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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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20/60

20杯目 新たな住まいと新たな日常

魔化獣討伐から3日後、俺たちは王都に戻っていた。


「それでは、これからの方針について話し合いたい」


 王城の会議室で、王が重々しく口を開いた。


 出席者は俺、リリア、マリア、ゲルド、マーカス、ルンブラン王子、そしてルーナ姫。


「まず、マリア殿」


「はい」


 マリアが立ち上がる。


「王都の民にかけられた呪いについて、引き続き調査と解呪をお願いしたい。まだ完全には解けていない者もいるとのことだ」


「承知しました。私が責任を持って対応いたします」


「ゲルド」


「はい」


 ゲルドが緊張した面持ちで立ち上がる。


「お前にはマリア殿の補佐を頼みたい。それと、魔化獣の体内から見つかった黒い結晶の分析も」


「……光栄です。全力を尽くします」


 ゲルドは深々と頭を下げた。


「マーカス」


「はっ」


「お前は引き続き王都の兵をまとめ、訓練を強化してくれ。次なる脅威に備えねばならん」


「御意」


 マーカスが敬礼する。


「そして……アル殿」


 王が俺を見た。


「はい」


「お前には、王都の近くに留まってもらいたい」


「え?」


 俺は思わず聞き返した。


「今回、お前の力がなければ、我々は魔化獣に敗れていただろう。次なる危機が訪れた時、またお前の力を借りたい」


「いや、でも俺……」


「父上!」


 突然、ルーナが立ち上がった。


「私からもお願いします!アルには王都に留まってもらいたいのです!」


 ルーナの顔が真っ赤だ。


「ル、ルーナ姫……」


 リリアが複雑な表情をしている。


「それに、アルはこの国を救った恩人です。もっと丁重にもてなすべきです!」


「ふむ……」


 王は少し考えてから頷いた。


「ならば、王都の郊外にある離宮を1つ、アル殿に提供しよう」


「え、離宮って……」


「少々古いが、立派な屋敷だ。そこで自由に過ごしてくれ」


「いや、そんな……」


 俺が戸惑っていると——。


「私も行きます!」


 リリアが立ち上がった。


「アルの護衛として、私も屋敷に住みます!」


 リリアの角が、決意を示すように赤く光った。


「え」


「あら」


 ルーナとリリアの視線がバチッと交わった。


「リリアさん、護衛……ですか?」


「はい。アルは私が守ります」


 リリアの声は凛としていたが、心臓は激しく鼓動していた。牽制するかのようにルーナ姫に視線を送る


「ふーん……」


 ルーナはほっぺを膨らませている。不満そうだ。


 俺は二日酔いのせいかズキズキする頭を抱えた。


 こうして、俺の新しい生活が始まることになった。


 翌日、俺とリリアは王都の郊外にある、屋敷にやってきた。


「うわ……でかい」


 屋敷は想像以上に立派だった。


 2階建ての大きな建物で、庭も広く、部屋も多そうだ。

 また、リビングと思われる広間はちょっとしたパーティーでも行えそうな広さだった。

 ただ現在は使われていないせいか、蜘蛛の巣やホコリにまみれていた。


「これを2人で掃除するんですか……」


 リリアはゲンナリしつつも、その瞳には嬉しそうな光が宿っていた。


 「まあ、頑張ろうぜ」


 俺は袖をまくった。


「とりあえず、1階から掃除していこう」


「はい!」


 リリアは元気よく返事をした。角がほんのり赤く染まっている。


 2人で箒と雑巾を持って、掃除を始めた。


「アル、こっちの部屋もお願いします」


「おう」


 リビング、キッチン、寝室……部屋がたくさんある。


「使わない部屋も多そうだな」


「そうですね。でも、一応全部掃除しておきましょう」


 リリアは几帳面だ。


「あ、アル」


「ん?」


「その……2人で住むことになりましたけど……」


 リリアの顔が少し赤い。


「へ、変なことしないでくださいね!」


 言った瞬間、リリアは後悔した。本当は、もっと違うことを言いたかったのに。


「へ?」


 俺は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。


「な、なんでもないです!……ごめんなさい……」


 リリアの角が、赤く染まる、ついでに顔も赤かったがどことなく残念そうな顔をしていた。


(?なんで残念そうなんだ?)


