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異世界転生酔いどれ世直し記〜酒飲みながら平和にしてやんよ編〜  作者: 晴天よよい


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12/61

12杯目 誤解と真実の狭間で

国境警備隊の駐屯地は、街の外れにあった。


石造りの頑丈な建物で、周りには高い柵が張り巡らされている。


「マーカス様!」


門番の兵士が敬礼した。


「隊長に取り次いでくれ」


「はっ!」


しばらくして、中から一人の男が現れた。30代半ばくらいの、厳つい顔をした人族だ。


「マーカス様、お久しぶりです」


「ダグラス隊長、久しぶりだな」


二人は握手を交わした。


「こちらの方々は?」


「魔王の娘、リリア・クマガワ殿とマリア・クマガワ殿。そして、魔王の客人であるアル殿だ」


「魔王の!?」


ダグラス隊長は驚いた表情を見せたが、すぐに礼儀正しく頭を下げた。


「ようこそいらっしゃいました」


「お邪魔します」


俺たちは駐屯地の中に案内された。


「実は、この街で起きている問題について話を聞きたい」


マーカスが単刀直入に切り出した。


「兵士たちが魔族に嫌がらせをしていると聞いたが」


ダグラスの表情が曇った。


「それは…申し訳ありません。私の監督不足です」


「理由を聞かせてくれ」


ダグラスは深いため息をついた。


「こちらへ」


---


隊長室に通された俺たちは、驚くべき話を聞かされた。


「一ヶ月前、我々の部隊は魔物に襲撃されました」


「魔物に?」


「はい。それも、見たこともない異形の魔物です」


ダグラスは机の上の報告書を開いた。


「体は巨大な獣のようで、しかし顔は…人族のような…」


俺たちは顔を見合わせた。魔族から聞いた話と同じだ。


「その魔物は、夜間警備中の兵士たちを襲いました。五人が重傷、二人が行方不明です」


「行方不明…」


「森の中で捜索しましたが、見つかったのは血痕だけでした」


ダグラスの声が震えた。


「兵士たちは恐怖しています。そして…」


「魔族がその魔物を操っていると思っている?」


マリアが尋ねた。


「その通りです」


ダグラスは頷いた。


「魔物が現れる前、何人かの兵士が魔族の怪しい動きを目撃したと報告しています」


「怪しい動き?」


「夜中に森の方へ向かう魔族の集団を見た、と」


「それは…」


リリアが言葉に詰まった。


「でも、ダグラス隊長」


俺は前に出た。


「魔族も同じ魔物に襲われてるんです。もう十人以上が犠牲になっている」


「何!?」


ダグラスは驚いた。


「本当ですか?」


「ああ。昨夜、魔族の人たちから直接聞いた」


「しかし…では、魔族は犯人ではない?」


「少なくとも、魔族全体が犯人ってことはない」


マーカスが言った。


「むしろ、人族も魔族も、同じ何者かに襲われている被害者だ」


ダグラスは混乱した表情を浮かべた。


「では…一体誰が?何のために?」


その時——


「隊長!大変です!」


一人の兵士が駆け込んできた。


「また魔物が!今度は街の方に!」


「何!?」


ダグラス隊長が立ち上がった。


「総員出動!街の住民を守れ!」


「俺たちも行く!」


俺も立ち上がった。


「危険です!」


「でも、放っておけない!」


---


街に戻ると、すでに大混乱だった。


悲鳴が響き、人々が逃げ惑っている。


そして、その中心に——


「あれが…!」


巨大な獣のような魔物がいた。体は狼に似ているが、その大きさは馬ほどもある。


そして、顔は——確かに人間のような輪郭をしていた。


「気持ち悪い…」


リリアが呟く。


魔物は無差別に人々を襲っていた。魔族も、人族の兵士も、関係なく。


「みんな!避難誘導を!」


ダグラス隊長が指示を出す。


兵士たちが住民を安全な場所へ誘導し始めた。


「マリア姉さま!」


「分かってる!」


マリアが魔法を放った。炎の槍が魔物に突き刺さる。


「ギャアアアア!」


魔物が咆哮を上げた。


「効いてる!」


しかし、魔物はすぐに立ち上がった。


「再生してる!?」


「くっ…厄介ね」


マーカスが巨剣を構えた。


「私も加勢する!」


「待って!」


俺は酒瓶を取り出した。


「アル殿、今ですか!?」


「これしか方法がない!」


俺は蒸留酒を一気に飲み干した。


「うおおおお!」


体が光り始める。筋力強化だ。


「行くぞ!」


俺は魔物に向かって走り出した。


「アルさん!」


リリアの叫びが聞こえたが、構わず突進する。


「おらあああ!」


拳を魔物の顔面に叩き込んだ。


ガキン!


信じられないくらい硬い。


「痛てて!何だこれ!」


魔物が反撃してきた。爪が俺の肩をかすめる。


「くそ!」


後ろに跳んで距離を取る。


「アル!無茶するな!」


マーカスが横から斬りかかった。しかし、魔物は素早く回避する。


「速い!」


「みんな、協力して!」


リリアが叫んだ。


「私が拘束します!姉様とマーカス様は攻撃を!」


「分かった!」


リリアが魔法陣を展開する。光の鎖が魔物を縛り上げた。


「今よ!」


マリアとマーカスが同時に攻撃を仕掛ける。


炎と剣が魔物を襲った。


「ギャアアアアア!」


魔物が苦しそうに暴れる。


その時、俺は気づいた。


魔物の体の一部——首の後ろに、何か紋章のようなものが刻まれている。


「あれは…」


俺は目を凝らした。


魔法陣?いや、違う。あれは——


「烙印!?」


その瞬間、魔物が光の鎖を引きちぎった。


「きゃあ!」


リリアが倒れる。


「リリア!」


マリアが妹を庇う。


魔物が再び襲いかかろうとした時——


「させるか!」


俺は再び蒸留酒を飲んだ。


「まだ行けるはず!」


体がさらに激しく光る。


「うおおおおお!」


今度は魔物の首の後ろを狙った。


烙印に拳を叩き込む!


