リンディア王城攻略組最前線―方眼紙に愛をこめて―
「白亜の......歴史ある王城だったはずなのだがなぁ……(汗)」
「っていっても大将、おいら達いっつも隣国やら辺境でバカ騒ぎしてたから王都よりも、暗い森だったり臨時でおっ建てた野営陣地とかの方が見慣れてますんで。もう、此処はこういうもんだったって事で良いんじゃないですかい?
その点じゃ.....ミリアさんとの方が本来、おいら達話が合うでしょう? で、どうなんです? ミリアさん、王都に来ると思いますか?」
「……忌々しい魔王怪異やら他国とのドンパチでなあ......。実を言えば、自分は......彼女が忌み子である事は間違いないが、お前の言うように戦士としては戦士としては他の異母兄妹よりもずっと話が合う。だから、フィーナ令嬢経由で応援も打診はしたのだが……」
「断られたので?」
「フォレスト領方面の戦いが激化している事も実際そうなのだが、あれは......アロンのヤツが本当に失敗してしまった様だな。フィーナ嬢を衆目の中で辱めようとした事もそうだが……彼女は深刻に王都に関して、疑心暗鬼になってしまった。「忙しい」の一言で見向きもしてくれんよ。
アロンのヤツの気持ちも分からんではない。実際ミリアが生まれた時の......ミリアの母が魔王怪異になってしまった時の出来事は人が死に過ぎた。
その時の事がずっと、胸に突き刺さって澱になっていたのだろうな。だがそれはそれこれはこれだ。単体で軍勢を召喚出来る上、魔王怪異も早期発見出来る様な存在を......私情で吊るしてどうする?
敵に廻られたら深刻な脅威に成り得る事くらい、当然察して余るべきだったろうに。もう少し道理が分かる者だと思っていたのだがな。
実際......門閥貴族の問題児共を手なづけるなどして......だいぶ乱れがちだったリンディアの中身を立て直してもいた。ただ……父はその辺りで見誤ったのだろうな。
アロンが問題児を制御した中に、ミリアやフォレスト領の......異界からの侵攻と特に激突する際に盾になるであろう派閥を入れる事が出来ると思ってしまった。挙句がこれだ…...」
「高いですねぇ......(汗)ええと、繰り返しですけど、ここ本当にリンディアの王城だったんですっけ?」
「今じゃ、「ライヘンバッハの塔―方眼紙に愛をこめて☆ー」だそうだ。あの『手からビーム出しちゃうおじさん』とやらが、ドヤ顔でアナウンスしていたぞ」
自分、ダンテ・マーレイユ・リンディアはこのリンディア王国の第3王子にあたる。雷の魔術が使える事とロングソードの腕が幼いころに立ったこと、そして宮廷よりも野駆けの方を好む癖だったこともあり、今年32になるが、軍務の方でずっと駆けまわっていた。
隣の合い方、キース・ソーレンは今年22の傭兵であり、戦地で出会ってから騎士でこそ無いものの、気が合ったもので気づけば本陣に参謀格として待機してもらう様になっていた。率直に言って我が国の中は200年前の勇者大暴れの頃合いから、ミリアの登場に至るまであらゆる物が硬直化しており、派閥間抗争が激化していた。
その点で言えば、自分も決して辺境でドヤ顔をしていられる立場だったわけではない。早急に自身が王位を狙っているか否かを明らかにするなり、他の兄妹の誰を支持するかを決めなければならなくはあった。実は......俺はなんだかんだ言いながら、私怨の気配の事を除くなら、案外アロンのヤツが適任ではないかと思っていたのだ。
アレが上に付きつつ、後は第2王女のシャロンの財布管理と人の心と無関係に推し進める政務処理に......最後はフォレストの連中の調整能力と人知を超えた部分が合わされば......まあ、本人たちに幸せがあるかどうかとは別問題にしろ、国は機能すると思った。
だが、それは完全に甘えだったのだろう。今では『手からビーム出しちゃうおじさん』とかいう訳の分からんテロリストに王城を乗っ取られた挙句に、その王城は何をどうやったのか知らないが、巨大な塔へと変貌してしまった。人によっては......
