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24-仮釈放

 待機とは指示されていたが、呼び出されたのはいつも仕事へ向かう時間とあまり変わらない時間であった。


 はて、もう新しい仕事が決まったのだろうか。

 あの橋を最後に、街の復興はもう終わったと思っていたのだが、他にも何かとあるのか。それとも別の仕事だろうか。


 自分でも、力があるとは思っているし、周りからの評価も知っている。そう考えると、力のある俺にやらせたいのは不人気な仕事か。


 だが、牢獄を出て街を歩くが、いるのは俺と騎士の二人のみだ。力仕事なら前の二人等の囚人も一緒に連れていくと思うのだが、牢獄を出てから一人も囚人服を着た人間は見ていない。


 ……もしかすると、俺だけ過酷な労働が待っている? 出過ぎた杭は打たれてしまうあれか?


 俺一人のみに任せられる仕事と言えば聞こえはいいが……囚人の身だ、復興が終わった今何をやらされるかわからない。

 魔法の的や薬品の実験体にされるとかもあり得る。


 前をただ歩く騎士に、空気的にも聞くこともできないので、俺はただ心を構えておきながら黙ってついて行く。


 君だけが頼り。君だけに任せられる仕事。

 嗚呼、そんなことを一度でいいから言われてみたいものだ。


 と、ここを出た後の目標が新たに一つ増えたところで、騎士の足が止まった。どうやら目的地についたらしい。


 が、ここは街の中である。

 辺りを見渡しても別に作業をしている者もいなければ、どこかが壊れていることもない。


 さて、貴様はここで死んでもらう!

 などと騎士がいきなり振り返り、剣で斬りつける……こともなく、騎士が建物を指差した。


「付いたぞ。さあ、中へ入るぞ」


 ……何年も前の記憶が正しければ、そこはかつて俺が役人と対談し、刑期を定められた場所であった。




 〜〜〜




「本当にここを出られるんですか!?」


 あの薄暗い、四年前に来た面会室。

 机が長細い机が俺と役人を挟んでいる。


 四年前と違うのは、俺に縄や手錠などが枷られていないこと。話している役人が前とは違う人だということ。

 ……そして、その話の内容だ。


「落ち着いてください。あくまでこれまでの貴方の態度を考慮した結果、仮釈放、というわけです」


「あ、す、すみません」


 役人の冷静な声で諭され、興奮して席から立ち上がり、机に思い切り両手を置いていた俺は、落ち着いて座った。


「といっても、条件がいくつかあるだけでほとんどは自由の身ですよ」


 役人の方は変わらず淡々と話を続ける。

 ……俺が言うのも何だが、成長して背も高くなり、目つきも鋭く強面に磨きがかかった。そんな俺があのような反応をしても、全く役人が動じていないことに驚いた。


 男性の容姿から見るに、二十代後半くらいだとは思うが、俺みたいな奴を多く見てきて、もう慣れているのだろうか。


 俺は今までにない反応と、仮とはいえここを出られるという言葉に高揚しながら、黙って役人の話を聞くことに専念した。


「まず条件ですが、必ず守ってほしいことが一つだけ。一ヶ月に一度、私に会いに来てください。経過観察みたいなものです。面倒ですがお忘れなく、破ると逃走と判断して貴方を指名手配にしなければなりませんから。月の最後の日にここへお願いします。あ、今月、四月は大丈夫です。五月から十月まで、よろしくお願いしますね」


 これは納得だ。この世界にも仮釈放や、色々としっかりしている制度があることに驚いてばかりだが、俺の変な先入観が強いだけなのかもしれない。


 俺は静かに役人が言う条件に頷いていき、頭に入れていった。


 対談は長く、体感的には一時間半近く回ったと思う。

 役人から出された条件だが、まとめると。


 ・月の最後にここへきて役人と面会すること

 ・犯罪をしないことは勿論、そういった臭いのする仕事等には絶対に関わらないこと

 ・娼婦館や賭博場等には出入りしないこと

 ・仮釈放中はこの街に住むこと

 ・酒は飲んでもいいが控えること

 ・七日以上街から出る場合は申請をすること


 である。

 条件なんてとんでもない、当たり前のことがいくつか混ざっているほど、俺にとっては自由も同然の条件であった。


 月の面会は俺の一ヶ月の行動を話せばOKであり、頑張りを伝えにいくようで全く苦ではない。

 犯罪なんてするつもりは毛頭ないし、娼婦館………………………………と、賭博場になんて行くわけもない。


 ここを出たらしばらくはこの街でギルドで依頼をこなしながら金を稼いでいくつもりであったので住むことも問題ではない。酔うほどに酒も飲まなければいい。


 後は申請だが、ギルドの依頼くらいしか七日間も街を出るようなことはないだろう。


「以上ですが、何か質問や不満などはありませんか?」


 役人が表情の乏しい顔で、肘を机に置きながら聞いてくる。俺は真っ直ぐと、ハキハキとした声で答えた。


「問題ありません、質問も大丈夫です!」


 返事を聞くと、役人はふっと少しだけ笑ったかのように見えた。と、それで何かを思い出したのか、役人は続けて言う。


「あぁ、最後になりましたが……貴方は、仮釈放を受け入れますか?」


 その問いに、一瞬だが戸惑ってしまった。

 が、俺は明るく笑顔で答える。


「はい!」


 すると、役人は何故かふぅとため息をつき、厄介事が終わったかのような態度を見せた。 


「わかりました。これにて仮釈放の面接は終わりです。私、セストの名で貴方の仮釈放、観察人を引き受けました。では、帰っていいですよ。騎士さん、後はお願いします」


 ずっと俺の背後で控えていた騎士が、一声かけ外へと出ていく。俺は役人に一度頭を下げてから、その後へ続いた。


 五年、しっかりと罪を償うつもりでいたが、自分のことが認められ、仮釈放という形で結果になった。

 あと六ヶ月、牢獄で償うつもりであった罪は依頼等の人助けで手伝おう。


 建物から外へと出た。

 雲一つない、快晴であった。

 まるで俺の心のような、これからを祝福するような晴れ渡る空。何もかもがポジティブに感じ取られる。


 これはエンリに良い報告ができるな……。


 俺は一人騎士の後ろでニヤつきながら、牢獄へと戻るのであった。

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