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ジルキン編13 フランツ=ジルキン

 魔獣の群れか。

 キラーハウンドにオーク、それにオーガ。このくらいならば、ゴールドランクの冒険者が50人もいれば倒しきれるはずだといつきさんは言っていた。ただし、この騎士たちにゴールドランク程の実力があれば、の話だけどとも言っていた。

 キラーハウンドはもうすぐ騎士とぶつかる。

 だけど騎士たちは、談笑しながら歩いている。本当にここに戦いに来たんだろうか?

 僕は小石を拾って、キラーハウンドが来る方向へ投げた。


「な、なんだ!!今の音は!?全員戦闘に備えろ!!」

 え?今まで戦闘に備えてなかったの?

 キラーハウンドが一匹、茂みから飛び出してきた。

「キラーハウンドだ!!4人で戦え!!決して一人で戦うな!!強敵だ!!」

 え?今なんて?強敵と聞こえたけど?

「う、うわぁ!!」

「くそ!!負傷したものを後ろに下げろ!!」

 僕は目の前の光景に目を疑った。これが騎士?このキラーハウンドは、たまたま先行して来ていただけの一匹だよ?後からそれの何十倍の数が来るよ?

 茂みから数匹のキラーハウンドが飛び出す。

「「「う、うあわぁあああああ!!!!」」」


 騎士は僕の目の前で、パニックを起こしている。

 僕達の力を借りないと言っていた騎士の人が「戦え!!」と叫んでいる。負傷者とそういう問題じゃない。これは戦いですらない。ただの蹂躙だ。

 僕は、この光景を見ていられなかった。


「邪魔っすよ」

 あ!!よいやみが騎士の人の前に出ちゃった。

「よいやみ!!」

「あーみつき。こいつら弱すぎてもう見てられんっす。お前ら邪魔なんで帰ってくれんすか?」

 騎士の人は茫然と僕達を見ている。僕達は喋りながらもキラーハウンドを倒している。

 グレンさんが言っていた事がよく理解できるよ。一撃必殺。魔物相手なら当たり前のことだ。

「お、お前ら。私達を助けに?」

「はぁ?そんなわけないっすよ。あんた、あれだけ大口を叩いたじゃないっすか!!冒険者が腐っていたのも貴族が腐っていたのも知っていたあんたが、一番慎重にならないといけなかったっす。だけどあんたは頭に血を上らせて情けないっす。さっさと尻尾を巻いて逃げるっす!!」

 よいやみ、かなりキツイ言い方だな。何か思う事でもあったんだろうか?

「早く帰れっす!!お前らの仕事は魔物退治じゃないっすよね!?女王陛下を守る事じゃないんすか!?今、あんたらは何をしているんすか!?今、女王王陛下に何かがあったとしたら、こんなところにいるあんたらは盾になれるんすか?女王陛下は貴族を敵に回しているんすよ?」

 いつきさんが大規模転移魔法を展開していた。

「反省会と自分の役割は、ジルキン城に帰ってから勝手に考えてください」

 騎士の人達は強制転移魔法に消えていった。

「さて、みつき。さっさとやるっすよ!!」

「うん!」


≪騎士視点≫

 私達は城の広間に帰ってきていた。あの茶髪の女が転移魔法を?しかも私達限定でだと?

「た、隊長…」

「怪我をしている者の手当てを「ようやく帰ってきたねぇ…役立たず共」」

 この声は……フランツ殿下。

「お前らは一体何をやってるんだい?誰が魔獣の討伐など行けと言った?お前らの仕事は何だ?」

「そ、それは……」

 よいやみ姫と同じことを…

「母さんが今、どういう状況か分かっていなかったのかい?分かっていなかったというのなら、この国を去るんだね。自分の誇りとやらで、任務を放棄するアホはいらないんだ」

「うっ…」

 この方は優しい顔をしているが間違いなくフィリップ様よりも王の素質がある。いや、この方じゃないとこの国は本当に終わってしまう。

「分かったのならさっさと母さんの護衛に戻るんだね。それと怪我をしていない数人、私と一緒に来い。貴族共を一網打尽にする」

「し、しかし!!」

「黙れ。役に立たん貴族などいらん。わた…いやオレの部下を静粛した貴族の代わりに就かせる」

 フランツ殿下の後ろにいるのは……獣人か!?なぜ!?

「お前等には理解が出来ないだろうな。兄貴が獣人を奴隷にしていたのは知っているな。それをオレが買い取っていただけだ。わかったらさっさと母さんの所に行くんだな」

「ふ、フランツ殿下はどうするんですか?」

「あ?下らんことを気にする前にさっさと自分の任務に戻れ!!」

「は、はい!!!」

 私は、女王陛下を護衛する為に謁見の間に戻った。


≪フランツ視点≫


「ビセンテ、アロン王国の国王に通信をしたい。連絡用の魔宝玉を盗って来れるか?」

「盗ってこなくても、安く買えましたよ。アロン王国は凄いですわ。獣人が街を歩いていても何も言われませんし、物も普通に買える。良い国ですよ」

「馬鹿やろう。オレ達の国も近いうちにそうするんだよ。そのためにアロン王国の国王と連絡したいんだ」

「分かりました」


「誰だ?」

「アロン王国国王のレオン陛下か?」

「口悪い奴だな。俺に直接言いたいことがあるから、直接連絡してきたんだろ?何人かの獣人が俺の部屋に入ってきやがった。お前、今ここにリリアンがいたら殺していたぞ?」

「おいおい。亜人に対して慈悲があるんじゃないのかよ」

「お前が送ってきた獣人が女じゃなかったら、そこまで言わねぇんだよ。浮気を疑われたらどうするんだよ。それに殺すのは獣人じゃなくて、お前だよ。フランツ」

「な!?気付いていたのか!!」

「当たり前だろう。お前みたいな悪どい声を忘れるかよ。久しぶりだな」

 こいつ。たった数回会っただけでも覚えてやがんのかよ。

「あ、あぁ。久しぶりだなレオン。まぁ、オレが分かるんなら話が早い。母さんがお前に頼んだことだがな」

「母さん?お前、まさかジルキンの王子か!?」

「まぁな。それでだ。獣人の確保は大体終わっている。全部は無理だったが兄貴が売り飛ばしやがった獣人のほとんどを買い戻した。今、オレの部下として雇っている。この騒動が終わったら国の中枢として雇うつもりだ。だから」

「心配するな。獣人との交流さえちゃんとできりゃ、ジルキンには今まで通りやってもらえばいいさ。ただし、外交に関してはお前がやれ。ジルキン女王では弱すぎる。それとお前には悪いが…」

「それに関してはオレもそう思っている。兄貴に関しては仕方ないさ。オレでも処刑は免れないと思っているさ。しかし、お前は黒女神を信じているんだな。見た目はただのガキにしか見えなかったがな」

「お前、本人の前で言うなよ。あいつは加減を知らんぞ?」

「あ、あぁ。肝に銘じておくよ」


 レオンが俺の事を覚えていたのは驚いたが、おかげで話がスムーズに済んだ。あとは黒女神の連中が、フィリップを止めてくれることを祈るだけだ。

面白かったら感想・評価・ブックマークよろしくお願いします。

今回は、なぜか何回も書き直しました。

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