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閑話 お供え物?

「今日は付き合ってくれてありがとう」

「私も楽しかったよ! 出来上がるのが楽しみだね!」


 城塞都市ボルデの商業区域に拠を構える雑貨工房を出て、ヴィラロボス辺境伯邸への帰路を辿りながら同行してくれたヴァネッサと語らう。


 アムール王国から帰国してからも忙しない日々を送っていたため、ゆっくりと二人で過ごせたのは本当に久しぶりだ。 


「あ、辻馬車が停まってるよ?」

「急いでないしこのまま歩いて帰らないか?」

「せっかくのお出かけだから私はその方が嬉しいけど……日が暮れる前に帰らないとアイリスが心配しないかな?」

「少しずつ俺がアイリスの傍にいない時間を増やそうとしている。今はセレーナとカミールがついてくれているし、少しだけ帰りが遅くなっても大丈夫なはずだ」


 先日リカルドと話し合った後、すぐにボルデの冒険者ギルドのマスターであるイーロイとも相談した上で手紙を出した。


 数日もしない内に返事が届き、快くボルデへの招集に快諾してくれたアイアン・フィストとトワイライト・ダスクが到着するまで、俺だけでなくヴァネッサ達も無理が無い範囲で人手が不足している冒険者ギルドの依頼消化を頼まれている。


 本来であれば今日も依頼を請けるはずだったが俺が我儘を言って時間を作って貰った……アイリスを預けているセレーナ達には申し訳ないが、帰宅する時刻は歩きでもそれほど変わらないので何とか頑張って欲しい。


「そっか! じゃあ歩いて帰ろう!」


 心なしかヴァネッサの声が弾んでいるように聞こえ、辻馬車に乗る選択をしなくて良かったと思う。


 日が落ち始め、吐息がはっきりとした白い霧に変わる程寒々とした石造りの街を、二人寄り添って静かに歩いていく。


 いつしか商業区域の喧騒も微かな羽音程度になり、凍てつく空の下二人の呼吸と足音だけが静寂に響き渡る。


「木工職人のお店を見たいって言った時はびっくりしたけど、リカルドさんに頼まれて視察に来たわけじゃなかったんだね」

「一緒に出かけたいと誘っておいて、そんな仕事紛いの事に付き合わせる訳がないだろう?」


 色々と情報を集めていたリカルドにセコーヤを取り扱っている工房について聞き、勧められた店を訪れたので、後で情報と照らし合わせるために感想を聞きたいと願われて答えてしまったらある意味仕事をした事になってしまうが……。


「ティシアちゃん、喜んでくれるといいね」

「神様への贈り物なんてした事が無いから何とも言えないが……少しでも感謝の気持ちが伝わってくれたら嬉しいな」


 出会い方が出会い方だったので当初はある程度トリスティシアに対して警戒心を抱いていたが、蓋を開けてみれば今日に至るまで一方的に助けられてばかりだ。


 恩を返したいと思っても方法が思い浮かばず、浅はかと思いつつ感謝の気持ちを込めて贈り物をしようと考えたが……何を送るのかは本当に悩んだ。


 彼女が欲しがりそうな物は出会い頭に求められた自分の魂位しか知らないので当然だ。


 流石に魂を渡す訳にも行かないので、考えた結果既製品よりはましだろうと手作りの何かを送る事を決めて、色々と悩んだ末木製の雑貨作りを体験が出来る工房を訪れる事になった。


「でも木製の器はナイスアイデアだよ! 今度アイスを作る時、マイ器があったらティシアちゃんも嬉しいと思う!」

「そ、そうだな」


 一番失敗しにくそうな物を選んだだけだとは言い出せそうに無いな……。


「頑張った先にアイスが待ってるって思うと明日からの依頼もやる気が出るね!」


 ヴァネッサの中ではアイスを作るのはもう確定事項みたいだな、次にまた時間の都合を合わせられるのは何時になるのかわからないが……いや、止めよう。


 あれこれと言い訳を考えず実現できるように頑張るしかない。


「久し振りのアイス作りになるが、俺の魔法も上達したし今度はもっとうまくできるはずだ。任せてくれ」

「うん!」

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