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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

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第15話:女王の即位、あるいは再建。……この世界の「運営権」、わたくしが買収いたしましたわ

「――来ましたわね。一単位の誤差もなく、約束の座標ですわ」


 帝都と隣国の境界、『虚無の渓谷』。

 世界の理が削れ、空にノイズ混じりの「ひび割れ」が走る不気味な断崖で、私は馬車を降りました。

 目の前には、白と金を基調としたメロウ合衆国の豪華なテント。そして、テーブルを挟んで優雅にティーカップを傾ける、一人の女性――クラウディア・フォン・メロウ。


「ごきげんよう、エルゼ様。……まさか、本当にたった二人(リィンを除けば)で来るとは。……あなたの『合理性』は、勇気と無謀の区別がつかないほどに壊れていますの?」


 クラウディアの冷徹な声が、風を切るように響きます。

 私は彼女の正面に座り、シグルド様が私の背後に、威圧的な沈黙と共に立ちました。


「あら。……護衛の数を増やすのは、単なる『コストの増大』に過ぎませんわ。……わたくしの隣に、世界を一人で買い叩ける『最強の資産(シグルド様)』がいる以上、それ以上の護衛は計算の無駄ですもの」


「……はは。……そうだぞ、眼鏡の小娘。……俺を数に含めるなら、お前の後ろにいる百人の伏兵など、一秒で『焼却処分』してやってもいいんだぞ?」


 シグルド様が黄金の瞳を細めた瞬間、周囲の伏兵たちの殺気が、恐怖によって霧散しました。

 クラウディアは眉一つ動かさず、一枚の書類を突きつけてきます。


「……いいでしょう。……では、査定を始めますわ。……現在、帝国は死に体。あなたはそれを『経営』しているつもりでしょうけれど、私から見れば、沈みゆく泥船に金を注ぎ込む愚か者。……今なら、あなたが帝都に投資した全額をメロウが肩代わりし、さらに一割の『撤退手数料』を付けて差し上げますわ。……帝国を、私に売りなさい」


 それは、慈悲を装った「完全な略奪」の提案。

 ですが、私はその書類を一瞥もせず、代わりにリィンに一通の「統合契約書マージ・プロポーザル」を出させました。


「……あら、クラウディア様。……査定が甘いですわね。……わたくしがここに来たのは、帝国を売るためではありません。……あなたたちメロウ合衆国の『物流網』と、帝国の『資源』を垂直統合マージし、わたくしの下で一括管理するための……『合併交渉』に来たのですわ」


「……なんですって?」


「わたくし、先ほどまでに、メロウ合衆国の主要商会が発行している債券の過半数を買い占めさせていただきました。……現在、あなた方の国の通貨価値は、わたくしの一言で『紙クズ』に変わりますの。……売るか買うか、という次元の低い話はもう終わり。……わたくしの傘下に入るか、それとも経済的な『デフォルト』を選ぶか……。二つに一つですわ」


 クラウディアの瞳が、驚愕に、そして激しい怒りに燃え上がりました。

 彼女が立ち上がり、何かを叫ぼうとしたその時。


 ――バリバリッ!


 虚空の渓谷の空が、文字通り「引き裂かれ」ました。

 青い空の裏側から、無機質なグレーの格子模様と、巨大な「警告(WARNING)」の文字が降り注ぎます。


『――異常事態。……メインプロットの崩壊。……キャラクター:エルゼおよびクラウディアによる、過度な経済介入を検知。……世界の「物語価値」がゼロになりました。……直ちに、全データのパージを開始します』


「……また、来ましたわね。……この世界の『編集者』気取りの、不遜なノイズが」


 私は計算尺を抜き放ち、シグルド様を見上げました。

 彼は、もはや迷いなど一切ない、不敵な笑みを浮かべています。


「……シグルド様。……わたくしたちの『経営』を邪魔するこのバグ、物理的にデバッグ(削除)してくださる?」


「……御意だ、我が最愛のオーナー。……この世界の理すら、君の契約書に従わせてやろう」


 シグルド様が黄金の剣を抜き、天に向かって一閃を放ちました。

 その一撃は、空を引き裂く「警告」そのものを叩き斬り、ノイズの海を黄金の魔力で塗り潰していきます。

 

 「……は……あ、ああ……」

 クラウディアが、腰を抜かしてその光景を見上げていました。

 数字の権化であった彼女にとって、世界の法則そのものを物理的に破壊する光景は、もはや計算外の極みだったのでしょう。


 光が収まり、空に不気味な「静寂」が戻った時。

 私は、震えるクラウディアにそっと手を差し伸べました。


「……クラウディア様。……わたくしと一緒に、この『狂った世界』を正しく再建リデザインしませんこと? ……感情や神の気まぐれではなく、わたくしたちの『論理』で、誰もが納得できる契約の世界を創るのですわ」


「……。……くくっ。……ははは! ……負けましたわ、エルゼ。……あなたの『可愛げのなさ』は、もう世界という枠組みすらも小さすぎるようですわね」


 クラウディアが、私の手を取りました。

 帝国の女王と、商務の才媛。

 この大陸、いえ、この世界の「全て」を統治する、最強の経営陣が誕生した瞬間でした。


「……エルゼ。これで、この大陸の『監査』は終わりか?」


「いいえ、シグルド様。……ようやく、下準備が整っただけですわ」


 私は、未だに空の向こうで震えている「観測者」の視線を感じながら、不敵に目を細めました。

 

「……準備は、すべて整いましたわ。……これより、わたくしエルゼ・フォン・アシュバッハが、この世界すべての『管理者権限ルート』を取得いたします。……不条理な悲劇も、非効率な運命も……。わたくしの計算尺一枚で、すべて『黒字ハッピー』に変えて差し上げますわよ!」


 天界に向かって高らかに告げられた、女王の即位宣言。

 

 物語の第一幕は、ここに完結。

 

 ですが、わたくしの監査の手は……。

 これから始まる「全次元の買収」へと、さらに加速していくのですわ。

第15話、これにて「帝国監査・再建編」完結でございます!

エルゼ様の放った「合併交渉」と、シグルド様の「システム斬り」。

ついに一国の令嬢が、世界の法則そのものに修正デバッグを入れ、名実ともに「世界の支配者マネージャー」へと就任いたしました。


婚約破棄から始まったこの物語。

まさか「世界そのものの運営権を買収する」ところまで辿り着くとは、わたくしの計算でも(嬉しい)誤算でしたわ。


しかし、空の向こうで震えている「観測者」たち……。

エルゼ様の物語は、ここから「全ジャンル・全次元」を巻き込んだ、さらに壮大なM&Aへと突入いたします!


ここまでエルゼ様の「可愛げのない快進撃」を見届けてくださり、本当にありがとうございました。

第1部の完結を祝して、ぜひブックマークと評価の「★★★★★」をいただけますと幸いですわ。

皆様の声援(投資)があれば、エルゼ様はすぐにでも「第2部:全次元・合併買収編」の監査を開始することでしょう。


それでは、次の「精算」の場でお会いしましょう。

皆様の人生が、一単位の狂いもなく最適化されたものでありますように!

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