『そそり立つおじさんの塔』
......やらいう者もいる。ふんぞり返るの間違えだろう。
しかもアロンが黙殺しようとしていた、王都内7つの地域から大発生した魔王怪異も深刻だった。商業エリアには今や、巨大な大穴が開き、その中には人間の骨で構築された座席と舞台がある巨大な劇場がある。
迂闊にその中に入ると、何処からか道化の人形が舞台に上がり、人形の奏でる演奏を聞いたが最期体が骨まで砕けて人間楽器へと成り下がってしまう。ミリアによれば、そこから4つ下のフロアに元凶となっている嘆きの歌を奏でるオルガンがあるとの事だが、第一層の突破方法さえ未だ不明のままだった。
おじさんが撒いたコマンドとやらのおかげで……自分達、魔術師には効果が無いようだ......魔王怪異の浸食度合が一般人を深刻に喰い殺した報告などはあがっていないのだが、他のエリアに関しても似たような物であり、頭が痛い事この上なかった。
本当に……ミリアさえいてくれたら、土の権能で兵士を山と呼び出して、魔王怪異の攻略法を探るために、あらゆる手段が取れるのに。全て手探りでやらなければならない今の状況が心底恨めしかった。
「さっき、第7次攻略組が失敗したとの報告が入ってきやした。5階のホワイトソードを取った事によって、18階でドランゴンスレイヤーが手に入る事が判明したとかなんとか。わはは、おいら達がトライした時よりもだいぶ攻略が進みましたねぇ!」
「やってられるか! もう受け入れるしかないが何なんだこの塔は......! あのおじさんとやらは、本当に魔王怪異ではないのか......!?」
魔王怪異発生が予告された事であったり、おじさんとGGM団とやらの暗躍があったとはいえ、実は彼らの討伐自体はさほど難しくはないと考えていた。
王都に戻るなり、波動拳だかかめはめ波だか、空を自在に舞うGGM団やらの深刻な襲撃を受けたり、街を歩けば「門閥貴族だ2564てやる!」という輩が山と湧いた。
実際自分たちの到着までに、王都残留の騎士団達と無駄に激戦を繰り広げていた連中の練度は無駄に上がっており、挙句が「攻略wiki」だの、謎の暗号通信で襲撃が巧妙化していた事はあったが所詮は民兵だ。
少なくない犠牲を払ったものの配下の兵たちは連中の相当数を討ちとったし、民衆からの白い目もあったものの......組織化されていないならば、自分たちを全滅に追い込む事等で来やしまい。
何よりもリンディア王城は、襲撃者を迎え撃つ為の多くの策が講じてある上......なんでもヒメジというものにインスピレーションを受けたとの古い話が……非常に面倒な構造ではあったものの、自分たちのバックは国家である以上、総攻めすれば所詮ギャングの従兄弟程度の集団など、簡単に押しつぶしていけると思ったのだ。
中身とて十分に熟知しているし、秘密の地下通路もある。攻めようはいくらでもあるし、いざとなったら狙撃や潜入による暗殺も出来ると思っていた。なんなら自分がその役を担っても良いと、キースと話し合ってすらいて、実際決死隊も作ったのだ。
そして……奇襲をかけて、リンディア王城内部に入り、おじさんとやらがいる中央塔へ駆けてアロン救出も同時進行で行い......成功しかけた瞬間だった。なんか......ええと、なんか、王城が変形したのである。音を立てて、地上60階と後、恐らくおじさんの「えふえふ」笑いから推測するに、恐らく地下にも同じくらいの広さがあるであろう......謎の巨大建造物に。
「道理が……通じない! 中にはGGM団屈指の意味が分からんビーム使いやら、王都のどっかから拾ってきた様な魔王怪異が徘徊している上に......力推しで突破を試みれば......!」
「アレっすね……「ゆー・ざっぷ・とぅm9( ;∀;)」とか書いてある紙が1枚落ちてきて......最初からやり直し......ありゃあ......心が折れるぅ......」
「しかも入るときには、キッチリコインを1枚投下し、戦死した場合はスタート地点に逆戻り......。まあ、死んだのに何故か蘇生するのだが……死者こそ出ないものの精神がガリガリ削られていく。方眼紙地図は何処まで作成できた......?」
