4.5
久弥視点。ツイッターの診断メーカーで授かったお題で書いたものでした(活動報告にあげたものです)。
いつも通り学校が終わってから裏山に向かう。ただ、その前にこっそりコンビニに寄って棒付きのアイスを買った。今日は暑い一日で、放課後になっても気温は大して下がらなかった。
「久弥、また学校の帰りにコンビニ寄ったの? お父さんとお母さんに怒られちゃうよ」
「今時そんな事に目くじらを立てる親なんていないよ。ほら、こっちは郁の分」
ぶつぶつ文句を言っていた郁もアイスの誘惑には勝てず、結局美味しそうに食べている。溶けないうちにとほんの少しだけ急いで食べる友人が見せる笑顔に僕は安心していた。
金山が死んでから一か月ぐらいはずっと元気が無かったものの、ようやく普通になりつつある。お前のせいで死んだんじゃないぞと言っても良かった。けれど効果なんてないだろうと思って言わなかった。
「冷たくて美味しい。夏はアイスが美味しい季節だ」
「うん、でも勝手にコンビニなんて行っちゃ駄目だからね」
「じゃあ朝学校に行く前にランドセルに詰めておく」
「溶けちゃうよ!」
二人でくだらない会話をして笑い合う。もし、金山がのうのうと生きていたら、自分に歯向かった郁をいじめの対象にしていたかもしれない。そうなっていたらこんな風に郁は笑っていただろうか。
そこまで考えると金山を殺して良かったと心底思う。金山はまだ人間を殺してはいなかった。ただ、いつか殺人を犯す可能性はいくらでもあった。優弥のように死ぬべきではない人間があんな奴らに殺されるくらいなら僕があいつらを殺す。
僕には力がある。僕は世界を変える力を持つ宇宙人だ。このおぞましい世界を変えるためなら人間の皮を被った化け物をいくらでも殺せる。殺さなければならない。
それが実の母親でも同じ学校の生徒でも。
「久弥、ゴミはちゃんと持って帰ろうね」
「それくらいわかってるよ」
僕は自分がろくな死に方をしない事を知っている。死ぬべきではない人間のためとはいえ、僕がやっている事は立派な殺人だ。いつか報いを受ける時は来るだろう。
死ぬのは全然怖くない。怖いのは優弥のように大切な人間を失う事だ。例えば、目の前にいる親友が誰かに殺されるとしたら、僕は躊躇いなくその誰かを殺す。
どんなに悲惨で救いようのない出来事が起きたとしても、郁には絶対生きていて欲しいと僕は常に願っている。
今度こそ、さよなら。