 俺は首を傾げた。


 2時間ほど掃除していると——。


 ピンポーン。


 玄関のチャイムが鳴った。


「誰だろう?」


 俺が玄関に向かうと、扉の向こうにルーナが立っていた。


 しかも、大量の荷物を持って。


「やっほー、アル!」


「ル、ルーナ姫!?」


「ルーナでいいわよ。私たち、もう友達でしょ?」


 ルーナはニコニコしている。


「それより、これ受け取って!」


 ルーナは荷物を押し付けてきた。


「え、何これ?」


「お祝いの品よ!食器とか、調理器具とか、色々!」


「え、そんな……」


「遠慮しないで!それと……」


 ルーナはもう1つ、大きなバッグを取り出した。


「私、今日はここに泊まっていくわ!」


「は!?」


「だって、まだ掃除終わってないんでしょ?手伝ってあげる!」


「いや、でも……」


 その時、リリアが玄関にやってきた。


「アル、誰ですか——」


 リリアとルーナの視線が交わった。


「……ルーナ姫」


 リリアの角が、一瞬ピクリと反応した。


「……リリアさん」


 空気が凍りついた。


「何の御用ですか?」


 リリアは笑顔を作ったが、目は全く笑っていない。


「掃除の手伝いに来たの。それと、アルと一緒に過ごしたくて」


 リリアの角が、赤黒く光り、ルーナ姫に詰め寄る。


「はあ?アルは今、掃除で忙しいんです。邪魔しないでください」


 いつものリリアからは想像ができないくらいには、語調が強い。


「邪魔?私は手伝いに来たのよ?」


「手伝いなら結構です。私とアルで十分ですから」


 2人きりの時間なのに……もごもごとリリアは呟く


「あら、2人きりで何をするつもりかしら?」


「べ、別に変なことじゃありません!」


 リリアの顔と角が真っ赤になる。


「ふーん……とりあえず、私も手伝うわ」


 ルーナはずかずかと屋敷に入ってきて、袖を捲り上げる。


「あ、ちょっと!」


 リリアが慌てて追いかける。


 俺は玄関で呆然としていた。


(これ、絶対面倒なことになるやつだ……)


「それで、リリアは2階を掃除して」


 ルーナが勝手に指示を出している。


「はあ?なんであなたが指示してるんですか?」


 リリアが反論する。


「だって、効率よくやらなきゃでしょ?私は1階をやるから」


「待ってください!私が1階をやります!」


 リリアがルーナ姫のいく先を阻む。


「なんで?」


「なんででもです!」


「あら、それを言うなら私だって——」


「2人とも落ち着け!」


 俺は2人の間に入った。これ止めないと掃除が進まない。


「喧嘩すんなって。じゃあ、3人で1階を掃除しよう」


「はい!」

「わかったわ」


 2人は同時に答えて、また睨み合った。


 こうして、3人での掃除が始まった。


「アル、この棚どこに置く?」


 ルーナが重そうな棚を持ち上げている。


「あ、そこは俺が——」


「アル!こっちの窓拭き手伝ってください!」


 リリアが俺の腕を引っ張る。

 いつものリリアとは大違いだ。


「ちょっと、私が先に呼んだのに!」


「私の方が先です!」


「いや、私よ!」


「私です!」


 俺は2人に引っ張られて、完全に板挟みだ。


「お、おい……痛い痛い……」


「あ」


「ご、ごめんなさい」


 2人は慌てて手を離した。


「とりあえず、窓拭きから始めよう。3人でやれば早いし」


「……はい」


「……わかったわ」


 2人は渋々従った。


 窓拭きをしながら、俺は2人を見ていた。


 リリアは几帳面に、隅々まで丁寧に拭いている。


 ルーナは……なんか、めっちゃ力入れて拭いてる。


「ルーナ、そんなに力入れたらガラス割れるぞ」


「え、あ、そうね……」


 ルーナは少し力を緩めた。


「ルーナ姫、掃除したことないんですか?」


 リリアが意地悪く尋ねる。


「……まあ、お城では使用人がやってくれるから」


 ルーナは少し恥ずかしそうだ。


「じゃあ、なんで手伝いに来たんですか?」


「それは……」


 ルーナはチラッと俺を見た。


「アルと一緒にいたいからよ」


「は!?」


 リリアの顔が真っ赤になった。


「な、何を言ってるんですか!」


「事実よ。私、アルのことが好きなのよ!」


「ちょ、ちょっと待って!」


 俺は慌てて割り込んだ。


「と、とりあえず、まず掃除終わらせよう!」


「……そうね」


「……はい」


 2人はまた掃除に戻ったが、なんか空気が重い。


(やばい、マジでやばい……)


