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22話 加筆

桜視点から 途中で新倉視点に変わります。

「ダメだ〜」

「こちらもダメでした」

「くっそ〜!!城島礼め〜!!汚い手を使いやがって」

 凄い、いつもならそこまで荒れてない課長まで荒れてる。これってやっぱり礼が裏で糸を引いてるんだよね。

 礼…あなたは一体どこまで私を苦しめれば済むの? 私から子供達も、音楽も奪っておきながら、これ以上何が欲しいの?

 溜め息を吐いても何も状況が変わるわけでも、過去が変わるわけでもない。二週間ぶりの職場復帰。私らしくないよね。それくらいナーバスになってたみたい。

「鳥飼課長…本日から復帰しましたので、よろしくお願いします」

 勢い良く桜が頭を下げれば、周りからも暖かい拍手が湧いて来る。

「?」

 なのに、居心地の悪い雰囲気はどうしたんだろう。悩みながらも同じ部署で先輩の坂本真弓に目をやれば、露骨にも反らされた。あれって何かあったんですよね…絶対。

 ルッソからも気をつけるんだよと言われたばかりだし、こんなことでくじけたりなんかしないんだから。絶対に真相を暴いてやる!

 決戦は昼休みだわ。

 昼休みに桜の顔を見て逃げ出そうとしていた坂本を捕まえ、笑顔で「話しを聞きたいんですが」と言えば「それはまた今度…」などとお断りしますと言わんばかりにな坂本の態度に、思わず資料室まで彼女を引っ張って行った桜。

「坂本さん。教えてください。この二週間の間に何があったんですか?営業部もみなさん躍起になって電話をかけまくっていますし、第二企画部だって…私だけ何も知らされないのは一番辛いんです」

 私の言葉に肺一杯の溜め息を吐いた坂本さんは、私がいなかった二週間のことをぽつりぽつりと話し始めた。

「初めはね、コンサート会場からの使用許可が下りなかったの。みんな焦って関東全体のめぼしい会場には全部手当たり次第かけてまくったわ…全て貸せないの使わせられないの一点張りだったの」

 聞けば、やはり城島からの嫌がらせで関東一帯、全ての施設でのコンサートが出来なくなっていた。

 礼も焦って来たんだ。新曲もここ何年も出てないし、今までの曲をアレンジし過ぎて、噂が噂を呼んだ。…礼が発表した楽曲全て他人から奪った物だって。噂は本当だったんじゃないのかって返ってファンが離れたと聞いている。

 少し頭を冷やしたいからと携帯を持って屋上へと向かった。ここなら普段、誰もいないから、今は誰にも邪魔されたくない。

考えるのよ…どうやったらこの危機を救える?コンサート会場ならどこだったら貸してくれる?桜は脳みそをフル回転させた。

「あ…あった…あそこなら…礼は邪魔出来ない」

 昼休みが終わるわよと声をかけて来た坂本に、「コンサート会場なんだけどちょっとだけ伝手がありそうなの。でも絶対に当てにしないで」そう伝えるとすぐさま桜はある番号に電話をかけた。


「鳥飼課長、コンサート会場なんですが、押さえることが出来ました!」

「ほ、本当か!!」

「はい」

「場所は?」

「ーーーー」

場所の名前を聞いた鳥飼が顔色を青ざめさせた。

そうだよね。だって自分の恋人の父親の会社のビルだもん。しかも建設中のコンベンションホールだし。

「オーナーのジョシュア氏が鳥飼課長と是非お話ししたいとおっしゃってるそうですがどうしましょうか」

これってお前と付き合ってるのが私の末娘だと知ってるんだからな。首を洗って来いってことですよ。きっと。

あーあ…課長の顔色が青から赤、青になって白になった。凄いな〜カメレオンも真っ青だよ。


「オーナーとのお話は終わりましたか?」

「ああ…週末は開けておけ…」

「はい!」


 そして来たる週末。私と鳥飼課長はホテルオーナーである父のオフィスの前にいる。

「パパ!」

「娘よ!」

 ひっし!と抱き合う私達親子の姿を秘書や部下の人達が苦笑してみてます。恥ずかしいですよもちろん。でも、これって我が家の恒例行事みたいなもので、やらないと後で困るもの。特に今日みたいなのではね。

