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「さて、どこから話そうか」


ふかふかで触り心地の良いソファーに何故かおねえさまと並んで座っている状況に目が白黒する。

あの後、おねえさまに連れられて、学院寮にあるおねえさまの自室にいた。

侯爵令嬢であるおねえさまのお部屋はシンプルながらも非常に質の良いもので揃えられている。


「何か別のことを考えている?」


ふわりとおねえさまの香りが強くなり、おねえさまのご尊顔が目と鼻の先にあることに気がついた。


「あ、あの、いったいなにが起こっているのか…」

「ああ、ふふ…混乱している顔も可愛いなぁ」

「…おねえさまの笑顔、尊い…」


ぼぅっと美しい笑顔に見惚れていると、微笑みを乗せたままおねえさまがこてんと首を傾げる。


「先ほども口にしていたが、その"おねえさま"というのは?」

「え!あ、ええと、その!」


無意識に心の中でいつもしている"おねえさま"呼びが口から漏れてしまっていたことを知り、汗が出る。


だって本当はおねえさまが好きすぎて、ずっと影から見つめていたなんて知ったら気持ち悪いと思われてしまうだろう。


なんとか誤魔化すことはできないかと考えを巡らせるが生憎なにも思い浮かばなかった。

なぜなら目の前に憧れのおねえさまがいるのだから。


「サルビア嬢?」


極め付けに先を促すように名前を呼ばれて、私は心の中で両手を上げて降伏して、全てを暴露した。


「…すみません。気持ち悪い、ですよね」


全てを聞いてぽかんと驚いた顔をしているおねえさま、いえ、ルディアナ様に私は土下座をする勢いで頭を下げた。


「で、でもでも、決してルディアナ様を傷つけるつもりはなかったんです!あのくず…王太子では結婚後も苦労されると思って、その、差し出がましいこととは思いますが、ええと、、」


嫌われても仕方がないと思いつつも、惨めにも言い訳を重ねてしまう。

だって嫌われたくない。

頭を下げたまま言い募ったからかじわりと涙が滲む。

泣くなんて卑怯なことしたくない。

優しいルディアナ様は許すしかなくなるだろう。

ぐっと唇を噛んで言葉を待つ。


ふっと頭上から息が漏れるのが聞こえた。

泣いているのだろうか。

どうしよう。


「あの、本当に申し訳…」

「ぷっ、あはははははは!!」


予想外に笑い声が聞こえて、私は弾けるように顔を上げた。


「ルディアナ様…?」

「あは、ちょっと待って、あはははは、ふふ」


ひとしきり笑った後、滲んだ涙を拭いながらルディアナ様は優しい瞳を私に向けてくださった。


「ああ、面白かった。なんだ、そうだったんだ」

「ええと…?」

「可愛い()()()()。サリーと呼んでもいいかい?」


いきなりの呼び捨て&願ってもない愛称呼び。

喜んで!とばかりに首を縦に何度も振る。

そんな私ににこりと笑って両肩に手を置いた。


「サリーは、私のことが好きなんだね」

「はい、それはもう!」

「よかった。じゃあ何も問題ない」


片手は頭の後ろに添えられて、そのまま背後に倒れるように力がかけられる。

ぽすりと軽い音がして、気づけば視界が変わっていた。


きらきらと光が反射するシャンデリアと天井、その手前にルディアナ様の美しい微笑み。

そして私の頬をくすぐる柔らかなプラチナブランド。


つまり、ソファーの上で、ルディアナ様に押し倒されている状況である。


「お、おおおおねえさま?!?!?!」


動揺して思いっきり辞めたはずの"おねえさま"呼びをしてしまう。


「ごめんね、サリー。"おねえさま"じゃないんだ」


しゅるりと胸元のリボンを外し、ボタンを外すルディアナ様。


だ、だだだだだめですぅぅ!!!


両目を手で覆って視界を隠す。

見てはいけない、そう思う。

しかし頭の片隅で悪魔が囁くのだ、

こんなチャンスは2度とないぞ、と。


そろりと指の隙間から覗いて、私は目を見開いた。


はだけられた胸元にはあるはずの膨らみはなく、代わりに逞しい筋肉がついていたのだから。


「こういうことなんだ」


指の隙間からしっかりと凝視している私に、笑いかけながらそっと手を目から外される。

おねえさまではなくて、


「お、おにいさま…?」


混乱のもと呟くと、ルディアナ様は再び声を上げて笑った。

ひとりしきり笑い終えたルディアナ様は蕩けるように破顔した。


「ふふ、君が私を好きなら問題はなにもない。私も君が好きだよ」


※※※※※※


気がつけば学院を卒業と同時に実はおにいさまだったおねえさまの奥様におさまっていた。


さらには公爵家のご令息ではなく、後継者争いから離れるためしばらく公爵家に滞在していた隣国の第二王子様だった。


「さぁレディ、お手をどうぞ」


馬車を降りた先でエスコートしてくれる優しいルディアナことルデュアル様。

もちろんスカートではなくシルバーグレーのベストにスラックスというなんとも素晴らしい出立ちだ。


おねえさまのときは緩いウェーブだったプラチナブランドの髪はストレートになっており、後ろに一つで結ばれている。

髪を切ろうとした時に私が悲しい顔をしていたらしい。


風に攫われる髪の毛一筋さえも完璧です…!


ついつい見惚れてしまって、再び名前を呼ばれる。


「サリー?」

「す、すみません…」

「ふふ、サリーは私の髪の毛がお気に入りだね」


優しく笑うルデュアル様に再び見惚れそうになりながら、気を引き締める。


いけない、いけない…

今日は新しい暮らしが始まる日なのだから。


差し出された手のひらにそっと手を重ねると優しい力でエスコートされる。


ふと、ルデュアル様の麗しいお顔が耳元に近づき、そっと囁く。


「屋敷に着いたら思う存分堪能するといい、髪の毛もこの私も」


艶めいたそのお声に顔が一瞬で真っ赤に茹で上がったのが分かった。


これからも一波乱ありそうだけど、とりあえず憧れの方と夫婦になれて、私はとても幸せです!

もしかしたら後日、ルディアナ目線の話をあげるかもしれません。

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