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草食系男子ですが~高校卒業と同時にTSして女子高生にジョブチェンジしました!  作者: Ciga-R
第一部 装備を揃えよう!

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装備を揃えよう~番外編~

   

 神林 朱里(かんばやし しゅり)


 彼女は俺がこの春に卒業した桜坂高校の演劇部に所属し、その華やかな外見に抜群のスタイル、卓越した演技力、プラス頭脳明晰それでいて努力家と、比類のないヒロインオブヒロイン。


 それでいて性格は文句なく特上という間違いなくギャルゲーでいえば看板ヒロインであり、最難関攻略対象とでもいえる存在であった。在籍中には私設ファンクラブがあったほど『ちなみに俺は会員No.19これでも初期メンバーであり、Noは軽く三桁いっていた』まごうことなき高嶺の花。


 ここで自慢するわけではないが、俺は彼女が卒業するまでにトータル四回も会話したことがあるの!!


 あっ、思わず興奮してしまった......話の内容は、草食系男子的トークだったが、彼女が俺に微笑み掛けてくれた時は、興奮して夜寝れなかったことを覚えている。


 といった非常に小さなことでも、かなりのヤッカミを受けるほどの人気ぶり、はぁーこんなことならさっきハンカチ借りとくんだったよ、孝に自慢できたのに......。


 神林さんは優しい笑顔を浮かべ


「あれっ、どこかで会ったことありましたっけ?」


 天女を思わせる無垢な瞳で見つめながら俺に聞いてくる。


 あっ! そうだ、今は陽一じゃないんだ......思わず名前呼んじゃたよ。


 まあ陽一だったら、こんなに気軽に話すことなんて出来なかっただろうけど......きっと道ですれ違っても挨拶することも出来ずに、会釈したけど気付いてももらえず、それでも彼女に会えたことに満足してる......うん、そんな感じだ。


「えっと......あのその......」


 何も言えなく黙ってしまった俺の肩に、しぃちゃんが後ろから優しく手を置く。


「神林 朱里さんですね、この度はこの娘......陽菜乃に優しくして頂き、ありがとうございます」


 それは丁寧なお礼を述べた。


「!!」


 しぃちゃんなんで、神林さんのフルネーム知ってるんだろう。

 

 それだけでも不思議と思えるのに続けて目を丸くしている三人にも


「松井 佳苗さん、鈴木 遥さん、長田 まゆ美さん、御三方もありがとうございます」


 いきなり自分のフルネームを呼ばれたであろう四人組は、驚愕で言葉も出ない。


 俺もびっくりしてマジマジとしぃちゃんの顔を振り返って見てしまった。


 まさかどこかの死神と契約して、寿命と引き換えに人の名前見えてるわけじゃないよね。


「えっ!?......なんで、私たち全員のこと知ってるんですか」


 もっともなことを、まゆ美さんって人が訊ねた。


 この人、神林さんたちに個室から早く出てあげてと言ってくれた人だ。


 醸し出す雰囲気がこのグループで取りまとめ的な立ち位置にいるような気がする。


 しぃちゃんは、俺にしか聞こえないよう耳元に唇を寄せると『何も言わないでね』と囁いた。


 もちろん何も言う気はありません、死神と契約していることなんか絶対言いませんから!


 なぜか肩に置かれた手にギュっと力が加わった。


「――昨年の全国高等学校演劇ブロック大会で、あなたがた桜坂高演劇部の活躍を拝見致しました。とても素晴らしい演劇でこの娘と一緒に桜坂のファンになってしまって......特に神林、神林さーんってこの娘、寝言でも言うぐらいなんですよ」


 いや、さすがに寝言で、神林さーんなんて言わないよ......そこは言ってないと思いたい。


 真っ赤な顔して、うつ向いてしまった俺に感化されたのか、まゆ美さんも興奮して


「朱里は、まあこの通り別格ですけど、よく私たちの名前まで覚えてましたね!」


「それだけ皆さんの演技が素晴らしいものでしたから、とても印象深くって記憶に刻まれたのですよ」


 しぃちゃんはさも当然のことのように明言する。


 みんななんか興奮している、そらそうかも知れない。


 クラスメートじゃないけど同学年だった、しかも神林さんと同じ演劇部の三人のことを、俺はまったく覚えていなかったわけだし......演劇やってて名前も覚えて貰えているって本人にとっては至って嬉しいはずだ。