 コホン、コホン。咳払いをした課長に気づいた父はギロリと鳥飼課長に目をやった。あーこれが所謂舅と婿の関係ね。納得だわ。


「今日は君の私用のことは置いておいて、商談をしよう。桜がまたヴァイオリンを弾き始めたとルッソから聞いてね。喜んでたんだ。日本国内…特に首都近郊は場所がないってことも桜から聞いている。場所が必要なんだろ?なら、我が社の建設中のコンベンションホールだったら、どうだ?小ホールで300人、大ホールだったら1000人は軽く収容出来るが。二階席もカウントすればもっとだな。どうしたい?」


 パパの提案に即座に乗りたくても乗れない課長の心情もわかります。だってさっきから、額の汗を拭っているその『ハンカチ』はゆりからのプレゼントなんですよね。刺繍入りだし。パパもそのことを知ってるから、課長が汗を拭く度に顳かみをピクピク〜ってさせてる。

「この見返りはどういった用件を提示すれば…」

「もちろん私の娘のゆりと別れてもらいたい…と言ったらどうする?」

 や、やばい止めなきゃ!!

「パパ!」

「早乙女は黙ってろ。これは私とジョシュア氏の問題なんだ」

 ほえ〜課長男だね〜言い切ったよ。ゆりもこれで安心かも。

「私はゆりさんとつきあっていますが、人様に後ろ指をさされるようなお付き合いをしているわけではありません。それだけははっきりと言わせていただきます。それに社長は、最初に私用のことは置いて(、、、、、、、、、)おいて商談をとおっしゃいました。このことはもちろん、ゆりさんは知っていらっしゃるんですよね?」

「ああその通りだ。だが、ゆりはまだ高校生だ。今年大学受験を控えてるんだ。そんな大事な時期に恋愛など…とふざけている!それに君は三十前だろ?十代のゆりとは年が離れ過ぎているとは思わんのか!」

 あ…ダメだわ。話しの観点がずれまくってる。ゆりはパパが今話していることなんて知らないわよ。これで本当にこのことがゆりの耳に入ったら、それこそ「パパなんて大嫌い!」なんて言われるに決まってるのに…。ここは私が助け舟を出すべきだよね…。

「ねえ、2人とも。話し合いの論点がずれてますよ。今日の話し合いは私のコンサート会場のことで来たんじゃなかったの?パパもあんまりゆりのことで鳥飼課長をいじめるとゆりに嫌われて、口も聞いてもらえなくなるわよ」

 桜の一言が効いたのか、一気にしょげ返ってしまったジョシュアはすでに白旗を揚げてる。パパには悪いけど、こっちは一刻をあらそっているんだから。どんどん話を進めさせてもらおうかしら。

「じゃあ…週末にパパとデートしてくれるか?」

 あ…今度は私に飛び火ですか…。これって絶対アレだよね。大体毎年この時期にこの日本にパパが居る事自体可笑しいんだもん。

アレは絶対やっちゃったんだ。

「…いいけど。ママにはちゃんと伝えてあるのよね?パパがこっちに来てることくらい…もしかして忘れちゃったの?昨日がママとパパの結婚記念日だって」

「……」

 やっぱりー!!目を反らすな!あーあ、やっぱりそうだったんだ。それで喧嘩して何も言わずにこっちに来ちゃったのね。焼き餅焼きのママは、毎年結婚記念日を楽しみにしてるのに、それをすっぽかしたパパがママを放って娘とデートするって知ったら…。恐ろしいじゃない!!ただでさえ、娘とパパがデートするだけでも拗ねちゃうんだから。もう、ちゃんとママの機嫌くらいとっておいてよね。じゃないと面倒臭くなるんだし。

「あきれた。ママのご機嫌をとってからだったらデートでも何でもするけど、先にママに結婚記念日を忘れててごめんの一言ぐらい言った方がいいわよ」

「桜!!やっぱり桜はパパのことを一番愛してるんだね!」

 パパに勢い良く抱きつかれて、バキバキって背骨が鳴ったよ。放して〜サバの骨折りになってしまう〜!!

