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ヴァイス城下町

 バトスさん達が魔大陸に来てから、二週間くらいたった。

 バトスさん達はメキメキ強くなっていき、今じゃ、フォズやリュウトなら一撃で倒せるほどに成長した。僕達も負けずに強くなったつもりだ。

 グレンさんからは「みつきはもう少し自分に自信を持て」と言われている。


「みつきさん。そろそろヴァイス城に向かった方が、いいんじゃないですか?」

 確かに、ちょっと忘れていたが、僕達はアロン王国の王様から、アリ姉に書簡を渡してくれと頼まれていたんだった。


 今日の特訓が終わった後、グレンさんにそろそろ出発することを伝えた。

「前にも言ったが、みつきは自分に自信を持て。よいやみは、無鉄砲に突っ込む癖を直せ。そうすれば、時の番人にも引けを取らない筈だ。がんばれよ」

 僕とよいやみは、森へと帰っていくグレンさんに頭を下げた。


「さて、ヴァイス城に行くには、どれくらいの日数がかかりますか?」

「歩いても半日くらいだよ。そんなに遠くないし。ここから見えているし」

 僕といつきさんが日程で話し合っていると、クレイザーが訪ねてきた。

「みつきちゃん達は明日出発するのかい?出発前に、挨拶をしておこうと思ってね」

 クレイザーも強くなった。リュウトのやつに馬鹿にされていたころのアホナあいつはもういない。少し寂しいものだ。

「みつきちゃん、何か失礼なこと考えていないかい?」

 おっと、感まで良くなってからに。

「クレイザーさん達は、まだ特訓を続ける予定ですか?」

「いや、今日にもアロン王国に発とうと思っているよ。いつまでも、魔大陸の人に頼るわけにもいかないからね」

 うわぁ、クレイザーが勇者らしいことを言っている。

「あ、そうだ。バトスさん達も帰る前に挨拶したいから、広場に来てくれって言ってたよ」

「分かった。すぐ行くよ」

 僕達は、クレイザーに連れられて、村の広場へ向かった。


 バトスさんは、村の奥様方に囲まれている。

 バトスさんはモテるのだ。いい感じのおじ様なのでアロン王国にもファンが多いと聞いた。それを聞いて、クレイザーがギリギリ言っていたのは面白かった。ちなみによしおさんには奥さんがいるらしい。

 ルルさんも、バトスさんのファンらしく、正妻の座を狙っているらしい。

 今は、奥様方に囲まれているバトスさんを恨めしそうに見ている。


 バトスさんのランクはヒヒイロカネになったいた。

 いつきさんが女神様に聞いた所、ヒヒイロカネになるのは強さじゃなくて、この世界における、重要度が関係していると言っていた。

 僕やじじいがヒヒイロカネなのは、どうかと思うけど。

 ランクと言えば、よいやみといつきさんもヒヒイロカネになっていた。よしおとルルさんとクレイザーはオリハルコンに昇格していた。

 バトスさんがじいちゃんにお礼を言っている。

「いやいや、お前さんが強くなったのは、お前さんの努力でじゃ。たった二週間で強くなるという事は、もともとの地盤ができていたという事じゃ。お前さんが、英雄として頑張ってきたのが身になったのじゃよ」

