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02-これから

短編の方におまけを載せておきました。

エンリと主人公がただいちゃついているだけのものですが、もしよろしければ見ていただけると幸いです。

「ごめん主、お待たせ!」


 エンリが帰ってきたのは、あれから一時間半ほど経ったあとであった。時計がないので正確ではないが、体感的にはそのような時間に感じた。


 道からこちら、路地裏の奥までずっと走ってきたというのに、息切れ一つもないのはさすがは精霊といったところか。


「いや、大丈夫だ。それよりも、どうだった?」


 まあけっこうな時間待たされたわけではあるが、ギルドへ行ってまずは仕事を見つけたり、今日はどこで野宿しようか等と色々と考えていたのでそれほど暇ではない有意義な時間を過ごしたつもりである。


 待つのにもなれているし、全く気にしてもいない。この程度でどうこういう性格でもないので、俺は気にせずエンリの戦果を聞くことにした。


 するとエンリは、カランの顔で笑顔を見せ、右手に持っていた麻袋を俺へと差し出す。

 カランの身長は159cmほどと、エンリと大して変わらない。位置的に腹の辺りへ出された麻袋を俺は受け取る。


「へへ、仕事はバッチリ辞めてきたよ! これで主とずっと一緒にいられるね」


「……お、おう」


 とびきりの笑顔と、心の底から嬉しそうな声で言われ、俺はちょっぴりドキッとしてしまう。

 エンリの好意の言葉は直球が多いので、童貞な俺としては一々その言葉にドキドキであるのだ。


 そんな俺を分かっていてからかって言う時もあるが、こうして自然に言われても耐性のない俺は顔が熱くなる。

 無意識に顔をそらして返事をすると、エンリは俺の顔を見上げるようにして近づいてくる。


「それよりもさ、それの中身を見てみてよ!」


 俺としては、仕事をどのようにして辞めてきたのか聞いてみたいのだが、照れで思考もあまり回らなかったため、エンリに言われるがまま麻袋の紐を解いて中身を確認する。


 と、そこには――


「だ、大金貨じゃないか! しかもこんなにたくさん!」


 中には数十枚のきらりと輝く大金貨が詰まっていた。

 俺の反応に、満足そうに笑うエンリ。


「ふふん、数年の間ずっと働いてたし、アタシは全然使わないからねー。三十枚だったかな。これで主の装備も整えられるし、宿にも泊まれるよっ」


 元の姿とは違い、腰に手を当てちゃんとある胸をえへんと張るエンリ。

 しかし俺の内心は複雑である。

 元々は俺の食料のために働きに出ていたエンリだが、これは働いたのはエンリであり、お金も当然エンリのものである。

 それも大金だ。


 それを俺が貰って、使ってもいいのか。


 そんな、俺の何とも言えぬ表情が表にでてしまっていたのだろう。

 エンリはカランの姿のまま、人差し指を立てながら話す。


「主、遠慮とかはなしね。アタシは主のために働いてたんだし、このお金も主が主のために使ってくれるのがアタシにとっては一番嬉しい。それじゃ、ダメかな?」


 ……また気を遣わせてしまったな。

 そうだ、何を今更迷う必要がある。エンリがそう言ってくれるのなら、今はありがたく使わせてもらえばいいだけじゃないか。


 いや、それだけで終わるつもりはもちろんない。

 エンリが生きているのは俺の魔力。このお金を元に、俺自身も鍛えていき、もっと良い暮らしをさせてやろう。


 俺はエンリの言葉にゆっくり頷く。


「ありがとな、エンリ。これは大事に使わせてもらうよ」


 そう言って、麻袋を握り締める。

 腰にかけるにも不用心で不安だし、懐にしまうには大きすぎる。


 エンリは俺の答えを聞くと、再び妹の姿へと戻り、笑顔を見せた。


「じゃあいこっか!」


 くるりと回り、道の方へと歩き出すエンリ。

 その背に、俺は声をかける。


「いつかお返しに、何かプレゼントをあげるからな! 楽しみにしててくれ!」


 納得はしたが、気も収まらない。

 その分、いつかはとっておきのプレゼントをエンリにあげようと決意した。

 女の子にお金を渡されてずっとそのままなんて、男の面倒くさいプライドが許さない。今はありがたく使わせてもらうが、いつかはその金額分のお返しをしようと思う。


 エンリは俺の声に振り返ると、キョトンとした顔を見せたが、それも一瞬で、妹ではなくエンリらしい歯を見せてニッとした笑みを浮かべた。


「へへっ、楽しみにしてる!」


 うん、今はこれでいいか。

 最初に金があるのは、素直にありがたい。

 俺は先に歩くエンリの元へ駆けて、並ぶように歩く。


「防具なんかも見たいし、ギルドも寄りたかったが、けっこう時間も経ったしな。今日はもう宿をとろう」


「うん、私はお兄ちゃんに賛成だよっ」


 また、路地裏から道へと出た今この時点。

 街での、俺たちの暮らしのスタートである。


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