第41話 VSゲエーロ
― カエデ VS 大召喚士ゲエーロ
フェンの結界を解いたカムサムが左手でフェンに回復魔法を唱える。と同時にカムサムは右手を前に突き出し、もう一方の結界に魔力を込めた。
「・・・よくやった、姫。あとはカエデ君。負けるなよ」
ゲエーロが召喚した『死霊騎士』10体はブエルの攻撃によってあっけなく全滅した。倒し際にブエルが猛毒をうけたが、リリスの解毒魔法によって全快したところだ。
「ありがと。リリス。戻ってくれ!」
「お安い御用じゃ。カエデ」
白猫のリリスはブエルに目配せすると、『竜王の書』に戻っていった。巨大化したブエルが再び戦闘態勢に入り上空に舞い上がる。
(やっぱりブエルがこのレベルになると同時召喚は難しいか・・・。俺のレベルがまだ足りてないんだ)
ロドアに本を装飾してもらい新たな力を手に入れたカエデだが、強化したブエルと同時にリリスを召喚するのは困難を極めていた。
「グヌヌヌヌヌヌ・・・・クソ・・・クズ召喚士のくせにワタシの可愛い『死霊騎士』を・・・ギャアア、ムカツク、ムカツク、ムカツク!!」
ゲエーロは憤慨して顔をゆがめている。カエデは『竜王の書』を構えた。
「何でこんな甘っちょろいクズにこのわたしが苦戦しないと・・・。アア・・・そうだ・・・ゲヒヒヒヒ」
ゲエーロは気味の悪い笑みを浮かべてクツクツと笑い出した。禍々しい本から煙があがり、ペラペラとページがめくれる。
「いでよ・・・『不死悪魔』」
地面にぼこぼこと穴が開き、再び気色の悪い何者かが這い出てくる・・・。
腐った死体のような20体の不死悪魔は、それぞれが違う姿をしていた。杖を携えた老人、髪の毛の長い女性、大きい悪魔、小さい悪魔。
カエデはその姿をみて・・・目を閉じて声を殺した。
(・・・!! くっ! む、村のみんな・・・)
それは、カエデが生まれ育った村の・・・村人たちだった。
ゲエーロはカエデが魔王城から逃亡した際、カエデの生まれ育ったその村を焼き払い、村の住人を一人残らず殺して回ったのだ。あげく・・・こんな姿にかえてなお使役している。
カエデは怒りで震えていた。
だが、カエデには村人たちを攻撃することなどできなかった。
「ブエル・・・」
ブエルがカエデを見る。
「ごめん・・・戻ってくれ・・・」
「カ、カエデ!? な、何で・・・」
カエデが大声で叫ぶ。
「いいから! 早く!」
ブエルはビクッとして『竜王の書』に戻っていった。召喚士の命令は絶対だ。
「ゲヘヘヘヘヘ・・・甘い男だ。クズ召喚士。覚悟はいいな」
ゲエーロが手を振りかざすと、『不死悪魔』が一斉にカエデに襲いかかった!
― ボカッ、ボコッ、ガシッ! ・・・ボコッ・・・バキッ・・・
カエデの顔が・・・腕が・・・足が・・・みるみるうちに腫れあがっていく。
「み、みんな・・・ごめん俺のせいで・・・俺のせいで・・・」
カエデが涙を流す。不死悪魔の攻撃はなおも止まらない。『竜王の書』がガタガタゆれている。
中にいるガルムが、ブエルが、リリスが、ミトラが! 召喚獣たちが大好きなカエデを助けたいために『竜王の書』を出ようとして暴れまわっているのだ!
「オイ! クズ召喚士・・・苦しいか? ゲハハハハア。もう少し楽しみたいがさっさと始末しないとわたしが責められるからなあ。ト・ド・メ・ダ!!」
ゲエーロがにんまりと笑いよだれを垂らす。そして杖を振りかざすと不死悪魔たちから雄叫びがあがった。
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
そしてそれぞれが強烈な一撃をカエデに向かって放った。カエデがぐっと目をつぶる。
・・・攻撃が当たらない。カエデはゆっくりと目を開けた・・・。
すると村人だった不死悪魔たちは目に涙が浮かべ、苦痛に耐えながら攻撃を止めていた。
「ゲハハハハ・・・は!? お、おいお前たち・・・何をしている!!」
ゲエーロはうろたえていた。本をバンバン叩いている。
「カ、カエデ・・・ワシジャ・・・オマエハワルクナイ。ワルイノハ、マオウグンジャ・・・ギルティアニ・・・ヘイワヲ!!」
そういうと杖を携えた老人の不死悪魔は、黒い霧となって消え去った。他の不死悪魔もどんどん消えていく・・・。
「そ、村長様・・・」
・・・カエデは涙をふいてうなずいた。カエデの目に光が宿る。
(悪いのは魔王軍。悪魔たちなんかじゃない。悪魔も人間も助けるんだ!)
「いでよ! ブエル!」
『竜王の書』の震えが止まり、爆炎とともにブエルがあらわれた!
「グオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォア!!」
ブエルの青い炎が、怒りによって最大級に燃え上がっている。カエデがブエルの背中に乗ると、ブエルは大きく羽ばたき上空へと舞い上がった。
ゲエーロは本を放り投げつけて踏みつけている。
「ゲエーロ。召喚獣と召喚士は対等なんだ! お前は仲間を何だと思ってる!!」
カエデの声とともにブエルにスイッチが入った!
「いくよ! ブエル! 『超新星爆発!!』
― キュイ―――ン・・・・・・
「なななな、グスのくせに生意気な! グスのくせにぃいい!!」
ブエルが大きく息を吸い込み光の粒子を取り込む。そして凄まじい爆炎を放った!
― ドゴガガガガガガガガガガガ――――――ン!!!
「ギャアアアアアキキキキキキキサマァ―――!! クズクズクズクズクズクズクズククズズクズクズクズガアア――――――! ギャアアアアアアアアアア・・・・・・」
煙が消え去ると、真っ二つに折れた杖が地面に転がっていた。
ピクリとも動かないゲエーロからゆっくりと煙があがっている。そして・・・静かに消えていった。気味の悪い色をした核が残り「ギュン」と空へと飛んで行く。
カエデの完全勝利だった。ゲエーロに殺された何百という魂が空に上がっていく。
魂の行先をしばらく目で追いかけてカエデは静かに目を閉じた。そして心に強く誓った。
(村のみんな・・・。絶対、俺がギルティアを平和にするから!)
カエデが振り向くとそこにはいつもの仲間。みんな傷だらけだ。カエデは頭を搔きながら笑みをこぼす。
するとフェンがカエデに駆け寄り思いきり抱きついた。
「カエデ・・・。良かった、無事で・・・」
フェンはカエデの胸に顔をうずめた。カエデが軽く頭をなでる。フェンはしばらくの間涙が止まらなかった・・・。
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