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第53話 戦乱の世に咲く


― 16××年  某国



 絶え間ない内戦によりこの国は半数以下に人口を減らし、間もなく終戦の時を迎えようとしていた・・・。東軍の将軍を務めていたエクスレイアは、最終決戦を控えた数日前、彼の故郷であるカズサ村に帰郷していた・・・。


「ユピ・・・。いよいよムサツ城へ攻めることになった・・・」


 美しく着飾ったユピが出陣前のエクスレイアに寄り添っている。華やかな朱色の着物は、エクスレイアがユピに贈った結納の品。二人は一か月後、祝言をあげることになっている。


「エクスレイア・・・。あなたの無事を祈っています・・・。必ず、帰ってきて・・・」


 ユピが涙を流す。エクスレイアはユピの涙を指でぬぐい、静かに抱き寄せた。


 類まれなる剣術の才はエクスレイアをこの国の将軍にまで押し上げた。だが、彼が戦い続けてきたのは、決して国のためではない。


 戦乱の世に咲く一輪の華。エクスレイアは物心ついた頃からこの美しい幼馴染の少女のために、命を懸けて戦ってきたのだ・・・。



― しかし二週間後・・・彼は魂を捨てた・・・。


 ムサツ城を攻略し、再び故郷へ戻ったエクスレイアが見たものは荒れ果てた無残な村の姿・・・。ユピは命を落としていた。村を襲ったのは味方のはずの東軍の兵士。


 怒り狂ったエクスレイアは破壊の権化となって暴れ出し・・・やがて謀反人として処刑された。



 ・・・こうしてユピとエクスレアは、無情な世の中でようやくつかみかけた幸せを手にすることなく生涯を終え、この世界に転生することになる。


 ユピは前世の記憶を無くし、エクスレイアは曖昧な記憶を保ったまま・・・。


 だが、エクスレイアの転生はあまりに不完全だった。魔王軍に転生した彼は、すぐに永い眠りにつくことになったのだ。そして長い年月を経て再び目覚めた時、彼の記憶は歪んでいた。そして魔王アークシュタインの思いのままとなったのだ。




「エクスレイア・・・これがお前の前世の記憶だ・・・」


 アークシュタインは不敵な笑みを浮かべている。


「な、何てことだ・・・。ユ、ユピ!」


 エクスレイアは膝から崩れ落ち号泣した。あふれる涙をこらえることが出来ない。エクスレイアは・・・すでに戦える状態ではなかった。


「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



 エクスレイアが放った『狐火』がすっと消えると、アークシュタインは息を整え、禍々しい刀に魔力を込めた。


― グオン・・・グオン・・・グオン・・・


「実に惜しい器だった。エクスレイア・・・。さらばだ」


― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 アークシュタインの刀が凄まじい闇のエネルギーを発する。そして、エクスレイアの額に向って一気に振り下ろした!


― ガシ―――――――――ン!


「・・・!? ガ、ガララ!!」


 間一髪! いつの間にか天叢雲剣を手にしたガララが、アークシュタインの刃からエクスレイアを守った!


「ふはははは―――。久しぶりじゃのう天叢雲剣(あまのむらくも)。い―い、斬れ味じゃ」


 ガララがそう言うと、アークシュタインの禍々しい刀にビキビキとひびが入った。


― パキ――――――ン!


 刀が粉々に砕け散る!


「・・・また、貴様か・・・。私には時間がないのだ。目障りだ退け!!」


 アークシュタインが呪文を唱える。再び凄まじい闇のエネルギーが凝縮する。


「ふう・・・。心優しかったお主が何故こうまで変わるかのう・・・。だから、魔王軍嫌いなんじゃ。わしもそろそろ潮時。お主の師として・・・責任を果たしてやるわい。かかって来い、馬鹿弟子」


 ガララが指を「ちょいちょい」っとしてアークシュタインを挑発する。


「くっ・・・いいだろう。『破壊神(シア)』はすでに私の手を離れた。万が一、カエデから『破壊神(シア)』を切り離せば・・・。器を失った『破壊神(シア)』は制御がきかず、やがてこの世の全てを破壊する。どの路・・・私は己の宿命を果たすことになるのだ」



(・・・・・・え?) 



「な、な、な、な、な、何じゃとお―――――――――!!」


 ガララは想像もしなかったアークシュタインのセリフにビックリ仰天した。


「・・・ま、まさか。カエデと『破壊神(シア)』を切り離した・・・のか?」


 ガララはとぼけた顔をして、そっぽを向いている。


「フ、フハハハハ・・・面白い。・・・そうか。ならば・・・もう私自身の役目(はかい)などどうでもよい・・・」


 アークシュタインは笑みをこぼした。闇のエネルギーがすっと消える。


(・・・?)



「『大天魔猿神(だいてんまさるのかみ)』・・・魔王軍歴代最強を冠する、我が師ガララよ。お手合わせ願いたい。本来・・・私の望みはただ一つ。世界、最強の証」


 ガララがニヤリと笑う。


「はっはっは。前言撤回。やっぱりお主は青くさいのう。買いかぶりすぎじゃ。お主がもう400年生きておられたら・・・わしなど足元にも及ばんわい」


 ガララが天叢雲剣(あまのむらくも)に力を入れると、妖刀は白く強い光を放った・・・。


「さあ、馬鹿弟子。己の生涯を賭けた一騎打ちじゃ・・・。いざ! 参る!!」


最後まで読んでくださってありがとうございました!! 


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