聖剣アルテミス
ギルマスの部屋に通された僕達は、リリアンさんに言われて、ソファーに座って待っていた。
この部屋で待つこと数十分、ギルマスのオルテガさんが、部屋に入ってきた。
「すまんすまん、待たせたな」
そう言って、僕達の対面に座り、すっかり冷めた自分のお茶を飲み干した。
「まずは、バトス達を無事に救出してくれて、ありがとうな」
「報酬さえ貰えれば、それがお仕事ですから」
いつきさんが、ニッコリ微笑んだ。
その微笑みが、何より怖いことを僕達は当然だが、ギルド側も判っている。
「報酬は提示金額よりも、三割増しで払わせてもらう。それでだ、お前達が探索した、あの遺跡で何があった?何故、遺跡が無くなった?」
王都から、そんなに離れてない遺跡が、跡形もなく無くなったんだから、そりゃ気になるのね。
「よいやみさん。うちの店の第二倉庫にフォズを、す巻きにして放置してあるので、持ってきて貰えませんか?」
「あー、あそこの呪われたものばかり置いてある倉庫に置いといたんすか。通りで見当たらないと思ったっす」
「騒ぐ位なら、少し位どつきまわしても構いませんから。あ、リリアンさんも付いて行ってくれますか?持ってくるものがアレな物なので」
「了解っす」
「わかったわ」
二人はフォズを取りに行くために、部屋を出ていった。
「ところで、フォズと言うのは?」
「あの遺跡の持ち主といったところでしょうか?」
いつきさんがそう言うと、オルテガさんは複雑そうな顔をして「まさかな」と呟いた。
「遺跡で何があった?」
遺跡か・・・・・・結論から言えばアレは遺跡じゃないからなぁ。
「信じがたい話ですが、あの遺跡は、フォズが作り出した、もしくは何処かから転送されてきた建物です」
「なに?」
「私達も信じられませんでしたが、遺跡内の魔物は全て人造の魔物で、戦利品すら無し、我々としても大変頭にきてましてね、その辺はバトスさん達に聞いてもらえれば、信用してもらえると思います」
確かに、僕達のような小娘共が言うよりは、長年の英雄の方が信用性はあるだろう。
「いや、お前達のことは、バトスからも聞いているよ。その強さもな」
バトスさん、何を言ったんだろう?僕達が、あの人達の前でやったこととは、ヘルハウンドを倒しただけだよ?
その程度のことなら、簡単だろうに。
「まぁ、それはいい。それよりもだ、遺跡消失なんて、一体何があった?」
いつきさんが、僕の方をチラリと見たので、僕は頷いた。
どうせ、言って信用するわけないのは判ってるからね。
「今から言うことは全て真実です。何を話しても、信じることが出来ますか?」
いつきさんは、真面目な顔をして、オルテガさんをじっと見る。
ゆーちゃんは、よいやみがいなくなったスペースを利用して、眠っている。かわいいなぁ。
「内容にもよるが、ある程度のことは信じられるさ。みつきは女神が選んだ勇者で、お前は聖女だろ?」
いつきさんは、ため息を吐いて、ギルマスと僕を見た。
「フォズが、聖剣を召喚具にして、ゴーレムとして、勇者アインを蘇らせました」
それを聞いた瞬間、オルテガさんが、ソファーから立ち上がった。
「まさか、あの真実を・・・・・・人間に恨みを持って復活したのか!?」
あれ?いつきさんが、知らなかったことを考えると、教会も知らなかったことになる・・・・・・のかな?
「あのババア共、私には教えなかったみたいですね」
目を細めて、低い声で笑っているいつきさんは、本当に怖い。
「まぁ、今はいいでしょう。アインさんは、恨みなど持ってはいませんでしたよ。魔王シルビアとただ静に、眠りたいと言ってただけですね」
「そうか、あれはこの国が生まれる前の事とはいえ、歴史の捏造には陛下も相当頭にきていて、真実を語ることを提案したんだが、教会が認めなくてな」
「本当の事を書いた、文献があったんですか?」
「あぁ、城にも教会にもな」
「あのババア・・・・・・」
「そういえば、聖剣はどうした?」
いつきさんが僕を見たので、僕は腰の剣を抜いて、テーブルの上に置いた。
「これです。アインから託されました」
「!!聖剣アルテミス・・・・・・」
あるてみす?アインは聖剣としか言わなかったのに。
「何処かの世界の、月の女神の名前らしいぞ。女神に選ばれた者が持つと、本来の力を引き出せるというが、まさか!!」
「そのまさかです。みつきさんが、遺跡を斬ったら、遺跡が斬れて、そこから崩壊しました」
「そ、そうか・・・・・・」
信じてないんだろうなぁ。そりゃ、僕でも、結果を見なきゃ出来るわけないと言ってるよなー。
と、その時、よいやみがフォズを引きずって、帰ってきた。
「いつきー、コイツ呪われてたっすよ?」
フォズはカタカタ震えていた。
「大丈夫ですよー。今後はもっと震えることになるんですから」
リリアンさんも、青い顔をして帰ってきた。
「いつきちゃん、あの倉庫にあるアイテムは早く処分したほうがいいんじゃないの?」
「嫌です。お金にしなきゃ、勿体無いじゃないですか」
リリアンさんが、あれだけ怯えているって、何を見たんだろう。
よいやみに聞いてみたら「見たら、大体後悔するっすよ?あしは後悔してるっす」と言っていた。
「フォズ、久しぶりだな」
オルテガさんは、フォズと知り合いなのかな?
「コイツは、ティタンが王の時からいた、ティタンの腰巾着の一匹だ。リリアン、陛下に緊急連絡をして、コイツを連行してくれるように要請してくれ!」
「判りました」
リリアンさんは、青い顔でふらふらと部屋を出ていった。
「コイツの身柄が渡されるまで、ゆっくりしていてくれ」
「お腹減ったっす」
「出前を頼もう。俺の奢りだ。好きなだけ頼んでくれ!!」
「やったっす!!!」
オルテガさんは、僕達が女の子だからとあんしんしているのだろう。
よいやみの食べる量を甘く見たことを同情するよ。
数時間後、オルテガさんが青い顔で「嫁さんに殺される」と呟きながら支払いをしていたのは言うまでもない。
次の話が書き上がり次第、投稿します。