「もう、総当たりしかないっすからね。まだまだ20階前後を行ったり来たりっす。これ......おじさんと上手い事、交渉したりって選択肢はどうなんですかね? あれだ、塔の近くでおじさんの公開するコマンドを試したいとかで、子供とか大きい人とか、GGM団のインストラクターと遊んでいる人達がいるじゃないっすか。
あのうちのインストラクターを拉致ってみるとか......?」
「既に試した結果、それをやるとまた「ゆーざっぷ」で最初からやりなおしだ。それに1つ言える事があるが、あれと組めるという事は絶対にないと思え。あれは確かに王都では妙な人気が出たりしているが、本質は「他人の事等一切気にしない愉快犯」の類だぞ」
愉快犯とは言ったものの、本当は少し違うとも思っている。だが、あのおじさんとやらは単純に義侠心で動く様な類の者ではなく......恐らく、本当の本当にビームの道を究める事しか頭にない類の怪人だ。コマンドの撒き方1つ見てもわかるが、フォレスト領の面々に関しては、一定の関心があったようで手心を加えようとした節がある。
この辺はフィーナ令嬢の人徳の成果だろう。後は、幹部連中の陳情等で心を動かされた節もあったようだ。だが、ヤツのコマンドテロのおかげで、各地で政権に対抗する無法テロリスト集団等も随分発生する様になった。
しかもこれを、おじさんは「……君のいやがる事をずーっと考えていた☆」という事で、国の中を「サウスタウン」とやら......恐らく無法都市の代名詞にする事でやったと公言して憚らない。可及的速やかな討伐を敢行しなければ、恐らくこのトラブルは他国などにも飛び火する事間違いなしだった。
「……塔の外壁からの攻略......もう1度やってみるっすか? なんかこっちはこっちで登ると上から油が延々と落っこちてきて、それでも気合を込めて登ると、上から謎の美人お姉さんが「この塔は波紋以外を跳ね返す!」とか良い笑顔でナイフ投げつけてきますけど、だいぶルートも掴めてきたでしょう……?」
「ゆーざっぷが無い代わりに、選択肢次第で切断油が噴出されてくる事を考えれば、最後の手段にしたい......。やらされる兵が哀れだし、先陣を自分が切ろうとも思ったが俺は高い所だけは如何ともし難くてな......。波紋、コマンドは未だ出てこないままか......?」
「なんらかのそれじゃないかとも思ったんすけどね。ないままです。おや、はいはーい、ん、なんだってー?(彼らがいる所から下にいる兵隊さんが何かを持ってくる。)」
「どうしたキース。伝令か......?」
「シャロン様が切れかけているそうっす。このままの状況が続くようなら塔に火を放つ方向で火の魔術師を集めるとか。いやあ、ソイツは盲点だった……! そうっすよ、この塔油とか出るんすから、中の連中をまとめて始末するんでしたら、それが一番効率が良い……!
流石シャロン様、人の心とか持ってねえ! そこに痺れる憧れるー♡」
「おい......。中にはアロン以外にもおじさんの「れいじんぐ」とかいう技の直撃喰らって、とっ捕まった貴族たちもいるんだ。いなかった事にするなよ?(汗)」
......身内の情というよりは、実は政治の方がやたら強いのは隠しつつ声を凄ませてキースに言った。すると、キースはしばしの沈黙の後......
「もう焼いちましょうよぉ!? シャロン様が切れ散らかして、これ以降の突入のお代は手前の財布から払えとか言ってきてるんすよぉ!?(涙) コラテラルダメージっす! 戦争する上で仕方のない犠牲っすよ!」
実はキースも内心相当に精神がガリガリ削られていたらしい。実は......本音の本音を言えば......
「自分の財布もスッカラカンだ。王子であっても日々使える金額は無限ではなく......このまま本陣に留まり続けると財布をすり減らす事になる部下たちの殺意のケタも変わる......。さて、どうしたものかキース君、名案を聞こう?」
「焼きます!\(^o^)/」
......自分の忍耐が後、どのくらい持つのかちょっと自信が無い今日この頃だった……。




