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  作者: 上田 桃子
9/10

殺意、そして・・・

二度目の発覚で、坂下朋子の夫と電話で話しあって、今後一切連絡を取らない、取らせないと約束し、一応の決着は着いた。

しかし、私の心は、自分でコントロール出来ないほど、怒りが渦巻き、

その怒りは全て夫に向いた。

最初に知った時より、何倍も心が乱れた。

夫が憎かった。

半ば本気で離婚を考えた。

ある夜、どうにも気持ちが収まらない私は、タオルを手に、夫の枕元に座った。

寝ている夫の首にタオルを巻きつけ、少しづつ、力を強めながら締め上げた。

夫は、驚いて目を覚まし、力づくでタオルを首から取り去り、私を突き飛ばした。

今でも、本気で殺そうと思っていたのか、狂言だったのか分からない。

でも、痴情のもつれから相手を殺してしまった罪人と、私の間に大きな差がないのが、怖かった。

誰でも、一歩踏み出してしまったら、奈落に落ちるのだ。

人殺しなんて、割に合わない馬鹿げた事を発作的に起こさせるほど、不倫は、裏切られた妻の人間性を殺すのだ。

その夜から、夫は寝る時、いびきを全くかかなくなった。

よほど、怖いのだろう。

いい気味だと思った。


会社で忙しくしている時は忘れているのだが、行き帰りには不倫の事が頭から離れなくなっていた。

特に、私の乗り換え駅の駅前にあるビジネスホテルで関係を持っていた事が分かってからは、駅に降り立つ度に、たまらない気持ちになった。

駅のホームの端にたち、ホームに入ってくる電車の先頭をじっと見つめた事もあった。

ホームで電車を待っている時は、柱をつかむようにした。

自分で自分を止めるのに、必死だった。

ただただ、時が感情を薄めてくれるのを待っていた。


気がつくと、夫の不倫を知ってから5ヶ月がたっていた。

二度目の発覚からも2ヶ月がたっていた。

その頃は、私は日常的に夫の行動を監視していた。

夫のカバンに小型のレコーダーを入れ始めたのも、その頃だ。

今は、まっとうな使い方はしないな…というものが、仮面をかぶってネット通販で売っている。

その録音内容を再生するのが毎日のルーティーンになっていた。

夫には、方法こそ教えなかったが毎日監視していると伝えていた。

抑止力になればと期待していたが、無駄だった。

私の監視を携帯電話がらみとタカをくくっていたのか、公衆電話から坂下朋子に電話していた。

録音された夫の声は、私が聞いた事のない、優しげで楽しそうであった。

「朋、どうしてる?会いたいねぇ。

もうちょっと経ってからね。

この間、女房と温泉にいったんだよ。

でもさ、これが、朋だったらって、頭の中で置き換えてた。

朋と行きたいなぁ。」

この後も延々痴話話が続く。

メール同様、還暦前後の男女の会話とは思えず、30分近くもじゃれあっていた。

これが分別がつかなくなった人達なんだと、呆れると共に、夫の存在がひどく遠くに感じられた。

私の夫は居なくなったんだと、認めざるを得なかった。

初めて、言い知れぬ寂しさに覆われた。


夫の不倫が分かってから、世の中は結構、不埒な人達がいるんだという事が分かった。

マスコミを賑わせたタレントとミュージシャンや、妻の出産前後に浮気をした議員がいたが、一般社会にも不倫は溢れている。

今までは、不倫の話を聞いても、自分とは違う世界の事として、関心がなかった。

でも、改めて見回すと、街中でも、怪しい中年のカップルは結構いる。

私は不倫の臭いに敏感になっていた。

まず、40〜50代で手を繋いでいるカップルは怪しい。

この年代の夫婦であれば、夫に荷物を持たせる事はあっても、手をつなぐ事はまずない。

ディズニーシーに来ている中高年カップルも怪しい。

どの年代が行ってもたのしめる場所だが、中高年になって妻が行こうと思いたった時、誘うのは夫ではなく、友人だろう。

また、夫が妻と一緒に行くとしたら、会社の福利厚生のイベントくらいではなかろうか。

先日、コンサートに行った時、隣に座っていたカップルは話の内容からそれぞれに家庭のある、夫婦ではない二人連れだった。

ただ、同じ音楽の趣味を持っているだけの友人かもしれない。

でも、結婚以来、人の誤解を招かないように、異性と二人きりで会うことを慎んできた私としては、理解が出来ないことが、世に横行しているのだ。


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