 あまりの痛みに背中をタップすれば、やっと解放された。あの時秘書の佐々さんが気づいてくれたから良かったけど、これ以上骨は折りたくないわ。

 話し合いはここで終わったから良かったけど…って安心してたら二人してまた火花散らしてるし。

「「そこ!2人でメンチを切らない!」でください!!」

 思わず佐々さんと二人でハモったわ。

帰るころになっても、まだしつこくメンチを切ってた課長を引きずる様につれて社に帰った。

「すまん、早乙女。お前の骨は拾ってやる」

 あの…この人殴っても良いですか?って思わず課長を睨んでしまったよ。

その週末は本当にパパと一日べたべたと過ごした。

待ち合わせのホテルの前でパパから約束させられた。

「今日一日中、絶対僕のことを『パパ』じゃなくって『ジョシュア』って呼ぶこと。わかったね?」

 甘いクレープを2人で半分こしたり、映画を見たりショッピングをしたりと本当に恋人と過ごす気分を久々に味合わせてくれた。でも、これって何なの? なんで、私達の側にこの騒ぎの元凶になった人がいるわけ?

「桜。さっきから僕たちを睨んでいるあの男は誰だい?」

 ですよね〜やっぱり気づくわよね〜。

「ジョシュアには関係ないけど。まあ知る権利もあるみたいだし。一応伝えておくわ。私の怪我の原因を作った社員よ」

「!!」

 がたんと立ち上がったパパは隠し持っていた手袋を新倉さんに向かって投げつけた。

 互いに何か言っているけど、もう疲れたわ。早く家に帰りたい〜。 あらららららら…決闘ですか。もう好きにしてください。

何で、新倉さんもムキになってるんですか。さっきから格闘技で勝負だって言ってるけど、なんでゲーセン? それにジョシュアもどうしてそんなにやる気をモリモリ出す?

 三回勝負で一勝一敗一引き分けのドロー。さあ帰るか…って思ったら「これで勝ったと思うなよ」の新倉さんの言葉にジョシュアが魔王っぷりを見せて笑ってるし。あ〜もう、帰りたい〜。

勝負は次第にエスカレートして来た。射撃ゲームに、レースカーゲーム?付き合って見ている私がバカみたいじゃない。すでに時計は今日の日付を超えてしまってる。

「パパ。私帰るから。ママによろしくって言っておいてね」

「ああわかった」

 パパもデートの時間が切れたのを知ったのか、案外素っ気ない返事。まあ、それだけゲームに夢中になってるんだろうけど。

画面いっぱいに表示されるyour loseの文字を見て、はいこれでまた新倉さんの負けねとほくそ笑んだ。




ーーーーーーーーーーーーー

 俺は今、幻を見ているんだろうか。

早乙女桜が男と楽しそうに腕を組んで歩いているのが見えた。映画館の前で笑顔で何かを話してる。もしかして今からその映画を見るのか?

これってラブロマンスの映画じゃないか。

許さん!俺だって桜とは行ったこともないのに。妄想ではいつも俺の部屋行きだけどな。

 気がついたら、チケットを買ってた。

あいつらはカップル席で肩とかよせ合ってるし。くそぉ!!自爆しろリア充!

 映画の後、どこに行くんだろうかと着けて行ったら、ヴィク◯リアシークレットに入って行った。は、恥ずかしくないのかあの男は!!

 普通、下着を彼女と一緒に見るかよ!!桜〜そこは嬉しそうに笑うんじゃねぇよ。恥ずかしがれよ。怒れよ!

「ちょっと君、先ほど多くの女性達から苦情が来てるんだが、少し話し合おうか」

眼鏡をかけた警備員とその後ろには、ひそひそと俺のことを変態だの振られた男が見苦しいなど失礼なことを言って来る始末。ったくどっちが失礼だよ。

 俺は二十◯年間生きて来て初めて職務質問なるものをされたよ。全てが誤解だったと言うことで解放されたし、警備員からも警察からも謝られたけど、お陰で桜を見失ったじゃないか。桜達は一体どこに行ったんだろう。

 ようやく見つけたと思ったら、喫茶店って…。桜も楽しそうにしてるじゃないか。俺が引き出した笑顔じゃないってとこがムカつくがな。

イライラした面持ちで2人を睨んでたら、男が俺のことに気がついたらしく桜に耳打ちをしている。

 桜は俺と目が合うと笑うどころか、無関心を貫き通した。

怒るどころか俺の存在そのものを拒否かよ…。打ち拉がれているといきなり俺の顔に向けて手袋が投げられた。

「君が桜をね〜。役不足だな。桜は私といる方が幸せなんだ。君みたいな若造にはもっと他の女性でも見繕ってやろう。桜のことは忘れるんだな」

「何だと!俺は桜以外はいらないんだ」

「おやおや子供の無い物ねだりですか」

「バカにすんなよ!」

「いいえバカになどしてませんよ。それほど諦めが悪いのなら決闘でもしましょうか」

「望む所だ!」

 俺も調子に乗ってたんだろう。決闘と聞いて血が沸いたしな。腕まくりをした俺に男はこっちにこいとゲームセンターを指差した。

 ふふふ…格闘ゲームなら負け知らずの俺に挑もうって百年早いわ!

