前奏2
薬草師の見立てでは、骨に異常はなく筋を少し痛めたとのことであった。
「とつかは安静が必要ですね」
鎮痛薬となる薬草を塗布し、包帯を巻きながら薬草師は告げた。
「えっ!!」
それを聞いた本人は、真っ青な顔をして黙り込んでしまった。
周りを心配して取り囲んでいた先輩巫女達の表情も一応に暗いものだった。
「あの、わたし、何かまずい事でも申し上げたのでしょうか…」
周りの空気の重さに耐えきれず、薬草師はおずおずと尋ねた。
重い空気を払拭するかのように、優しく答えたのは巫女長その人である。
「ごめんなさい。あなたが悪いのではないのですよ。
ただ、5日後に舞の本番を控えていたものですから
少し混乱しているのです。
もう一度確認いたしますが、しばらく舞え」
「いいえ!舞います!舞わせて下さい!!」
長の話を断ち切り、リリアはすっと立ち上がろうとしたが痛みに耐えきれずまたしゃがみ込んでしまう。
「何やっているんです!今無理をすると一生舞えなくなるのですよ!!」
慌てて駆け寄り支えようとした薬草師の腕をぎゅうと握りしめ、涙目の顔のまま訴える。
「どうなってもいいんです!でも今度の月神祭の舞だけは」
「落ち着きなさい、リリア!
舞などどうにでもなりましょう!!
大切なのは養生することですよ!!」
いつも落ち着いた静かな物言いしかしないのに、珍しく声高に話す長の様子に
リリア自身は下を向き二の句が告げられなくなるのだった。
「でも長様、月刀の舞はリリアしか舞えません。
その上、今回の舞は世継ぎの君ご本人のご希望だと伺っております」
そう、今回の舞は、本国のおうたいし王太子自らがリクエストしたものであり
本人が視察にくることも公になっている。
その上、リリア本人しか舞えない特別な事情が存在したのである。




