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酔えば酔うほど異世界最強 〜ランダム酒魔法と極上の一杯で世界を救います〜  作者: 晴天よよい
第一章

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3杯目 魔王との謁見

翌朝、リリアが部屋に迎えに来た時、その表情はいつもより硬かった。


「あの……アルさん」


「ん? どうした?」


「父……魔王様が、お会いしたいとおっしゃっています」


「魔王……」


アルは昨日の出来事を思い出した。食堂で酔拳魔法が発動し、滅茶苦茶にしてしまったこと。


「やっぱり、昨日の件で怒られるのかな」


「いえ……! そんなことは……」


リリアは慌てて首を振った。


「父は、アルさんの力に興味を持たれているんです。決して、悪いようにはしません……」


「興味、ねえ……」


アルは少し不安になった。実験台にされたりしないだろうか。


「大丈夫です。父は……優しい方です」


リリアは真剣な目で言った。


「わかった。会いに行こう」


アルは覚悟を決めた。



魔王がいる玉座の間は、想像以上に威圧感があった。


高い天井、黒い石壁、そして奥には巨大な玉座。そこに座る魔王ゼクセル・クマガワは、見るからに強そうなオーラを纏っていた。


立派な角、鋭い眼光、筋骨隆々とした体躯——だが、不思議とその表情には、威厳とともに穏やかさも感じられた。


「よく来た、人族の青年」


魔王の声は低く、響き渡る。


「私が魔王ゼクセル・クマガワだ」


「あ、どうも。アルです」


アルは緊張しながらも、軽く頭を下げた。


「もっと丁寧に……!」


リリアが小さく耳打ちするが、アルの性格上、これが限界だった。


魔王はその様子を見て、フッと笑った。


「堅苦しい挨拶は不要だ。リラックスしてくれ」


「あ、はい……ありがとうございます」


「さて、単刀直入に聞こう。昨夜、お前は酒を飲んで魔法を発動させた——この目で見させてもらった。見事だった」


「え……見てたんですか?」


「ああ。遠視の魔法でな。酔拳魔法——酒を飲むことで魔法が発動する、極めて稀な能力だ」


魔王は真剣な表情で続けた。


「お前、何か特別な訓練を受けたことは?」


「いや、普通の大学生なんで。体育の授業くらいしか……」


「武術は?」


「喧嘩したことすらないです」


魔王は不思議そうな顔をした。


「では、あの力は完全に酒によるものか……」


「魔王様」


リリアが一歩前に出た。


「アルさんは、この世界に転移してきた方です。もしかしたら、転移者特有の能力かもしれません」


「転移者……」


魔王は顎に手を当てて考え込んだ。


「なるほど。川の扉から来た者には、時折、特別な力が宿ることがある」


「アル」


魔王は真剣な表情になった。


「お前は、魔人族をどう思う?」


「え?」


突然の質問に、アルは戸惑った。


「えっと……別に? 普通の人たちと変わらないんじゃないですか」


「普通?」


「だって、リリアも優しいし、礼儀正しいし。角が生えてるのと瞳の色が違うくらいで……あと、可愛いし」


リリアの角がほんのり赤く染まった。


「……お前は、魔人族を恐れないのか?」


「恐れる理由がないんで。今のところ、親切にしてくれてますし」


「だが、人族と魔人族は長年争ってきた。互いに憎しみ合い、殺し合ってきたのだぞ」


「それって、過去の話ですよね?」


アルは首を傾げた。


「俺、歴史の授業とか苦手だったんで偉そうなこと言えないんですけど——過去にどんなことがあったとしても、今目の前にいる人がどうかって、別問題じゃないですか」


「……どういう意味だ?」


「だって、魔人族全員が悪人ってわけじゃないでしょ? 人族だってきっと同じ。良い人もいれば悪い人もいる。それを『種族』っていう括りで敵だの味方だの決めつけるのって、なんかもったいなくないですか」


アルは言葉を続けた。


「例えば俺、リリアと最初に出会えて良かったって思ってます。もし『魔人族だから』っていうくだらない先入観で関わらなかったら、こんな優しい子と出会えなかった。そう考えると、種族で判断するのって損ですよね」


玉座の間が静まり返った。


魔王は——ゼクセル・クマガワは、目を見開いてアルを見つめていた。


種族で判断するのは、損をしている?


