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凛に会えず、ぎりぎりまで停留所で粘っていた萌だったが、タイムリミットが近づき仕方なく学校へと向かった。

校門をくぐれば、なんとなくいつもと雰囲気が違い騒めいているが、凛の事ばかり考えていた萌はあまり気にすることなく教室へと入っていった。

だが、教室に入ると先程以上に騒がしく、何かあったのかと首を傾げていると、親友の湊理恵が萌の手を引っ張り席に座らせ、興奮を抑える様に小声で話した。


「萌、大変よ!」

「大変?何があったの?」

「綾瀬凛に恋人ができたのよ!!」

「―――――・・・・え?」

一瞬にして、目の前が暗くなるような錯覚に陥る。


学校自体が騒めく様な気配は、凛に対してのガチ勢たちの嘆きの声だったのだ。


理恵の言葉の意味を理解する事をまるで拒否するかのような萌の心。

呆然とする萌に理恵は、今朝自分が見た光景を説明した。

いつもとは逆の方向から、綺麗な女子大生と手繋ぎ登校していたと。

彼等を見た時間と言うのが、生徒達が一番多く行き交う時間帯で、その光景を見たのは理恵だけではなく大勢の生徒達が目撃していたのだ。


その光景を見た瞬間、生徒達の声にあふれていた空間が、一瞬にして音をなくしたのだと。

それほどまでに、衝撃を与えたのだ。


たった一人の男子学生が、これほどまでに影響を与えるなんて誰も思っていないだろう。

というのも、凛の人に対するあまりの興味のなさに、誰とも付き合うことは無いと思い込んで想いを寄せていた女子達が多かったからだ。

なのに彼は恋人を作った。その事実は、誰かにとっては諦めであり、誰かにとっては裏切りでもあった。

まさに、可愛さ余って憎さ百倍。

納得できずやるせない気持ちを吐き出す彼女達が、騒々しさを増長させていたのだ。


周りを冷静に見つめる理恵は、大げさに感じるほどのこの騒ぎの方に驚きを隠せない。

一人の男子生徒に対し、これだけの人間が好意を寄せている。まるでアイドルか何かのように。

理恵は自分勝手に嘆く彼女等よりも、好意を勝手に寄せられ恨み言を言われる凛に同情していた。


理恵は萌が綾瀬凛に恋している事を知っている、唯一の人だ。

萌の中学からの友人達は、彼女が未だアニメのキャラに夢中だと思っているから。

あれほどリアルに興味がなく、生身が気持ち悪いと言っていた手前、凛に恋をしたなどと言えなかったのだ。

高校に入ってから趣味の話や価値観などがとても似ていて、あっという間に親友となった湊理恵にしか凛の事は話していない。萌のちっぽけな意地をも大事にしてくれる、大切な友だ。

理恵も凛に対し憧れの様な気持ちは抱いていたが、アイドルを見る様な感情しかなく、ガチでのめり込んでいく萌を心配しながらも見守っていたのだが・・・

周りと同じように、凛達に対し悪い感情を向けないよう言葉を尽くす理恵。


だが、呆然とする萌を心配する理恵の言葉も、彼女の耳には何も届いてはいなかった。


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