「破ぁ!」


ガシャン!


烙印が砕け散った。


その瞬間——


魔物の動きが止まった。


そして、ゆっくりと崩れ落ちる。


「やった…のか?」


俺はその場に膝をついた。


「アル!」


リリアとマリアが駆け寄ってくる。


「大丈夫?」


「ああ…ちょっと疲れただけ」


マーカスが魔物の死骸を調べていた。


「これは…」


「どうした?」


「この魔物、元は普通のダークウルフのようです。しかし…」


マーカスは魔物の体を指差した。


「体の一部に、人間の皮膚が移植されている」


「え!?」


「まさか…合成獣?」


マリアが青ざめた。


「しかも、烙印で制御されていた…」


俺は立ち上がった。


「これ、誰かが故意に作ったってことか?」


「恐らく」


ダグラス隊長が近づいてきた。


「つまり、魔族でも人族でもない、第三者の仕業ということですか?」


「そうとしか考えられない」


マーカスは厳しい表情だった。


「これは…単なる魔物の襲撃ではない。誰かが意図的に、人族と魔族の対立を煽っている」


その言葉に、俺は過激派のことを思い出した。


「まさか…あいつらか?」


「過激派?」


「魔王城で保守派が解散した時、逃げ出した連中がいたんだ」


俺はマーカスに説明した。


「そいつらが、こんな魔物を作って…」


「人族と魔族を対立させようとしている、と」


マリアが続けた。


「そうすれば、種族和平は崩壊する」


「なんて卑劣な…」


ダグラス隊長が拳を握りしめた。


「我々は完全に踊らされていたのか」


「今は犯人を責めるより、協力しましょう」


リリアが言った。


「人族も魔族も、この脅威に一緒に立ち向かうべきです」


「リリア様の仰る通りです」


ダグラスは深々と頭を下げた。


「申し訳ありませんでした。我々は魔族を疑い、不当な扱いをしてしまった」


「隊長…」


兵士たちも頭を下げた。


その時、街の魔族たちが集まってきた。


「あの…ありがとうございました」


さっきの少女が、人形を抱きしめながら言った。


「人族の兵士さんたちも、一緒に戦ってくれたんですね」


「ああ」


ダグラスは少女に膝をついた。


「すまなかった。君たちを疑って、酷いことをしてしまった」


「いいんです」


少女は微笑んだ。


「これからは、仲良くしてくれる?」


「もちろんだ」


ダグラスは少女の頭を優しく撫でた。


その光景を見て、俺は少し安心した。


人族と魔族が、ようやく歩み寄り始めた。


---


その夜、駐屯地で作戦会議が開かれた。


「問題は、過激派がどこに潜んでいるかです」


マーカスが地図を広げた。


「合成獣を作るには、それなりの設備が必要だ。この辺りで怪しい場所は…」


「廃坑があります」


一人の兵士が言った。


「街から北に三キロほどの場所に、昔使われていた鉱山の廃坑が」


「そこか…」


「明日、偵察に行きましょう」


俺が提案した。


「でも、危険です」


「それでも行く。このままじゃ、また誰かが犠牲になる」


俺は決意を固めた。


「俺も行きます」


ダグラス隊長が言った。


「これは我々の責任でもあります」


「私も同行します」


マーカスも頷いた。


「では、明日の朝出発しましょう」


リリアが言った。


「私と姉様も行きます」


「いや、リリアは危険だ」


「でも!」


「リリア」


マリアが妹の肩に手を置いた。


「ここは私に任せて。あなたは街の人たちを守る役目がある」


「姉様…」


「大丈夫。必ず戻ってくるから」


リリアは不安そうだったが、頷いた。


「分かりました。でも、絶対に無事で戻ってきてください」


「約束する」


俺はリリアに微笑んだ。


---


その夜、俺は一人で外に出た。


星空を見上げながら、色々なことを考えていた。


この世界に来て、もう数週間。


最初は戸惑いばかりだったが、今は…


「アル」


マリアが近づいてきた。


「眠れないの?」


「ああ、ちょっと考え事を」


マリアは俺の隣に立った。


「明日のこと?」


「それもあるけど…色々とね」


「あなたは本当に不思議な人ね」


マリアが微笑んだ。


「人族なのに、魔族のために戦ってくれる」


「別に、種族とか関係ないよ」


俺は答えた。


「困ってる人がいたら助ける。ただそれだけ」


「それだけ、か」


マリアは空を見上げた。


「私も昔はそう思ってたのかもしれない」


「今もそう思ってるでしょ?」


「ええ」


マリアは頷いた。


「あなたのおかげでね」


二人でしばらく黙って星を眺めていた。


「アル」


「ん?」


「ありがとう」


「何が?」


「私を変えてくれて。リリアを笑顔にしてくれて」


マリアの声が優しかった。


「私、あなたに出会えて本当に良かった」


「俺もだよ」


俺も微笑んだ。


「この世界に来て、みんなに出会えて良かった」


「明日は…危険かもしれない」


「大丈夫。なんとかなるさ」


「その根拠のない自信、嫌いじゃないわ」


マリアは笑った。


「じゃあ、そろそろ休みましょう。明日に備えて」


「ああ」


二人は宿舎に戻った。


明日はいよいよ、過激派のアジトへの突入だ。

最後までお読みいただきありがとうございました!




★~★★★★★の段階で評価していただけると、今後の創作活動により磨きがかかります!




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