。


「理解のあるガキで助かったぜぇ。どうだい、力がある者同士、二人で世界を掌握しねえか?」


 スッ……と彼が手を伸ばしてくる。

 ぼくはその手を掴んだ。


「……ふざけるな」

「あ?」


「ぼくは……! お前たちとは違う!」


 ごぉ……! と不死鳥の炎が今まで以上に激しく燃え上がる。


「ぼくはあなたたち転生者を……絶対に許さない!」


「ハッ! だからなんだよガキ! どうするってんだ?」


「倒す……! 【契約破棄リリース】!」


 カッ……! とまばゆい炎がハジメを包み込む。


「くっ……! なぁんだただの目くらましか! 脅かしやがって!」


 ぐら……とハジメが体勢を崩す。


「なっ!? そんな翼が……! 消えてやがる! う、うわぁああああああああ!」


 彼がぼくから捕食した、炎の翼がいつの間にか消えていた。


 ハジメは地面に墜落し、動けなくなる。


「いってえなぁ! 死ねおら!」


 彼が銃弾を放ってくる。

 ぼくは避けなかった。


 当たる前に、炎の熱で銃弾が溶けたからだ。

 それだけじゃない、彼の使っていた拳銃すらも熱波で溶かす。


「もうやめておけ! おまえはもう、ぼくにかなわない」


「生意気な口聞いてるんじゃあねえ! オレ様には数々の敵を食らって手に入れた無数の力があるんだよぉ! おらぁ!」


 しーん……。


「な、なにぃいいいいいい!?」


 ハジメが自分の左手を見やる。

 だが、さっきまでの黒い手じゃなくなっていた。


「そ、そんな!? どうしたんだよ! スキルが発動しねえ! おい! おい!」


「無駄だよ。あなたの力は無力化した」


『今まで母上が行っていたスキル剥奪を、自発的にできるようになったのじゃな。さすがはエレン、その進化は留まることを知らぬな!』


 眼下でハジメが青い顔をしている。


「こ、この……! 出てこい! オレ様のスキル達! おい! おぉおい!」


「それはあなたの力じゃない。他人から勝手に奪ったものだろう!」


「くっ! う、うるせええ!」


 左手をポケットに入れる。

 ぼくは火矢を打ち込んで左手にダメージを与える。


「うぎゃぁああああああ!」

「あなたがポケットに銃を仕込んでいることは、読んでいた」


「ど、読心スキル!? いつの間に奪ったんだ!?」

『ふんっ! バカめ。エレンは他者から決して奪わぬわい。彼には精霊王の寵愛がついている。彼が望めば望んだ力が手に入るのじゃ』


「そ、んなの……ずるだ! 反則じゃねえか!」


 子供のように駄々をこねるハジメ。

 ぼくは一瞬で彼の元へ接近し、みぞおちに拳をたたき込む。


「ふげぇえええええええええええ!」


 くるくると木の葉のように回転し、建物の壁に強く激突。


「ち、くしょぉ……なんて、パワーだ……なんて、スキルだよ」


「これはスキルじゃない! 戦いの中で手に入れた、ぼくだけの力だ!」 


『エレンはスキルだけに決して頼らぬ。たゆまぬ努力と修練をへて心身ともに強くなったのじゃ。与えられた力に頼り切っていた貴様とは、格が違うのじゃよ』


「く、そぉ~……」


 がくんっ、とハジメは気を失う。

 ぼくは飛び上がって、不死鳥の癒やしの炎で、町の人たちのケガを一瞬で直す。


「ありがとう、エレン様!」「やっぱり勇者エレンは最高だ!」

「「「エーレーン! エーレーン!」」」


========

エーレーン! はいっ! エーレーン! くぅうううう! 今回もエレンはすっごい良かったよぉーーーー!


んもうっ! 最高! なんて君はかっこいいんだいっ!


……さてと。

僕は僕の仕事をしないとね。

転生者ハジメ……。それに、転生者諸君。


君はエレンが不要と判断した。

よってペナルティを実行するけど、いいよね?


まあ、答えは聞いてないけど。

========

【※お知らせ】


先日投稿した短編が好評だったので、新連載としてスタートしてます!


「無駄だと追放された【宮廷獣医】、獣の国に好待遇で招かれる~森で助けた神獣とケモ耳美少女達にめちゃくちゃ溺愛されながらスローライフを楽しんでる「動物が言うこと聞かなくなったから帰って来い?今更もう遅い」」


https://ncode.syosetu.com/n1158go/


リンクは下に貼ってありますので、そちらからも飛べます!


頑張って更新しますので、こちらもぜひ一度読んでくださると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 評価にマイナスてつけられないものかな‥
[一言] ははは、ハジメくぅん。まず初手からメテオストライクかヒュペリオンレーザーで攻めるべきだったなあwwwまあどっちみち無理だったろうけどw
[一言] ハジメで『両手に拳銃』って今度はあり◯れか。 まあ、スキル強奪はテンプレかな。 ・・・あり◯れのハジメも最初は魔物を『食って』、スキル手に入れてたような。
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