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  作者: 上田 桃子
4/10

証拠

私は不倫の状況証拠を集めだした。

知った最初の衝撃の波が去ると、自分でも、驚くほど冷静になれた。

夫にすぐに問い詰めるのは止めた。

メールのやり取りを始めとして、夫は驚くほど無防備だった。

夫と坂下朋子は毎日、頻繁にメールのやり取りをしていた。

最近の不倫の話題で、必ず登場するLINEではない。

でも、逆に中身のある、濃いメールであった。

そして、私が夫からはもらった事のない、文面だった。

証拠集めの過程で、私自身や義母の入院、子供たちの節目と夫の密会記録をすり合わせてみた。

義母のカンファレンスや子供の卒業式などと重なっていた。

夫は、休みを取る口実に、家族の予定を使っていた。

夫の不倫を知ってから初めて、腹の底から怒りが湧いてきた。

奥歯を噛み締めてないと、叫びだしそうだった。

それでも唸り声が喉から漏れた。

私の手には、不安を訴える義母をさすり続けた感触が残っていた。

同じ頃、どこで何をしていたのか。

想像するのも嫌だった。


とにかく、夫の不倫を止めなくてはならない、それだけは思っていた。

でも、どうやって止めるか。

その間にも夫の不倫は 進行していく。

今まで、意識の外にあった夫の行動に注意してみると、数々の不倫に関連した行動があった。

しかも2年近くも関係を続けていると、いろいろな行動がパターン化しているのが分かった。

トキメクフリンでも、パターンになるのだと、何だか可笑しかった。

夫は以前から早寝早起きで、朝は午前5時前には起きている。

そもそも、何時に起きているのか、私には分からない。

起きて、コーヒーを入れ、トイレに行き、新聞に目を通すのが毎朝の習慣だった。

その後で私を起こしてくれていた。

その長年の朝の習慣に、坂下朋子へのメールが加わっていたのだ。

夫の携帯電話の使い方は今まで、通話が中心であった。メールもCメールが中心で、連絡事項を手短じかに送ってくるだけであった。

今でも私への日常的なメールはCメールだが、いつの頃からか、携帯メールが混ざるようになっていて、ほんの僅かな違和感を感じたのが思い出された。

きっと文字数制限のあるCメールでは、足らなくなってきたのだろう。

毎日、これだけの長文のメールを作成して送信するのは、時間がかかったろうと、夫の太い指を思いだして、笑った。

もう一つ滑稽だったのが、絵文字を使っていたことだ。

普段の夫からは想像できない姿だった。


「今日はね~!!嬉しいことがあるんだぁー。

知りたくない?教えてほしい?

僕がずーと好きだった人とあえるんだぁー。

今日はいっぱい愛し合うんだぁー(ハートマーク)

それじゃねー(キスイラスト)」


夫は、私に限らず同僚や友人とのやり取りも、ほぼCメールなので坂下朋子とのやり取りだけが、何百通も携帯メール履歴に並んでいるのは、圧倒的な力を持って私に迫ってきた。

夫は寝るときも携帯電話を枕元に置くようになっていたので、坂下朋子とのメールの送受信記録を私の携帯に転送するのは大変だった。

携帯の操作に精通していれば、一気に転送する方法もあるのだが、その時点での私は、夫同様、連絡手段としてしか携帯電話を使っていなかった。

夫が熟睡したのを見計らって、何日かに分けて、携帯メールの履歴を集めた。

そして、夫の手帳に挟みこんであったビジネスホテルのデイユースのメモや勃起不全の薬の説明書、密会の予定を書き込んでいた、手帳のコピーをとった。

証拠集めにのめり込んでいく自分が怖かった。


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