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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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14/60

14杯目 王都への道

ダークエッジを出発してから、もう三日が経っていた。


「予定より遅れてるな」


マーカスが地図を見ながら呟く。


「まあ、色々あったからね」


俺は馬車の窓から外を眺めた。


---


一日目。


最初の街で、俺たちは盗賊団に襲われた。


「金を出せ!」


「やれやれ」


マーカスが剣を抜こうとした瞬間、俺は酒を一口飲んだ。


「うおおお!」


体が光り、盗賊たちに突進する。


「うわあああ!」


盗賊たちは一瞬で吹っ飛んだ。


「アルさん、強い!」


リリアが目を輝かせる。


「でも…」


次の瞬間、俺は地面に倒れ込んだ。


「寝るの早っ!」


マリアが呆れている。


結局、盗賊たちは逃げ去り、俺は30分後に目を覚ました。


「活躍したのか、してないのか…」


マーカスが苦笑いしていた。


---


二日目。


ある村で、巨大な魔物が暴れていた。


「助けてくれ!」


「任せて!」


俺は蒸留酒を飲み、魔物に立ち向かう。


「おらあああ!」


拳が魔物に直撃——したと思ったら、魔物は何ともなかった。


「硬っ!」


そして、俺は気絶した。


結局、マーカスとマリアが魔物を倒した。


「アル殿、今回は完全に足手まといでしたね」


「起きてから言ってくださいよ…」


俺が目覚めた時、マーカスがニヤニヤしていた。


---


三日目の昼。


「ちょっと汗流してくるわ」


川辺で一人、俺は服を脱いで水浴びを始めた。


「ふー、気持ちいい」


水は冷たくて心地よかった。


その時——


ザバァァァン!


突然、巨大な魚が川から飛び出してきた。


「うわぁぁぁ!?」


俺は驚いて腰を抜かした。というか、全裸のまま水の中で固まった。


デカい。いや、デカすぎる。体長は優に三メートルはある。


「やべえ、食われる!?」


巨大魚が口を大きく開けて近づいてくる。


咄嗟に、俺は腰につけていたカクテルの入った瓶を掴んだ。


「くそ、こうなったら——!」


ゴクゴクゴク。


一気に飲み干す。


すると——


「ギョギョギョ!」


「え…?今、何か聞こえた?」


「ギョギョギョ!ここはワシの縄張りじゃ!」


巨大魚の声が、はっきりと聞こえる。


「お、おお…?しゃべってる?いや、俺が理解できてる?」


「ワシの川で勝手に水浴びするとは何事じゃ!」


「いや、そのー、ごめん。悪気はなかったんだ」


全裸で魚と交渉する俺。シュールすぎる。


「ふむ…まあ、正直に謝るなら許してやろう」


「ありがとう、魚の旦那」


その時——


「アルさん!今、大きな音が——」


バサバサバサ!