 最初はゲームの定番ストリートファイターズ。年寄りの冷や水だと思って舐めてかかったら、すぐに俺のキャラがKOされてた。まだまだ!!

 次々にゲームで争っていたら、気がついたらギャラリーに囲まれてた。なのに俺の意中の人にはとっくの昔に帰られてた。

置き去りかよ…。

 こんなときはやけ酒でも引っ掛けるかと立ち上がれば、隣から「出ようか」と促され、着いた所はぼろっちい飲み屋。ここどこだよ。

 へー今時トタン屋根ってあるんだな。しかも色が全然統一されてないってどう言うことだよ。

「入らないのか?」

 なんて腰に響く声だよ。声で逝っちゃうってよく女達が騒いでるけど、これってこう言うことを言うんだろうな。

「は、入りますよ」

 引き戸なのに、扉のように開けるとそこは…東北の大農家にあるような民宿風になってんだ。凄く凝ってんな。ここなら海外から来た客とかにも受けそうだ。

 まあ外から見れば本当に営業とかやってんのと聞きたいくらい不安だったけどな。檜の良い香りが気持ちいいな。

 ちがうちがう!そんなことよりも、この目の前にいる桜のデートの相手だよ。

「あなたは一体早乙女の何なんですか?」

 ジョシュアって言ってたけど、まさか援交か?それとも今はやりのシュガーダディか?それに最後に早乙女はパパって言ってたよな。それって何か深い意味があるのか?

「君ね…娘が僕に向かってパパと言ったんだから、父親だと思うのが普通でしょうが」

 溜め息吐かれたよ。

「え!!あんた本当に、早乙女のお父さんだったんですか?じゃあなんでジョシュアって…」

「私がフランス人だからだよ」

「フランス人…でも日本語話してる…」

「フランスでも日本語ブームなんだよ」

「本当ですか?」

「冗談に決まってるだろ、バカか君は」

 こいつ…早乙女の父親じゃなかったら、絶対にぶっ飛ばしてる。

「でも椿さんは銀髪で青い目ですよね。なのにあなたは黒い髪の毛だし…」

「おや?椿にも会ったのかい?そうだね〜椿は…あの子は隔世遺伝だ。なんせ椿は私の母のソニアに瓜二つだからな〜」

 問いつめれば、ダンディに「マスターいつもの」とか言っちゃってるし。本当にこの人って掴めない人だ。待てよ、桜から両親は海外暮らしだと聞いていたんだかな。しっかし、この人本当にあの桜の父親なのか?

確かに髪は黒髪だけど…顔濃すぎだよ。彫りは深くて色白だし、足も長い。うわっ睫毛なんて付けまかよって言いたいくらい長いじゃんか。どこも桜とは似てないな…。

「観察は終わったかい? ところでさっきはよくも邪魔をしてくれたね。今日は娘が独身に戻ってからの初めてのデートだったのに。父親でも娘とデートくらいしたいんだもん。桜はあの事件以来ずっと口もきいてくれないし。

君だってもう知ってるんだろ?桜がティンクだって言うことも、あの子が巻き込まれた事件も。あの子が失った宝物も」

「……」

 独身にもどってからって、あいつ一体どれだけ親に心配かけさせてるんだよ。それだけあの事件は桜にとっても、家族にとっても思い出すのも辛い物だったんだよな。

 しんみりとなった空気を払拭する様に、「はい。今日のお勧めだよ」と言って出されたのは、ひじきの煮付けやら秋刀魚のカルパッチョと言ったホッとする物の隣に納豆が。

「そんなしけた面してるんじゃ、娘に近づけさせるわけにはいかないな。なあ徳永音楽機器のお坊ちゃん。君は自分が出来る人間だと思っているみたいだけど、君ぐらいの能力の人間なら吐いて捨てるくらいいるさ。娘を護る覚悟もない男は今後一切娘には近づくな。娘にさえも認められてもいない男だからな君は」

 言いたいことだけ言ってジョシュア氏は去って行った。

 娘に近づくな、か…。

 キツいな…。




パパが出てきましたよ〜。

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