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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

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第31話:競合他社の接待。……その「悲劇」、わたくしの市場(マーケット)では需要ゼロですわ

「――お座りなさい。立ち話では、あなたの言葉に混じる『不当な煽り』を正確に精査スキャンできませんわ」


 迷宮の最深部。世界のコアが脈動する無機質な演算室で、わたくしはリィンに用意させた最高級の漆黒の円卓と椅子を指し示しました。

 目の前に立つ男――競合他社『黒い天秤』の監査官ベルフェは、不敵な笑みを崩さず、優雅な動作でわたくしの正面に腰を下ろしました。


「これは手厚い歓迎だ、エルゼ・フォン・アシュバッハ。……だが、君の『最適化』には色気がない。……読者が、あるいは上位存在が求めているのは、計算通りの平和ではない。……予測不能な絶望と、そこから立ち上がるカタルシス……つまり、高純度の『悲劇』という名の配当金だよ」


「悲劇、ですか。……ふふ。……ベルフェ様。あなたの経営理念は、あまりに短期的で、かつ揮発性が高すぎますわ」


 わたくしは計算尺を机に置き、彼が展開している「悲劇プロット」の数値を指先で弾きました。


「一兆回のループ。……。確かに瞬間的な最大風速エンゲージメントは高いでしょう。ですが、それによって消費されるリソース――この世界の住民の精神リテラシーはボロボロ。……。一度きりの爆発的な利益のために、サーバーごと焼き切るような真似、わたくしの基準では『経営失格』ですわよ」


「……。結果がすべてだよ、令嬢。……。現に、この世界の『絶望株』は私の介入によって最高値を更新し続けていた。……。それを君が、強引な買収テイクオーバーで台無しにしたんだ。……。損害賠償の額を考えたことはあるかい?」


 ベルフェが指を鳴らすと、彼の背後に控えていた「死神」のような護衛たちが、一斉に鎌を構えました。

 ですが。


「――オーナーの前で指を鳴らすなと言ったはずだ。……。それと、その錆びた農具、今すぐ仕舞わなければ、その魂ごとスクラップにしてやるぞ」


 シグルド様が、わたくしの背後から一歩前に出ました。

 ただそこに立つだけで、演算室の空間そのものが黄金の魔圧に耐えかねて軋みます。

 ベルフェの護衛たちが、物理的な質量を伴う殺気に当てられ、カチカチと歯を鳴らして後退しました。


「……。ふん。……。龍王シグルド。……。君のような『特級資産』を個人で保有しているとはね。……。だが、力だけではこの『次元の壁』は超えられない」


 ベルフェが懐から一通の、黒い蝋で封じられた書簡を取り出しました。


「これは、次元管理委員会からの『営業停止勧告書』だ。……。エルゼ。君の介入は、既存のプロットに対する『不正な改ざん』と見なされた。……。大人しくこの世界を私に返却し、君の全資産を委員会に委託デポジットするなら、命までは取らないでおいてあげよう」


「……。営業停止、ですか。……。あら。……。ベルフェ様、あなた、わたくしの提出した『事業改善計画書』をまだ読んでいらっしゃらないのね」


 わたくしは、空中を流れる無数の数字を一本の「槍」へと収束させ、ベルフェの鼻先に突きつけました。

 

「わたくしがこの世界を買い叩いたのは、私欲のためではありません。……。この腐敗したループ構造を『健全な自由市場』へと再編するため。……。すでに上位次元のスポンサー(読者)たちの三割は、あなたの見飽きた悲劇よりも、わたくしの『ロジカル・ざまぁ』に、より高い期待値ドネーションをベットし始めていますわ」


「……っ、何だと……!?」


「リィン。……。彼に見せて差し上げなさい。……。わたくしが取得した、この世界の『知的財産権』の独占的ライセンスを」


「承知いたしました。……。公示を開始します」


 演算室の壁一面に、膨大な数の「合意(CONSENT)」の文字が溢れ出しました。

 それは、この世界で死に続けていた勇者たち、そしてリリアナ様。

 彼ら一兆の魂が、自らの意志でベルフェの支配を拒絶し、エルゼ・フォン・アシュバッハに全権を委任したという、最強の民意エビデンス


「――ベルフェ様。……。接待はここまでですわ。……。不当な独占禁止法違反、および次元エネルギーの横領につき、これより『黒い天秤』に対し、敵対的買収(Hostile Takeover)を宣言いたします!」


 準備は、すべて整いましたわ。

 

 悲劇を売る死神様。……。わたくしの合理的な美学の前で、あなたの経営がいかに『赤字』であったか、その身を持って精算していただきますわよ!

「悲劇」を売るライバル、ベルフェとの直接対決。

エルゼ様の放つ「長期的利益サステナビリティ」のロジックが、目先の利益を追うベルフェの傲慢を真っ向から粉砕いたしましたわ!

シグルド様の圧倒的な「物理監査」も加わり、もはや演算室はエルゼ様の独壇場ですわね。


しかし、ベルフェが持ち出した「営業停止勧告書」。

背後にいる「次元管理委員会」という巨大な影が、エルゼ様の買収劇に待ったをかけようと動き出します。


次回、第32話。

「不当な景品表示法。……『勇者の死』を煽り文句に使うのはおやめなさい」。

ベルフェが仕掛ける「最終プロット」――全勇者の強制自爆イベント。

エルゼ様、一単位の損害も出さない完璧な「防衛買収」を執行いたしますわよ!


エルゼ様の「企業間・ざまぁ」に期待してくださる投資家の皆様、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資アクションが、エルゼ様の「MAA株」を次元市場でストップ高にさせるのですから!

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