 ――それにしても、しぃちゃんて記憶力がすごすぎ。


 でも今日はみんな綺麗に化粧してるから、よけい判らなかったのかな。


 女の子って化粧しただけで全然、雰囲気が変わるというのは本当のことみたいだ。


 神林さんも今日は、少しだけど化粧しているみたい。


 そ、それにしても、う、美しすぎ!......ああっ 貴女はどこまで美しくなるのですか。


 俺は自分が今どこに居て、何をしていたのかも忘れて惚けた顔でまじろぎもせず神林さんを見ていたようだ。


 そんな俺を除く四人は、それは楽しげに会話を続けていた。


「――じゃ、ひなのちゃん今年入学したら、桜坂の演劇部に入ってくれるんですか!? 朱里が卒業して抜けてしまった後だから、みんな絶対大歓迎すると思う!」


「!!」


 どこからそんな話になっているんだよ。


 俺に演劇とか絶対ありえんだろ......しかも神林さんとまるで同列扱いじゃないですか......マジありえないのですけど。


 俺、一応大学生になるのよ?


 ――待てよ、陽菜乃って確か今年の五月で十六歳じゃなかったけ


 うん?


 あれれ?


 だいたい陽菜乃って戸籍とかどうなってるんだ。


「いえ、この娘は今年、宮ノ坂に入学が決まっています」


「!!」


 えっ、そうなの。


 宮ノ坂といえば、菜々子も通っている......女子高じゃないですか!?


 えっ! 俺、入学決まっているって、しかも女子高に通うの!?


「おおおおっ!!」


 なぜか女の子たちは、今日一番のどよめきを起こした。


 神林さんがおおおおっなんて嬉しそうに言うの初めて見たかも


宮女(みやじょ)!」

「えっ! てことは、ひなのちゃん宮女で演劇するんですか!?」

「おおおっ! てことは、白河さんとひなのちゃんのコラボ!」

「うわぁー映える! 絶対見てみたい! 白河さーん」


 キャーとみんなが楽しそうにとんでもない盛り上がりをみせる。


 盛り上がってるとこ申し訳ありませんが、というか演劇とかしませんし、出来ませんし、白河さんていったい誰ですの。


 神林さん貴女も、そんなキラキラした目で頬まで染めて白河さーんってまるで恋する乙女じゃないですか。


 しぃちゃんはそんな盛り上がりをみせるメンバーを温和な表情で見つめる。


「フフッ うちの白河て、思ったとおり人気があるのね」

「そりゃ白河さん、誰だって一目見たら......うちのって!? もしかして宮女......宮ノ坂で教諭されている方ですか?」


 少し佇まいを正して佳苗さんが問い掛けた。


「申し遅れましたが、わたくし宮ノ坂で理事長勤めています」


「!」


 しぃちゃんてそんなお偉いさんだったんだ。


 ――みんな恐縮しちゃたよ。


 まゆ美さんがその空気を一新するかのように


「やっぱり陽菜乃ちゃ......さん演劇部に入るんですか?」


 しぃちゃんは、俺の方をちらりと見る。


「この娘......こんなのですから」


 ちょっと残念そうに呟いた。


 あっ......なんか今傷ついたかも


 ――そりゃちょっと? どじっ娘で、ママっ娘で泣き虫で、鼻血ぶーとはいえ......それでいいじゃない?


 なんか悲しくなってきて、また涙目になってしまった。


 そんな俺をまゆ美さんは、じぃと見詰めながらしみじみと呟いた。


「この守ってあげなきゃって思わせるオーラは、ある意味財産かもね。本当に癒されるわ」


 これには、みんな満場一致で何度も大きく頷いた。


 ないわー。


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