リリアが茂みをかき分けて駆けつけてきた。


そして——


「きゃああああああ!?」


リリアの顔が真っ赤になった。


当然だ。俺は全裸だ。


「ちょ、ちょっと待って!これは!」


「すみません!見てません!何も見てません!」


リリアは両手で顔を覆いながらも、指の間から思わずチラチラと——


「ギョギョギョ。若い娘さんじゃのう」


巨大魚が笑っている。


「笑うな!」


「見てません見てません!」


リリアが真っ赤な顔のまま走って逃げていった。


俺と巨大魚は、しばらく顔を見合わせた。


「…なんか、すまん」


「ギョギョギョ。若いのう」


巨大魚はそう言うと、ゆっくりと川に戻っていった。


---


「アル殿、何があったんですか?」


馬車に戻ると、マーカスが尋ねてきた。


「いや、ちょっと川の主と話をね…」


「川の主?」


「そう。巨大な魚」


「魚と会話を…?」


「カクテル飲んだら、なぜか話せるようになった」


「…アル殿の能力は、本当に予測不可能ですね」


リリアは俺の顔を見ると、真っ赤になって視線をそらした。


「リリア、さっきはごめんな」


「い、いえ!私こそ!勝手に見てしまって!」


「見てないって言ってたじゃん」


「あ…」


リリアの顔がさらに赤くなった。


マリアがクスクスと笑っている。


「リリア、顔真っ赤よ?」


「マリア様!」


「ふふ、可愛いわね」


俺は頭を掻いた。


「まあ、魚とは仲良くなれたからいいや」


「そこですか!?」


リリアとマリアの声が重なった。


こうして、三日目も無事に(?)終わった。


---


そして、今。


俺たちは王都に近い森の中を進んでいた。


「もうすぐ王都ですね」


リリアが言った。


「ああ、あと半日もあれば着く」


マーカスが答える。


その時——


「すみません!ちょっと待ってください!」


若い男の声が聞こえた。


「止まれ」


マーカスが御者に指示を出す。


馬車が止まり、俺たちは外を見た。


一人の若い青年が、息を切らしながら走ってくる。


20代前半くらいだろうか。商人風の服装をしている。


「どうした?」


マーカスが警戒しながら尋ねる。


「あの、私は商人のスーと申します!」


青年——スーが深々と頭を下げた。


「商人?こんな森の中で何をしている?」


「実は…魔物に襲われてしまいまして…」


スーは困ったような表情を浮かべた。


「通行証も、お金も、全部奪われてしまったんです」


「それは気の毒だが、我々も急いでいる」


マーカスが冷たく言った。


「怪しい」


マリアも警戒している。


「でも…」


スーは懐から小さな瓶を取り出した。


「せめて、この酒だけは守り抜きました!絶対に飲もうと思っていた、幻の蒸留酒なんです」


その瞬間、俺の耳がピクリと動いた。


「幻の蒸留酒?」


「はい!北の国でしか作られていない、貴重な——」


「乗せてあげよう」


俺は即答した。


「アル殿!」


マーカスが驚く。


「だって、困ってるんでしょ?それに、その酒、ちょっと気になるし」


「結局そっちですか!」


リリアが呆れている。


「ありがとうございます!兄貴!」


スーが涙を流して喜んだ。


「兄貴?」


「恩人ですから!」


スーは馬車に乗り込んできた。


「それで、その酒なんだけど——」


「アル殿、今は我慢してください」


マーカスが俺を制した。


---


馬車の中で、スーは自分の話をした。


「実は、王都に重要な商談があって向かっていたんです」


「商談?」


「はい。でも、通行証がないと王都に入れなくて…」


スーは本当に困っている様子だった。


「なるほど」


俺は同情した。


「じゃあ、俺たちと一緒に入ればいい。マーカスは騎士団長だし、通してもらえるでしょ」


「本当ですか!?」


スーの顔が明るくなった。


「まあ、王都に着いたら別れることになるけどね」


「それで十分です!本当にありがとうございます!」


---


夕方、俺たちは王都の門に到着した。


巨大な城壁に囲まれた、立派な都市だ。


「すごい…」


リリアが感嘆の声を上げる。


「これが人族の王都か」


マリアも興味深そうに見ている。


「マーカス・オダ騎士団長!お帰りなさいませ!」


門番の兵士たちが敬礼する。


「ああ。それと、こちらの方々は魔王からの使者だ」


「は、はい!どうぞお通りください!」


兵士たちは緊張した面持ちで道を開けた。


「それでは、兄貴!本当にありがとうございました!」


スーが馬車から降りていく。


「おう、気をつけてな」


