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轟き照らすは金の龍  作者: 火蛍
銀龍
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アルムと少年

 その日も町から離れたとあるビーチでアルムがキメラと激戦を繰り広げていた。

 季節は夏真っ盛りになり、海開きが行われていたこともあって行楽客の姿もあった。

 アルムが警告で電撃を放ったことで人々は退避し、アルジェが残留しようとする野次馬を感知してそれを追い払うように周囲を旋回する。


 アルムと戦闘をしているヤドカリ型のキメラ、ハーミットクラブキメラは頑強な甲殻を武器にアルムと激しい肉弾戦を展開していた。

 両腕の爪でアルムの右腕と首を掴み、持ち前のパワーで押し込みながら激しく締め上げる。

 爪の突起がアルムの右腕と首に食い込み、断ち切らんとばかりにギチギチと音を立てる。

 甲殻が砂に塗れているせいでアルムの電撃も通りが悪く、至近距離での真っ向勝負を強いられた。


 だが過去に守りの硬いキメラとの交戦経験を重ねていたアルムはハーミットクラブ

キメラの攻略法を見出していた。

 首と右腕を押さえつけられたまま砂の上で踏ん張りを利かせると翼を大きくはためかせ、ハーミットクラブを抱えたまままっすぐに上空へと浮かび上がった。


 アルムはハーミットクラブを抱えたまま水しぶきを上げて海の中に飛び込んだ。

 そのまま水中に引きずり込み、放電を仕掛けた。

 海に入ったことで砂の守りが無くなり、さらに海に入ったことで抵抗が弱まったハーミットクラブの全身に電気が駆け巡る。


 ハーミットクラブキメラは電撃を受けたことで力が緩み、アルムから手を離した。

 だがそのまま海の底に沈むと砂の中に潜り込み、煙を巻き上げて姿を消してしまった。

 さしものアルムと言えども海の中では活動を続けられず、砂の中にいるキメラを追跡することもできないため、追撃を諦めてビーチへと上がった。

 戦闘を終えたことを感知したアルジェがアルムに合流する。


 『キメラは?』

 『取り逃しちゃった』

 『水の中に逃げられたのなら仕方がない』


 アルムとアルジェはキメラを取り逃したことを惜しみつつもその場を後にした。

 キメラと機械のハーフであるアルジェでは海に入ることにリスクがあるため、慣れない領域での取りこぼしを責めることはできなかった。

 

 周囲の人間が自分たちから一定の距離を置いていることを確認したアルムとアルジェはビーチから飛び去った。

 夏の熱気を上書きするように冷たい風が吹き、晴れた空に力強い雷鳴が轟いた。

 

 二体のキメラが去ってしばらくした後、行楽客はまた行楽に戻りだした。

 その中にはアルムたちの軌跡を追ってずっと空を眺め続ける一人の少年の姿があった。


 キメラの再出現を警戒しつつも英気を養っていた昼下がり。

 アルムはコンビニで買ったアイスを頬張りながらアパートまでの道を歩いていた。

 その手首に提げたビニール袋にはアルジェとカグヤのために用意したアイスも入っている。


 アルムがもうすぐアパートに到着するところまで歩いたその時であった。

 一人の少年がアルムを呼び止めた。


 「ねえ!もしかしてカグヤちゃんねるのアルム?」


 少年はアルムを呼び止めると彼女の傍に駆け寄ってきた。

 少年はアルムの見たところでは小学生ぐらいであった。


 「うん。そうだよ」

 「すっげー!本物だー!」


 少年はアルムが本物であることを知って大喜びした。

 初対面の人物ではあったがアルムは目の前の少年が喜んでいるのを見て嬉しくなった。


 「俺、アルムの大ファンなんだ!」

 「本当?嬉しいなぁ。あ、よかったらうちにおいでよ?」

 「マジで!?やったー!」


 少年の言葉にすっかり気をよくしたアルムは少年をアパートへと誘った。

 

 「キミ、名前はなんていうの?」

 「俺はツバサ!」

 「ツバサはこの辺に住んでるの?」

 「いや、普段は県外に住んでるけど今は夏休みで爺ちゃんちに遊びに来てるんだー」


 アルムとツバサは気さくに会話を交わす。

 そうこうしている内にあっという間にアパートまでたどり着いた。


 「さあさあどうぞ。今ならアルジェもいるよ」

 

 アルムは意気揚々とツバサをアパートに招き入れた。


 「たっだいまー!」

 「おじゃましまーす」


 アルムとツバサがアパートに足を踏み入れると、冷気でガンガンに冷え切った部屋の中でアルジェがソファに寝そべりながら一人スマホゲームに打ち込んでいた。

 彼女は完全にくつろいでいた。


 「おかえり。その子は誰」

 「ボクたちのファンなんだってー」

 「……」

 

 アルムの呑気な発言を聞いたアルジェは起き上がってソファから離れるとアルムの腕を引っ張って耳打ちした。


 「カグヤの許可なしに家に入れるのはマズいと思う」

 「あ、確かに」


 アルジェの一言にアルムはふと思い直した。

 配信者として特定のファンと親密になるのはよくないとカグヤが時折口にしているのを思い出したのである。

 しかし自分から招き入れてしまった都合上、追い返すわけにもいかなかった。


 「どうしよう。カグヤが帰ってくる前に帰ってもらうのがいいかな」

 「それがいい。今日のカグヤの勤務時間は午後五時まで」


 アルムとアルジェはカグヤが帰ってくるまでの制限付きでツバサをもてなすことにした。

 アルジェはカグヤのシフトと勤務時間を把握しているため、逆算は容易であった。


 「お待たせ。何して遊ぶ?」

 「ねえねえ、アレやってよ!配信で見せてる角と尻尾出すやつ!」

 

 アルムが語り掛けるとツバサは角と尻尾を出すことを懇願した。

 それを聞いたアルムとアルジェは困ってしまった。

 配信ではキャラ付けとして角と尻尾を見せてはいるがカグヤたちカナメ家以外の前で直に見せたことはないのである。


 「やってくれないのー?」

 「うーん……しょうがないなぁ」


 ツバサの頼みを断れず、アルムは角と尻尾を見せた。

 アルムがやるなら自分も同じだとアルジェも角と尻尾を見せる。

 配信画面越しではない本物の姿にツバサは目を輝かせた。


 こうして、予期せぬゲストにアルムたちは振り回されることとなるのであった。

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