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第485話 土属性の魔法

「カミール??」

「あ、気にしないでください!」


 気付かれていないつもりみたいだが無理があるだろう……腕を上げて何やら合図をしていたみたいだが、遠方の建物の窓の中で一瞬何かが光ったのが見えた。


 霧の魔法の範囲外だが、王家の影の仲間に何か合図をしたのかもしれないな。


「あの追跡者達の事は忘れて、買い物に集中しましょう!」

「……そうだな」


 仲間とは言え、一応護衛? 対象の俺に余計な心配を掛けないという、王家の影としての矜持があるのかもしれない。これ以上聞くのは止めておこう。


「あれはなかまなの?」

「……」

「アイリス……仲間だけど気付かない振りをしよう」

「なんで?」


 素直に聞かれてしまうと流石に返答に困るな……。


「……そういう遊びだと思ってくれ」

「?? 分かった」

「遊びって……」

「カミールまで引っ掛からないでくれ。とにかくこの屋根から降りるぞ」


――――――――


「……相変わらず凄い魔法の腕ですね」

「足場を作る位カミールも出来るだろう?」

「足場は作れても普通は人を乗せて移動できません!」

「カミールは複数の魔法を同時に発動できるから、練習すればすぐに出来そうだが……」


 俺とカミールと違い、まだ地面から少し浮遊している状態の氷の足場に乗ったままのアイリスが、不思議そうに地面と足場の間に手を出し入れしながらこちらを見上げて来た。


「でみとり、わたしもまほうつかいたい!」

「買い物が終わって辺境伯邸に帰ったら時間もあるし、魔法の練習をしようか」

「やった!」


 いつか魔法に付いて聞かれるかもしれないと思ったが、たとえ不審な追ってから逃げるために発動した物だったとしても、戦闘以外の場面で魔法に興味を示してくれた事に言いようのない安心感を覚える。


 俺の為にチュパカブラを狩ってくれた時を除いて、アイリスは基本的に大人しく過ごすのを好んでいるようだし、出来れば戦いには巻き込みたくない。


「アイリスさんは魔法の才能があるんですか?」

「それはまだ分からない。試してみないと何とも言えないな」

「アイリスはまほうをつかえないの……?」

「そうとも限らない。だが魔法を使えなくても困る事は無いぞ? 俺も元々魔法は使えなかった」

「アイリスもこおりだしたい」


 困ったな……魔法の才能があったとしても、扱える属性次第だと伝えても納得してくれるだろうか。


「アイリスさん、魔法には属性があって自分の得意な属性以外は普通扱えないんです」


 俺が困っているのを見越してか、カミールが掌の上に小さな岩を顕現させてアイリスに見せる。


「? いしはだしたくないよ?」

「はっきり言われると傷付きますね……四大属性の中では確かに人気ではありませんけど……」

「アイリス、土属性も強力な魔法だぞ?」

「デミトリさん、気遣いが逆に苦しいです……」

「別に気遣いなんてしていないぞ?」


 土属性の魔法が不人気だというのは初耳だが、個人的にはそんな認識は一切ない。むしろ、過去の経験から苦手意識がかなり強い属性だ。


 父のボリスを始め、俺をメリシアで殺そうとした死体剥ぎ(ハゲワシ)、開戦派が送り出した刺客、ルッツ大聖堂で戦った聖騎士やアムール王国の冒険者……命を狙って来て相手の多くが使って来た魔法という認識がどうしても濃く残っている。


「おそろいがいいのに……」

「アイリス、俺はアイリスがどの属性の魔法が使えても、仮に魔法が使えなかったとしても、仲間なのは変わらない」

「まほうがつかえなくても?」

「俺も元々魔法が使えなかったし、むしろその場合でもお揃いだから心配するな」

「……うん!」


 上手く伝えられるかどうか不安だったが、アイリスが納得してくれたみたいで良かった……。


「デミトリさんの土属性の魔法に対する評価が高いのは意外でした」

「むしろ属性毎に優劣がつけられている事に驚いた。魔法は使えれば使えるだけで便利な物だろう?」

「! そう言えば、デミトリさんは魔法に付いて学んだ事が――」

「ないな」


 合点が言った様に手を合わせたカミールが魔法を解いて、宙に浮かんでいた岩が地面に落ちる。


「四大属性の中で、土属性の魔法使いの数が一番少ないんです」

「? 他の属性を扱える人間の方が多いのか?」

「あ、違います! 言い方が良くありませんでした。()()()()土属性の魔法使いの数が一番少ないって言った方が正しいですね」


 生まれ持った属性が土属性である確率の話ではないのか。少し言い辛そうにそう言ったカミールが、不安げに頬を指で掻く。


「つちはよわいの?」

「説明が少し難しいですね……勿論土属性を極めた魔法使いも居ない事はないんですけど」

「俺の印象だと強力な属性という認識だが」

「デミトリさんが戦ったのは、土属性の魔法使いの中でも魔法に秀でた方々だったのかもしれませんね。土属性の魔法は四大属性の中で一番魔力の消費が一番激しいので、燃費の悪さも相まってあまり評価は……」


 他の四大属性の魔法と比較すると気体や液体ではなく物質を生み出す分、魔力の消費が激しくなってしまうのは何となく腑に落ちるが……それだけが原因で、ヴィーダ王国で土属性の評価が低いのは正直驚きだな。


 あの死体剥ぎを褒めるのは気が引けるが、足元に小さな突起や穴を作る脆弱な魔法でも使い方次第で必殺の魔法になり得る。魔力の消費量の違いだけで評価が落ちるのは……。


「僕が王家の影に勧誘されたのも魔法の才能があるって言うのは建前で、本当はリーゼのおまけ――」

「カミール、ヴィラロボス辺境伯邸に戻った後アイリスの魔法の練習に付き合ってくれ」

「え!? 僕もですか??」


 何を言おうとしたのかを察してしまい、カミールが口走りそうになった言葉に無理矢理発言を被せて止める。


 とにかく発言を止めなければならないと焦り、後先考えずにアイリスの魔法の練習に誘ってしまったが……これもいい機会かもしれない。


「俺だけだとアイリスの質問に応えられないだろう? それに、違う属性を扱う魔法使いとじっくり話す機会なんて中々ない。 情報を共有すれば、互いに使える魔法が増えるかもしれない」

「デミトリさん……! 分かりました」


 以前カミールは二つの魔法を同時に展開できると聞いた。並の魔力量ではそんな芸当を出来ないだろうし、仮に魔力量が少ない中その術を習得したのであれば相当な努力を費やしたはずだ。


 カミールは決して誰かのおまけで王家の影に迎え入れられたわけではないと思うが……安易に付き合いの短い俺が踏み込むべき領域ではないだろう。


 俺に出来る事は限られるが……やれる事はやってみよう。

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アイリスはどう見ても戦闘民族で「ヒャッハー!」 デミトリ軍団の切り込み役だろうw
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