「必ず恩返しします!」


スーは手を振りながら、人混みの中に消えていった。


「さて…」


マーカスが空を見上げた。


「もう日が暮れかけている。今から城に行っても、謁見は明日になるだろう」


「じゃあ、今夜は宿に泊まるの?」


「そうだな。私は城に戻って、明日の準備をする。皆さんは宿でゆっくり休んでください」


「分かりました」


リリアが頷いた。


「あ、リリアと私は角を隠しておいた方がいいわね」


マリアが魔法で自分とリリアの角を透明にした。


「これで大丈夫です」


「念のためですね。騒ぎになると面倒ですから」


マーカスが宿屋を手配してくれた。


「それでは、明日の朝、迎えに来ます」


「了解。おやすみ」


---


宿に荷物を置いた後、俺は一人で外に出た。


「さて、いい飲み屋を探すか」


王都の夜は賑やかだ。


酒場、レストラン、商店…色々な店が軒を連ねている。


でも、よく見ると——


「すみません、何か恵んでいただけませんか…」


路地の隅に、ぼろぼろの服を着た老人が座っていた。


物乞いだ。


そして、少し先にも、子供を抱えた女性が同じように座り込んでいる。


「思ったより、国の情勢悪いのかな」


華やかな王都の裏側に、貧困が広がっているようだ。


魔王城とは違う、人族の抱える問題が見えた気がした。


「おっ、あそこ良さそう」


考え込んでいると、『赤い竜亭』という看板を掲げた酒場を見つけた。


扉を開けると、活気ある雰囲気が広がっていた。


「いらっしゃい!」


恰幅のいい店主が笑顔で迎えてくれる。


「一人か?カウンターでいいかい?」


「ああ、お願い」


俺はカウンター席に座った。


「何にする?」


「おすすめは?」


「今日は王都産のエールがいいよ」


「じゃあ、それで」


店主が注いでくれたエールは、フルーティーで飲みやすかった。


「うまい!」


「だろう?」


店主と楽しく会話しながら飲んでいると——


「ふざけないで!」


若い女性の声が響いた。


振り向くと、赤い髪にそばかすのある女の子が、中年の男と口論していた。


「王様の悪口を言うなんて、許せない!」


「悪口じゃねえよ、事実だろ!」


中年の男が酔っ払った様子で言い返す。


「あの姫なんて、顔だけじゃねえか!」


「それ以上言ったら、本気で怒るわよ!」


赤髪の女の子が睨みつける。強気な目だ。


「おいおい、喧嘩はやめてくれよ」


店主が困った顔で仲裁に入る。


「はぁ…」


俺は立ち上がった。


「ちょっと、お二人さん」


「あ?」


中年男が俺を見る。


「喧嘩するくらいなら、一緒に飲もうぜ」


「はぁ?お前誰だよ」


「ただの酒好き。ほら、こういう時は——」


俺は外を見た。


さっきの物乞いの老人が、店の外を通り過ぎていく。


「おじいさん!」


俺は店の外に飛び出した。


「え?」


老人が驚いて振り返る。


「一緒に飲まない?おごるからさ」


「え…でも、私なんかが…」


「いいからいいから。一人で飲むより楽しいでしょ」


俺は老人の手を引いて店に戻った。


「店主、席増やして!」


「おい、待て!俺はそんな——」


中年男が文句を言いかけたが、俺は構わず老人を座らせた。


「さあ、みんなで飲もう!」


「あの、私なんかが店の中に入っても…」


老人が恐縮している。


「大丈夫大丈夫。酒は誰と飲んでも美味いもんだ」


俺は老人にエールを注文した。


「お、おう…」


中年男が戸惑っている。


「ほら、あんたも座りなよ。さっきは姫のこと悪く言って悪かったって謝れば?」


「え…あ、ああ…」


中年男は気まずそうに頭を下げた。


「すまねえ…俺も酔ってて…」


「いいって。みんなで飲んだ方が楽しいし」


俺は笑った。


店主も苦笑いしながら、席を用意してくれる。


「おう、まあ賑やかなのは嫌いじゃないよ」


カウンターには、俺、老人、中年男、そして——


「……」


赤髪の女の子が、じっと俺を見ていた。


「あんたも一緒にどう?せっかくだし」


「別に…」


女の子はそっぽを向いた。


ツンとした態度だ。


「まあまあ、そう言わずに」


俺は女の子の隣に座った。


「何なのよ、あなた」


女の子が睨んでくる。


「アル。ただの旅人」


「旅人?」


「そ。で、あんたは?」


「……エマ」


赤髪の女の子——エマがぶっきらぼうに答えた。


「エマか。いい名前だね」


「別に…普通よ」


エマは顔をそらす。


でも、耳が少し赤くなっている。


(この人…さっき喧嘩してた男の人とも、物乞いのおじいさんとも、分け隔てなく接してる…)