その発想は、魔王にはなかった。


魔人族と人族の対立は当然のもの、歴史が作り上げた避けられない運命——ずっとそう考えてきた。


だが、この青年は「もったいない」「損をしている」と言った。


憎しみや恐怖ではなく、単純に「出会いの機会を失っている」という視点。


「……お前は、面白い奴だな」


魔王はゆっくりと笑みを浮かべた。


「アル。実は、お前に頼みたいことがある」


「頼みごと?」


「ああ。魔人族の中には、私の改革に反対する保守派がいる。彼らは人族との和平を拒み、リリアの思想を危険視している」


「それって……」


「昨夜、お前たちを襲おうとした者たちもいる。おそらく、保守派の仕業だ」


アルは顔をしかめた。やっぱり厄介事に巻き込まれている。


「それで、俺に何をしろと?」


「彼らを説得してほしい」


「……は?」


アルは思わず聞き返した。


「魔王様、それは無理があります……!」


リリアが慌てて口を挟む。


「アルさんはただの人族で、しかもこの世界の事情をほとんど知らないんです。保守派を説得するなんて……」


「だからこそだ、リリア」


魔王は娘を制した。


「私やお前が説得しても、彼らは聞く耳を持たないだろう。だが、人族であるアルが話せば——それも、種族に囚われない視点を持つこの青年が話せば、何か変わるかもしれない」


「でも……」


リリアは不安そうにアルを見る。


アルは頭を掻いた。正直、面倒くさい。こんな政治的なゴタゴタに首を突っ込みたくない。


「あのー、断っても——」


「アルさん……!」


リリアがアルの手を掴んだ。その瞳には、切実な光が宿っていた。


「お願いします……力を貸してください。私、保守派の人たちとも和解したいんです。彼らだって、本当は傷ついているだけで……悪い人たちじゃないんです」


リリアの真剣な眼差しに、アルはため息をついた。


「……わかったよ。やるよ」


「本当ですか……!?」


「ただし、失敗しても責任は取らないからな。俺、交渉とか苦手だし」


「ありがとうございます……!」


リリアは嬉しそうに微笑んだ。


その時——。


ガシャーン!


突然、玉座の間の窓ガラスが割れた。


「きゃあっ……!」


リリアが悲鳴を上げる。


飛び込んできたのは、狼のような姿をした魔物だった。体長は2メートル近くあり、鋭い牙と爪を持っている。


「ダークウルフ……!」


魔王が立ち上がった。


「なぜこんなところに……まさか、保守派が……!」


「リリア、下がって……!」


アルはリリアを庇うように前に出た。


ダークウルフはアルとリリアを睨みつけ、低く唸り声を上げる。


「くそっ、武器も何もないのに……」


その時、魔王が手を掲げた。


「待て、アル」


「え?」


「お前の酔拳魔法を、もう一度見せてもらえるか」


「でも、酒がないと……」


「ここにある」


魔王が手を振ると、空間から酒瓶が現れた。


「魔王様、それは……!」


リリアが驚愕の表情を浮かべる。


「ドワーフの地底黒ビール。アルコール度数が高く、魔力との相性も良い。試してみろ」


アルは酒瓶を受け取り、一気に飲み干した。


「……うまい! これ、めちゃくちゃうまいぞ!」


濃厚な味わい、スモーキーな香り、そして強烈なアルコール——。


その瞬間、アルの体が光り始めた。


「来た……!」


頭の中に声が響く。


『酔拳魔法発動——土魔法 Lv4。持続時間:15分』


「土魔法!?」


アルの足元から、石の柱が次々と生え出た。


「うおっ!?」


石柱はダークウルフに向かって伸び、その動きを封じる。


「やった……!」


だが、ダークウルフは力任せに石柱を破壊し、再び襲いかかってきた。


「まだ来るのかよ……!」


アルは咄嗟に地面を叩いた。すると——。


ドゴォン!


地面が隆起し、巨大な岩の壁が出現した。ダークウルフは壁に激突し、動かなくなった。


「……終わった?」


「ああ、見事だ」


魔王が拍手をした。


「土魔法、しかもLv4。昨日の風魔法とは違う属性だ。やはり、酔拳魔法はランダムに発動するようだな」


「ランダム……ってことは、毎回違う魔法が出るんですか?」


「おそらくな。それが酔拳魔法の特徴だ」


「アル」


魔王は真剣な表情で言った。


「お前の力は、この世界を変える可能性を秘めている。だが、それは同時に、お前を狙う者も増えるということだ」


「……覚悟しておきます」


「本当に、保守派を説得する覚悟はあるか?」


アルはリリアを見た。彼女は不安そうに、だが期待を込めた目で見つめている。


「……まあ、なんとかなるでしょ」


アルは笑った。


「酒があれば、大抵のことは何とかなる。それに、リリアを守りたいし」


「アルさん……」


リリアの目が潤む。


「ありがとう、アル」


魔王は満足そうに頷いた。


「では、まずは保守派のリーダー、マリアに会ってもらおう。彼女は私の義理の娘で、リリアの姉でもある」


「姉……?」


「はい……マリアお姉様は、過去の戦争で深く傷つきました。だから、人族を恐れているんです……」


リリアは悲しそうに俯いた。


「わかった。会ってみる」


アルは覚悟を決めた。



もし面白い・続きが気になるとほんのすこーしでも思っていただけたら☆☆☆☆☆をポチポチして貰えたら嬉しいですm(_ _)m

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