 俺は冷や汗をかいた。童貞の俺には荷が重すぎる。


 確かにルーナは驚くほど美人だけど、あれだろ?好きって言ってもそういうんじゃなくて親愛とかそっち系だろ?でもなぁうーんとりあえず考えるのはよそう


 アルがうーん、うーんと考えているうちに1階の掃除が終わった。


「ふー、疲れた……」


 俺はソファに倒れ込んだ。


「お疲れ様です、アル」


 リリアが水を持ってきてくれた。


「ありがと」


「はい、アル。私も持ってきたわよ」


 ルーナも水を持ってきた。


「あ、ありがとう……」


 俺は両方受け取った。


 2人は俺の両隣に座る。


「……」


「……」


 また、微妙な空気が流れる。


「そ、そういえば」


 俺は話題を変えようとした。


「明日から何しようかな」


「明日?」


「ああ。せっかくこんな立派な屋敷もらったし、何かやりたいなって」


「例えば?」


 ルーナが興味深そうに聞く。


「うーん……BBQとか?」


「ビービーキュー?」


「バーベキューだよ。外で肉焼いて食べるやつ」


「あ、野外料理ですね!」


 リリアが目を輝かせた。ぴこぴこツノが動く

ツノって動くんだなぁと感心して見ていると


「楽しそう!やりましょう!」


「私も行く!」


 ルーナも乗り気で応えてきた。


「じゃあ、明日準備しようぜ」


「はい!」


「楽しみだわ!」


 2人は笑顔になり俺はホッと一息ついた。


 その夜、俺は自分の部屋で寝ていた。


 リリアは隣の部屋、ルーナは少し離れた客室だ。


「ふー、今日は疲れたな……」


 ベッドに横になって、目を閉じる。


 だが——。


 コンコン。


 ドアがノックされた。


「ん?誰だ?」


「アル……起きてますか?」


 リリアの声だ。小さく震えている。


「ああ、起きてるけど」


 ドアが開いて、リリアが入ってきた。


 パジャマ姿で。月明かりに照らされて、いつもより大人っぽく見える。


「ど、どうした?」


「あの……その……」


 リリアはモジモジしている。手を胸の前で組んで、ぎゅっと握りしめている。


 リリアが力を込めていた口を開いた。


「今日、ルーナ姫が色々言ってましたけど……」


「ああ……」


「アルは、ルーナ姫のこと……どう思ってるんですか?」


 心臓が破裂しそうなほどドキドキしている。


「どうって……」


 俺は考えた。


「いい子だとは思うけど……まだよくわからないな」


「そ、そうですか……」


 リリアの角が、ほんのり赤く光った。


「じゃあ……私のことは?」


 リリアの声は少しうわずっていた。


「え?」


「私のこと……どう思ってますか?」


 リリアの顔と角が真っ赤だ。全身が熱い。


「えーと……」


 俺は困った。


「大切な仲間だと思ってるよ」


「……仲間」


 角の光が、一気に消えた。


「そっか……仲間、ですか……」


「?どうした?」


「いえ、何でもありません……おやすみなさい」


 笑顔を作って、部屋を出た。


 リリアは落胆したのも束の間、目に炎を宿しすぐに顔を上げた。


(ルーナ姫には……負けない)


 角が、再び赤く光り始めた。決意の色だ。


「明日から、いいえこれからもっとアルとの距離を縮める。」


 リリアはそう呟き、自分の部屋に戻り、ベッドに座った。


 枕を抱きしめて、小さく呟く。


「アル……」


 誰も聞いていない夜に、切なくも力強い声が響いた。


 アルの部屋では——。


(なんか、変だったな……)


 俺は首を傾げながら、眠りについた。


 翌朝。


「おはよう、アル」


 ルーナが朝早くからやってきた。


「お、おはよう……」


「今日はBBQの準備でしょ?手伝うわよ」


「あ、ありがとう……」


「おはようございます、アル」


 リリアも起きてきた。


「おはよう」


「今日は何を買いに行きますか?」


「肉と野菜だな。あと、調理器具も」


「じゃあ、市場に行きましょう」


「私も一緒に行くわ」


 ルーナが割り込む。


「……どうぞ」


 リリアは冷たく答えた。


 また、2人の火花が散る。


(明日のBBQ、無事に終わるかな……)


 俺は不安を抱えながら、3人で市場へ向かった。


次回予告:「異世界でもBBQといったらこれでしょ」

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