 じいちゃんが良いことを言っている。なんか違和感が。

「また、強くなりたくなったら来るといい」

「はい」

 お別れを済まし、ルルさんが新しく覚えた転移魔法で、バトスさん達はアロン王国に帰っていった。

 ルルさんが必要もないのにバトスさんに抱き着いて、奥様方に勝ち誇った顔をしていたのが印象的だった。


「じいちゃん、寂しくなるね」

「そうじゃのぉ」

「いや、明日からは俺の相手をしてもらうので、寂しくなんかないぞ!!」

 じいちゃんの後ろにグレンさんが立っていた。

「お前はいらんわい」

 じいちゃんは相変わらずグレンさんが苦手のようだ。


 家に戻ってきた僕達は、明日の準備をするために居間に集まった。

 母ちゃんは、何日か前にヴァイス城の城下町に仕事のために戻っている。


 次の日に、僕達は歩いてヴァイス城に向かうことにした。馬車なんてものは、僕の村にはない。


 道中、たいした魔物が襲ってくるわけでもなく、順調にヴァイス城の城下町にたどり着いた。


「お!みつき様じゃないかい!?アリス様に用事かい?しかし、久ぶりだなぁ」

 門番をしている巨人族のおっちゃんに声をかけられた。勇者になる前は、よくヴァイス城に遊びに来ていたので、おっちゃんとも親しいのだ。

 僕達はおっちゃんと軽く話をして、門をくぐった。


「奇麗な街ですね!!」

 いつきさんのテンションが高い。

「こんなに近いのなら、もっと早くに来れば良かったですね」

 僕達が街の入り口付近で騒いでいると、前方からエリザが歩いてきた。

「入り口付近に見たことある顔がいるなと思ったら、やっぱりみつきか。このままアリス様のところに行くの?」

「んー。今日はもうお昼を過ぎているし、今日は宿をとってゆっくりするつもりだよ」

「じゃあ、あたしがおいしい店を紹介してあげるよ」

「奢ってはくれないんだね」

「よいやみちゃんがいるからねぇ」

 よいやみが目を逸らす。

 そうか、エリザは家でのよいやみの食う量を見ていたのか。


 僕達は、エリザの案内で、街中をいろいろ見て回った。

「おい!!!」

 急に声をかけられた。誰?

 振り返って見てみると、そこには大きな角の生えた魔族の青年が立っていた。

 僕をすごく睨んでいるが、勇者を嫌っているのだろうか?

「エリザさん!!こいつは凶暴なメスです離れてください!!危険です!!」

 凶暴なメスと言われた。こいつ、ムカつく上に失礼だな。

「彼女は、あたしの幼馴染なんですけど?」

 エリザは、魔族の青年に僕の事を説明しているが、こいつどこかで見たことあるんだけど。

 どこだったかな?

 よいやみに確認を取ってみたが、知らないという事なので勇者になる前に見たことあるんだろ……

「あ!!!!お前!!村を襲ってきたバカ魔族!!」

 思い出した!!勇者になる前に、僕の村を襲ってきたやつだ。僕がボコボコにしたんだ。

「なに?あの時の続きでもするの?」

 僕は軽く殴るそぶりをした。

「ま、待て!!俺は村を襲ってなんかいないぞ!!エリザさんに会いに行ったのを、お前に邪魔されたんだ!!あの時は問答無用に襲ってきやがって!!」

「あれ?」

 そうだったっけ?確か…思い出せないし、どうでもいいや。

「みつき、勇者になる前からどこか抜けてたんすね」

 よいやみが失礼なことを言ってくる。誰が抜けているだ。なんで、エリザも頷いているかな?


 魔族の名前はジャン。魔王軍の下っ端だそうだ。

 エリザのファンらしく、エリザは魔王軍のアイドルらしい。

 エリザも自分の事なのに驚いていた。

「ジャン君、みつきはつきのさんの娘だよ?下手な口きいたら、特別にしごかれるよ?」

「え!?つきの将軍の娘さん!!?」

 つきの将軍?何言ってるの?母ちゃんはお総菜屋さんで働いてるんじゃないの?

 僕が驚いていると、エリザがしまったという顔をしたので詳しく聞いてみた。


 どうやら、母ちゃんはヴァイス軍の幹部でハインさんと並ぶ実力者として働いているそうだ。僕に心配をかけたくないと、お総菜屋さんで働いていることにしているらしい。

「やっぱり、みつきの一家はおかしいっす」

 よいやみがボソッと言ったが、流石の僕でも否定はできなくなってきた。


 僕はジャンを騙すように食事をおごらせた(ジャン本人はエリザと食事ができることに喜んでいたが、よいやみによって絶望の淵に落とされていたが)後、真っ白になったジャンを置いて店を出ると、一台の馬車が止まっていた。


「みつき様、お迎えに上がりました。町一番の宿にご案内します」

 なんで?エリザの方を見ると「あたしも知らない」と手を振られた。

 馬車の御者さんに聞くと、アリ姉が用意してくれたようだ。エリザも一緒にという事で、エリザも町一番の宿に泊まれることに喜んでいた。


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