勇者と勇者
アインと名乗った勇者は、フォズを投げ捨てた。
「ぐはぁ!!き、貴様!!生み出してやったにも関わらずわた、ぐびゃ!」
アインは冷めた目で、フォズを見下し、起き上がろうとしているフォズの頭を無言で蹴った。
「や、やめろ!!私は親だ!!」
「てめぇみたいな、親を持った覚えはないね」
アインは、聖剣を振り上げると躊躇なくフォズに振り下ろした。
「ぎゃあ!!」
フォズは動かなくなった。
動かなくなったフォズの頭を踏みつけ「これで、ゆっくり話すことができそうだ」とこちらには、優しい目をして軽く笑った。
「コイツの話だと、俺は造られたようだな。成る程ね」
この人、こんな状況なのにやけに冷静だな。
「俺の体は土と石か、ゴーレムってやつだな。全く、余計なことをしてくれたもんだな」
そう言って、フォズの体に聖剣を突き刺していた。
そろそろ、生き返る頃だろうか。
「人がシルビアと静に眠っていたというのに」
シルビア?恋人だろうか?
いつきさんが「シルビア、シルビア」とブツブツ言いながら、何かを思い出そうとしていた。
「あ!シルビア・・・・・・五百年程前の魔王の名前ですか?」
「ん?あぁ、俺達が一緒に死んでから五百年も立ったのか」
一緒に死んだ?相討ちだったのかな?でもそれなら、静かになんて・・・・・・
「確か、言い伝えでは相討ったと伝わっていますが」
「まぁ、人間は都合のいいように伝えるわな」
都合のいい?
と、いうことは、実際は違うということ?
「お前らは、勇者と魔王はどういう関係だと思う?」
よいやみは、僕の方を見て。
「今は姉妹関係っすけど、本来は憎み合う関係っすかね?」
その言葉を聞いて、アインが驚いた顔で僕を見ていた。
「姉妹?お前、魔族なのに勇者なのか?」
「違うよ。僕は人間だけど、アリ姉、いや魔王アリスには妹みたいに可愛がってもらっていて、僕も姉のように慕っているし、それでだよ」
僕がそう言うと、アインは笑いだした。
「ははは!!そりゃいいな!!」
なんで、笑うのかな?
「き、貴様!!勇者だったのか!!」
アインの足下でフォズが叫んだ。
コイツを忘れていたよ。
「うるせぇ!!」
そう言って、フォズの頭を更に踏みつける。
「お前にゃ、俺達の眠りを妨げた大罪がある。楽に死ねると思うなよ?」
「待ってください。それに死なれると困ります。今の敵の情報を、吐いてもらわなければ、いけませんし」
「どういうことだ?」
いつきさんは、今の王国の考え方とアリ姉の考え方、元人間の自称魔王の事を説明した。
「今の時代にも、魔王はいて、勇者の嬢ちゃんと姉妹みたいな関係で、人間が魔王を名乗っているか。ワケがわからねぇな!」
そう言って、アインは笑っていた。
フォズは、神聖魔法による束縛魔法で、動けなくなっている。
「しかし、俺の時とはえらく違うな。俺の場合は、ちっこい時から、魔王は悪で勇者は善だと教わっていたぜ」
アインの話では、勇者に選ばれて魔王を殺すために、地獄のような訓練をさせられて、魔王を殺すための道具に成長させられて、魔王を殺すために魔王城に飛ばされたと、そこで魔王シルビアに出会い、惹かれ合い逃げたそうだ。
魔族側は、二人を逃がそうとしたそうだが、人間側に追い詰められ、逃げ切れないと思った二人は、死を選んだそうだ。
酷い話だ。
自分達が追い詰めといて、民衆には相討ちを捏造するなんて、人間を憎んでいてもおかしくない。
「ならば私達と人間に復讐しようではないか!!」
「嫌だね。てめぇに利用されるのが気に入らねぇ。この聖剣は本物だ。俺達の墓標を漁ったんだろ?」
「ち、違う!!それはティタン様から授かった剣だ!!」
要するに、ティタンが墓荒らしをしたんじゃないか。
「まぁ、いいさ。別に誰が持ってようが、俺には関係ないね。ただし、俺がいる間は、俺の愛剣だ。下らん魔物風情に使わせるかよ」
アインに、これからどうするのかと聞くと、フォズが笑いながら言った。
「そいつにこれからなどないわ!!私が調整しない限り、そいつは一日で崩れ去る運命だ!!」
コイツ最低だ。
「ひーる」
フォズの体が怪しく光る。
ゆーちゃんは、小さい針を取り出した。
そして、フォズをプスプス刺し出した
「ぎゃああああああああ!!!痛い!痛い!うぎゃああああああ!!」
ゆーちゃん?
まさか《ひーる》で何が起こるか理解して使った?まさかと思って聞いてみると。
「ちがう。つかったあとはこうかがわかる」
そう言って、フォズを針で刺して遊んでいる。
いつきさんの推測では、魔眼で効果を見てるかもしれないということらしい。
僕は特別な目は持っていないので、この辺は判らない。
「そうか・・・・・・一日か」
アインは遠い目をしながら、そう呟いた。
そして、力強い目で僕を見た。
「勇者の嬢ちゃん。俺と一騎討ちしてくれ。今の勇者の力を知りたい」
「え!?なんで!?」
「頼むわ。勇者としての最後の仕事してぇんだよ」
そう言って、ゆっくりと聖剣を構えた。
それに答えるように、僕も剣を抜いた。