エマは横目で俺を観察していた。


(変な人…でも…)


「姫様のこと、好きなの?」


俺が尋ねると、エマはピクリと反応した。


「……ええ、尊敬してる」


「へえ。どんな人なの?」


「美しくて、強くて、自信に満ち溢れた方よ」


エマは少し誇らしげに言った。


「姫様ご自身も、自分の美しさに絶対の自信を持ってらっしゃるの」


「自信家なんだ」


「そうよ!でも、それは本当に美しいからよ!」


エマは熱くなって続けた。


「顔だけじゃないわ!心も、行動も、全てが!」


「へえ…」


俺はエマをじっと見た。


「あんた、姫様と知り合いなの?」


「え?」


エマがピクリと反応した。


「だって、そこまで詳しく言えるってことは、実際に会ったことあるんじゃない?」


「そ、それは…」


エマは少し慌てた様子を見せた。


「城で働いてる人とか?」


「べ、別に!ただ噂で聞いただけよ!」


エマは顔を赤くして否定する。


「へえ、噂だけでそこまで熱く語れるんだ」


俺は疑わしげな目で見た。


「う…だって、姫様は有名だから…色々と…」


エマはしどろもどろになっている。


可愛いな、と思いつつ、俺は追及するのをやめた。


「まあ、いいけど」


俺はエールを飲んだ。


「それより、さっきはちょっと熱くなりすぎたんじゃない?」


「……そうかもしれないけど」


エマは少し落ち着いた。


「でも、誤解されてるのが許せないの」


「気持ちは分かるけど、いちいち怒ってたら疲れるぞ?」


「う…それは…」


エマは言葉に詰まった。


「まあ、姫様も、あんたみたいに自分のことを想ってくれる人がいて幸せだね」


「え…」


エマの顔がなぜか少し暗なったような気がしたが、気のせいだろう


俺は笑った。


その時、中年男と老人が楽しそうに話しているのが見えた。


「ほら、仲良くなってるじゃん」


「……そうね」


エマも少し笑顔になった。


「あなた…変わってるわね」


「よく言われる」


「でも…悪い人じゃなさそう」


エマはそう言って、少しだけ微笑んだ。


(面白い人…こんな人、初めて会ったかも)


エマ——いや、ルーナ姫の心に、小さな波紋が広がった。


でも、俺は気づかなかった。


このエマが、実は——


---


その頃、王都の城では。


「姫様、またお忍びですか?」


初老の執事——セバスチャンが困った顔をしている。


彼はルーナ姫が幼い頃から仕えている、最も信頼されている付き人だ。


「大丈夫よ。すぐ戻るから」


「しかし、姫様…万が一のことがあれば…」


「心配性ね、セバスチャン。もう何度も外出してるのに」


ルーナ姫は微笑んだ。


「それに、民の声を直接聞くのも大切でしょう?」


「それは…そうですが…」


セバスチャンは心配そうに眉をひそめた。


空になったベッドに、人形が置かれていた。


そして、城の外では——


「ふふ、楽しかった」


そばかすをつけた赤髪の少女——ルーナ姫が、夜空を見上げて微笑んでいた。


「あの人、私がかわいいって気づかなかったわね」


ルーナは鏡を取り出して、自分の顔を確認する。


そばかすを消すと、そこには息を呑むような美少女がいた。


艶やかな赤髪が月光に照らされて輝いている。


「まあ、そばかすがあっても私はかわいいけど」


自信たっぷりに微笑むルーナ。


「変わった人だったわ。面白い…」


ルーナは少し頬を染めた。


でもすぐに首を振る。


「べ、別に!ただ興味があっただけよ!」


誰もいないのに、ツンデレな反応をするルーナ。


「明日、城で会ったらどんな顔するかしら。楽しみね」


---


次回予告:「王城の調停者」


※毎日更新予定です。お楽しみに!

最後までお読みいただきありがとうございます!


読んでくださる皆様のアクセスが増えてきており、すごく励みになってます!


まだまだアルの酔いどれ旅は始まったばかりですが、お酒でも飲みながらゆっくり楽しんでいただけたらうれしいです。


感想やリアクションなどもお待ちしております!

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