表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアス×クリスティアさくらの日  作者: 澪ナギ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/2

出逢わなければ、君が死ぬことはなかった

 恋人がその日に桜のシールを貼ることに、疑問しかなかった。


「……」

「♪」


 まるで「記念日」と言うように。

 三月になれば、嬉々としてシールを手に取り、二十七日に貼る。


 毎年、毎年。


 シールがなければ手書きで。

 目についたペンで日付を囲う。


「……」

「♪」


 今年もシールを貼り終えた恋人は、満足そうにカレンダーを棚に戻した。

 それを、見て。


「……毎年嬉しそうだなお前は」

「うんっ」


 声をかけてやれば、嬉しそうで。

 ぱっとこちらを振り返った恋人は、声だけでなく顔も嬉しそうにして、俺のもとへ駆けてくる。

 読んでいた本はどかして、勢いのまま俺の膝に飛び乗ってきたクリスティアを受け入れた。


「俺にはよくわからん」

「なんでー」


 ご機嫌に俺に抱き着いてくるクリスティアに、見えないとわかっていながらも、わけがわからないという雰囲気を隠さず。


「記念日になるのかその日は」


 そう、こぼせば。


 少しだけ冷えた体温は一度離れていく。名残惜しく感じるのもつかの間。目に映ったのは、心底不思議そうな少女の顔。

 その少女はこてんと首を横に倒し。


「記念日…」


 さも当然と言うように言った。


 それにはただ、そうか、としか返せず。


 再び少し冷えた体温を抱きしめる。


「♪」


 ご機嫌に俺の背に手をまわしてきた恋人を堪能しながら思うのは、やはり疑問。



 記念日か?


 この日が。



 そう、疑問に思わざるを得ない。



 三月二十七日。

 四人で、正確には俺達三人とクリスティアが出逢った日。

 確かにそこでクリスティアに助けられ、出逢ったからこそ、恋に落ち。今こうして恋人としていられている。

 まぁ出逢った記念日として考えてもいいんだろう。


 それが、その日に何も重なっていなければ。


 その日、確かに出逢った。すべてが始まった日だ。


 ただ同時に。


 その日は、終わりの日でもある。


 すべてを失った日。

 お前を守れなかった日。



 俺にとっては――。


「……終わりの始まりとはよく言うものだな」

「?」

「何でもない」


 何度も出逢う。けれど、何度も失う。

 終わりよければすべてよしの、逆みたいなものだ。


 終わりがひどすぎて。



 俺にはこの日が記念日だとは到底思えない。



 それなのに。


「……」


 それなのにお前は、記念日というのか。



 何度も俺に見殺しされるこの日が。

 守ると約束したのに、守ることもできない、情けない俺に見殺しにされるこの日が。


 己の情けなさに、いつの間にか手に力が入っていて。服を強くつかんでいる。

 緩めたいけれど、何故か緩められぬまま。


「……」


 逆に強く、抱きしめた。


「…」


 けれど苦しいはずなのに、恋人はその強さには何も言わず。


「!」


 ただただ、俺の髪を優しくすく。


「……なんだ」

「なんも…」


 嘘つけ、と言う前に、小さな体が息を吸ったので言葉を止める。


「ただね」

「……」

「いつかリアスにも、記念日になればいいなって思う…」

「……」


 今は無理でも。

 そうこぼす彼女の手を受け入れながら、


「……そう思えるには」



 あと何度。



「あと何回、繰り返せばいいだろうな」



 お前が死んでいく姿をいればいいんだろう。


 果てしなく感じる旅に、そう呟いて。



「…」

「……」


 あと少しだと言うように髪をすき続ける恋人を、より一層強く抱きしめた。



『出逢わなければ、君が死ぬことはなかった』/リアス


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