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第532話 悪徳商会

「裏社会との繋がり……?」


 ジェイド達の事をイリアーテ商会が孤児院から引き取ったという事実だけで、エリック殿下には商会と裏社会の繋がりが見えたのか?


「デミトリはヴィーダ王国の奴隷制度について知ってるよね?」


 唐突なエリック殿下の質問の意味が分からず、戸惑いつつ過去アルフォンソ殿下に説明された内容を思い返しながら答える。


「不当に奴隷に堕とす行為は違法で、ヴィーダ王国法に則って犯罪奴隷又は借金奴隷と認められた場合のみ奴隷の身分になると聞いている」

「その通りだよ。兄さんから王都で起こった事件の顛末を報せて貰ったけど、デミトリはアルケイド公爵が違法な犯罪奴隷の人身取引に関与してた事も知ってるよね?」

「ああ」

「罪を犯した犯罪者を罰する為に犯罪奴隷に堕としたのに、その犯罪奴隷が別の犯罪者の手に渡って悪事を働いたら本末転倒でしょ?」

「確かにそうなってしまったら意味が無いな」

「だからそんな事が起こらないように奴隷の取り扱いには厳格な規則と幾つもの法律が設けられてる。犯罪奴隷に堕ちた犯罪者と犯罪奴隷を預かった人間は国が記録と監視して、不正が行われた時の罰則もとてつもないんだ」


 法整備を徹底する事によって奴隷が安易に犯罪者の手に渡ってしまい、命令に逆らえない都合の良い手駒にされてしまう事態を防いでいるのか。


 一介の犯罪者や犯罪組織では、迂闊に犯罪奴隷や借金奴隷に手を出せそうにも無いな。並の貴族家も無理だろう。そうなると――。


「犯罪奴隷の取引なんて危険な橋を渡れるのは王家に次ぐ絶対的な権力を有していて、隠蔽工作や不祥事の揉み消しが可能な公爵家に限られると言う事か」

「僕の事を気にして除外してくれたのかもしれないけど王家もそうだね」


 何となく会話を進めてしまったが、エリック殿下は何故急に奴隷制度の話を始めたんだ……?


 何でも言う事を聞く都合の良い手駒として、犯罪者に奴隷が使われていない事を強調する意味は……まさか――。


「奴隷と違って足が付かない従順な手駒として……孤児院が忌み子を犯罪組織に斡旋していると言いたいのか?」

「相変わらず察しが良いね。そもそも魔法が使えない事自体が珍しいのに、六人も同じ孤児院に預けられてる時点でおかしいよ」


 殿下の言う通りだな……偶然にしては出来過ぎている。意図的に集めたのであれば、それを可能にする情報網や裏社会との繋がりがあってもおかしくない。


「先程のジェイドの物言いはデミトリさんが指摘した通り、あまりにも一般常識からかけ離れていました。恐らく絶対に逆らったり逃げ出してしまわないように、幼少の頃から歪んだ情報を教え込まれていたのでしょう」


 リカルドの発言を聞き、一瞬怒りで頭が真っ白になる。

 

 忌み子である自分には社会に居場所がないと、そうジェイド達が思っているのは預けられた孤児院である認知が歪むような、洗脳に近い教育を受けて育てられたからだと言うのか……?


 忌み子の扱いについて聞いた時点で過去の自分の経験と重ねてしまい、腸が煮えくり返るような話だったが……。


「……反吐が出るな」

「件の孤児院はジェイド達からの聴取が終わったら指示を出して処すから! 落ち着いて」

「すまない……」


 気付かぬ内に魔力が揺らいでいたらしい。慌てて深呼吸をしながら魔力を収めていく。


「一旦話題を切り替えよう。話が大分反れちゃったけど、デミトリに残って貰ったのは廃坑の処理について相談したかったからなんだ」

「爆薬の撤去作業なら、確かに共鳴石を誤って起動できない俺が適任だな」

「違う違う!」

「エリック殿下、私からデミトリに説明させて下さい」


 ケイレブ殿がエリック殿下に断りを入れてから、ソファの上でこちらに身を乗り出して頭を下げた。


「デミトリ、帰還したばかりで本当に申し訳ないが君にはもう一度ヒエロ山に赴いて欲しい」

「頭を上げてくれ! ケイレブ殿の頼みであれば勿論だ。ただ、理由を説明してくれないだろうか?」

「快く引き受けてくれてありがとう。負担ばかり掛けてしまって申し訳ないけど、廃坑の近辺で雪崩を起こして欲しいんだ」

「雪崩??」


 魔法を使えばなんとかなりそうではあるが、何故――。


「端的に言ってしまうと廃坑の破壊が成功した偽装工作を行いたい」

「……やはりボルデにイリアーテ商会の人間がいるのか?」

「そうだ。このままだとジェイド達が帰還しない事を怪しむよりも前に、ボルデに滞在している商会員からの報告でイリアーテ商会に破壊工作の失敗が勘付かれてしまう」


 偽装工作をしたとしても何時まで騙し通す事が出来るかは分からないが、ケイレブ殿の言う通り何も対策をしなければ気付かれてしまうのは時間の問題だろうな。


「爆薬の撤去と屍人の処理を担当する部隊は、雪崩の被害状況の確認を行う調査隊の体で派遣するつもりだ」

「自然な人員の配備だな……上手くいけば当分廃坑が健在だと気付かれないかもしれない」

「それが狙いだ。ガスパーの事だから計画が成功したと聞いたらすぐにでもこちらに接触してくるはずだ。何となく彼の狙いは分かってるけど、少し泳がせて情報収集をしたい」


 情報収集か……。

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