回想「皇帝のご寵愛」
新たに頭目になった男が、二代目として最初に始めた仕事は、自分たちの採取師チームの改名だった。
メンバーも心機一転とばかりに、このアイディアに賛同したが、良い名前がなかなか出てこない。
恰好よい名前を出すから決らないのだ、だから逆から攻めてみようと、頭目が言い出した。
反対意見も出たが、かと言って良い案がある訳でなし。
結局、各自が「忌み嫌われるもの」を紙に書き、頭目がくじ引きの要領で、最初に引き当てたものを新たなチームの名前にすることになった。
「頭目が好きに決めて良いと思うのだが」
「これが良いんだ。皆で決めたいんだ」
「あっし、字が書けねぇんですが」
「そこの新人に代わりに書いてもらえ」
「忌み嫌われるものってどういう意味なんすか、二代目」
「うーん、……金をもらっても欲しくないもの、だな」
ワイワイ騒がしい。しかし、これが楽しいのだ。
頭目の兜に、全員が紙切れを入れ終えた。
律儀に目を閉じた頭目は、毛だらけの右手で一枚の紙切れを選び出す。
「頭目、何と決まりました」
「まてまて、今見るから」
捻じれた紙をほどき、目を通した頭目が奇妙な表情を浮かべた。
「頭目?」
「……面白え」
「や、やり直しますか」
「いや、一度決めたことだ。本日より、俺達は『皇帝のご寵愛』と名乗るぞ!」
「ひゃあ、やっと決まったぜ。よーし、サム。チャーハン作ってくれ」
新しいチームの名前が決まった。警察の目を欺くには、都合が良いかもしれないし、皮肉も効いているのかもしれない。
しかし、後に双竜と呼ばれる新人の採取師サマンサは、何と言うか非常に……がっかりしながら厨房へ向かった。




