第26話
「こんな感じで、ダンジョンポイントを込めればそこそこの威力を出せる!」
いくら俺でも竹刀を振るくらいはできる。
俺の攻撃をカナに模造刀で受けてもらう。
ばしっ!
「くっ!?」
竹刀が当たった瞬間、ダンジョンポイントのエネルギーがスパークし、大きく後ろに吹き飛ばされるカナ。
「ここで気をつけることは……」
構えを解くと、竹刀はボロボロと崩れてしまった。
「ダンジョンポイントのエネルギーは強力だからな。ちゃんと防御しないと自分にもダメージが入ってしまう。金属製の武器ならある程度は耐えられるが……格闘スキルを使う奴は注意! ケガするからな」
おおお……
俺の雑な説明にどよめく生徒たち。
「な、なるほど……勉強になります!」
カナも感激している。
「カナの得物なら、そこまで気にする必要はないだろうが……」
「ぱんちやきっくだと1ポイントでもあちあち!
低ランク武器なら10ポイントが目安、上位ランク武器なら30ポイントを目安にしようね~」
自分の身体ほどもある大きなフリップを持ち上げて左右にゆらゆらするキーファ。
ああくそ、最高にかわいいぜ!!
はいっ!
生徒たちの返事が綺麗にシンクロした。
みんな笑顔だ。
キーファの笑顔は世界中を幸せにするからな!
<あいからわずキーファたんの説明分かりやすくて草>
<ああ、僕もキーファちゃんに教えてもらいたい!>
<学院制服バージョンのアクスタ出ないの? 絶対買うのに>
ナイスアイディアを書き込んだフォロワーに投げ銭しながら
俺の説明は続く。
「反動を防ぐには、解凍したダンジョンポイントの一部を防御に回すんだ」
竹刀を床に置き、段ボールで作った刀を手に取る。
「こんなふうに」
ぽわわ
薄いエネルギーの膜が、刀身を包む。
「防御に回す分量を説明するのは難しいが……そうだな、ウナギの蒲焼に塗るタレくらいだな!!」
<分かりやすいと見せかけて分かりにくくて草>
<腹減って来た>
「めやすは、込めるダンジョンポイントの5ぱーせんとくらい!
おにーさんおねーさん、ご安全に、だよ!」
おおおお!!
キーファの可愛さにどよめく体育館。
<やっぱりわかりやすくて草>
<パパもっと頑張れ笑>
と、言われてもな!
キーファが天才すぎるだけだぜ!
「こうしておけば……ほらっ!」
カナに向かって段ボールの刀を振り下ろす。
「くうっ!?」
ばしっ!
さっきと同じように吹き飛ばされるカナだが、先ほどと違い段ボールの刀身は綺麗なままだ。
これが防護フィールドの威力だぜ!
<す、すげええぇ!>
<やっぱ、パパチートすぎる!!>
(うっは! ケントおにいちゃんの攻撃スゴイ……うう、なんか癖になって来たかもぉ!)
<……なんかカナ、目が潤んでない?>
<さらに開発されるカナ……推せる!>
<いや、推すなし!>
生徒たちとフォロワーをどよめかせながら、俺たちの教導は続くのだった。
*** ***
「よし、そろそろ行くか!
次で三限目……キーファ、疲れてないか?」
「だいじょーぶ! 元気いっぱいだよ!」
教導の合間、休憩をとっていた俺たち。
おやつのプリンを3つ平らげたキーファはやる気全開だ。
カワイイ。
「ふぅ……美味しかったですケントおにいちゃん」
カナも満足してくれたらしく、にっこりと笑ってくれた。
素のカナは恥ずかしがりやでちょっとおっちょこちょいな可愛い女の子だが、緋城カナモードだと本当に綺麗だよな。
(ほうっ!? 優しいおにいちゃんの眼差し最高だぜやっふうううううっ!)
(順調にわたしの細胞がおにいちゃんの手料理で置き換わっていく……毎日食べたい!!)
その内心は相変わらず限界化しているのだが。
「3限と4限は一般参加者の方もいるので人数が増えています……が」
同じく俺の手作りプリンをぺろりと食べてくれた桜下さんが、配信機器を調整しながら小さくため息をつく。
「何か気になる事でも?」
「いやその……私もここまで反響が凄いと思っていなくて。
協会経由の申し込み枠を設けてしまったのが失敗でした。
……実際に見てもらった方が早いかと」
なんだ?
桜下さんにしては歯切れが悪いな。
「まあいいや、そろそろ行こう」
俺はふたりを連れ、控室から体育館の中へと戻る。
ざわざわざわざわ……!
「ん?」
異様に場内がざわついている。
1限2限より受講生が増え、この3限では500人が参加する予定だ。
「おいおい、あれって迷宮神技のトージだよな?」
「それだけじゃないぞ! エスペランサのスノウデルまでいる!」
「は!?!? まじもんの世界ランカーじゃねーか!」
「人類初のUGランク到達……ここ、SSSSランクダンジョンのラスト・エデンじゃないよな?」
「残念ながらウチの学校の体育館やで……」
受講生たちの中に、ひときわ異様なオーラを放つ男が数人。
「んん?」
よく分からないが、凄い探索者が参加している……のか?




