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30-野宿と整理

 四日目の夜。

 村を出て半日ほど歩き、また野宿の準備である。

 夜の山は相変わらず危険だ。

 山の中で眠るよりはマシだろうと、草原に顔を出していた岩の影にマントを敷く。


 火魔法でも扱えれば焚火などもして獣よけもできただろうが俺には魔法を扱う才はないし、エンリも魔法を扱える者に化けられるほど俺の魔力は高くない。


 というわけで、また同じようにエンリが俺の上でうつ伏せになりながら眠る形だ。


 というわけも何もないのだが、今日明日くらいはもうエンリの好きにさせることにしている。俺の気分も悪いわけではない、むしろいい。

 さすがにもう元の姿へと戻ってもらってはいるが。


 すると、村を出てからだいぶ落ち着いてきたエンリは顔を横にそらしながら話し出す。


「主、嬉しそうだね」


「あぁ、まあな」


 何かを犠牲にしなければならない、そう思っていたものが両者納得できる形でおさまったのだ。俺が気にすることもなく、奇跡に近いくらい丸くおさまった。


 後はこの大金貨を親父に渡すだけ。


 エンリが言ってくるほどだ、喜びが顔に出てしまっていたのだろう。

 俺が相槌で返すと、エンリはそのまま続ける。


「主が倒れたのはビックリしたけど……へへ、あの時の主、かっこよかったよ」


 あの時、とは。

 少し考え、「倒れた」というワードから察するに俺が獣を狩った時のことだとわかった。


 あれも運が良かった。

 山から追い出されたものたちだけあって、力も弱く身体も小さい子どもや種が殆どであったため、俺も苦労はしながらも勝利することができたのだ。


 頭から生える一本の尖った角が特徴的なクカイ。山で出逢えばまずこちらから手を出さなければ襲っては来ないが、繁殖期などになると近づけ場威嚇され突進されることもある。


 とはいえ山の中でのカーストでは下に位置し、俺も二年間の間で何度か狩りに参加させてもらったことがあった。

 あの程度なら狩れるだろうと。


 角に気をつければ後は大したことはないが、今回のように群れをなしていると危険だ。

 一歩間違えれば串刺しになっていたところだった。まあ俺はそれも覚悟はしていたのだが。


 次にあの猪だが、エンリを襲っていた大猪とは別の種類である。

 成体となっても大きさはそんなに大きくはならず、比較的温厚な種類である。

 しかし食べるものがなければそんなものは関係ない。


 それにしても前世と同じく畑を荒らし人に迷惑をかけるとは、鹿も猪も変わらんな。


「おう、ありがとな」


 俺は少し照れながら返した。

 褒められることにあまり慣れていないのだ。

 しかもかっこよかった、なんて前世では無縁の言葉であった。


 いやぁ、本当に運が良かった。

 あの中にエンリを襲っていたような大猪でもいれば、石でもぶつけて気をこちらへ向け全速力で逃げていたところである。


 そしたら今のように悩みもなく寝床につけなかったし、エンリからはかっこ悪いと言われていたかもしれない。


 考えると何だか無性に恥ずかしくなってきた。


「そ、そういえばエンリ。俺に頼むこと、もう決めたか?」


「へ? ……う、うん」


 俺は話題をそらすように言うと、エンリはそらしていた顔を一旦こちらに向けると、また慌てて俺の胸に顔を埋め小さく答えた。


 顔が何だか紅くなっていたような気もするが、夜で暗いので多分気のせいだろう。


「そうか。なら山に帰った後きいてやるからな。楽しみにしとけよ」


 俺に言うことをきかせることが楽しみになるのかは疑問ではあるが俺はそう言って目を閉じる。


「…………うん」


 再びエンリは小さく返事をし、同じように眠りへとついた。

 何だかエンリらしくない反応であり、少々心配ではあるが山に帰って話を聞けばわかるだろう。


 俺は意識が遠のくまで、色々とあった出来事を頭に思い浮かべながら眠るのであった。

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