㉖ 伏兵現る
「やあ、キミ。こんなところで、ナニをしているのかな?」
あくまでも快活そうに、そう語り掛けるその青年は、真田雪村だった。彼の見た目は17歳の高校生。しかし、今の中身は……。
(ま、まさか、貴様は……!?)
「うん、そうだよ。2003年のボクさ。精神体だけを、時空の中に跳ばして、高校生のボクの中に入っているんだよ。」
(ニンゲンに、そんな事が……?)
「普通の人には、無理だろうね?でもコレ、昔、時空違いの姉の、雪子さんもヤッていたワザなんだよ。彼女に出来る事は、当然、ボクにも出来るんだ。」
(バ、バケモノめ!)
「キミには、言われたくないなあ……それより、どうする?ボクはこのまま、キミを握り潰して、完全に滅却する事も、出来るんだけど?」
(……ヤメてくれ!)
「精神体の命乞いか……滑稽だね?キミを生かして帰すには、条件が有る。」
(何だ?何でもするぞ。)
「簡単な事だよ。一つだけ、四次元の世界で、宣伝しておいて欲しいんだ。」
(……。)
「このボク、真田雪村が存在する時間軸に、二度と手を出すな!ってね。もちろん、過去・現在・未来に渡ってだよ?」
(……分かった。皆に伝えよう。)
「もしも、今後、そんな動きを少しでも、このボクが観測したら……。」
(……どうするつもりだ?)
「……キミたち四次元人の世界を、丸ごと五次元的に折りたたんで、消してしまうからな!」
(何を血迷った事を……そんな事出来る訳……。)
「……ボクは気づいたんだ。ボクが出来ると信じて、具体的に想像した事は、全て実現可能なんだってね?」
(この、バケモノめ!)
「また、そんな事を言う。せめて、太陽神アモン・ラーと呼んで欲しいものだね?」
雪村はニヤリと笑って、その黒い塊……四次元人の精神体を、空高く放り投げた
それは、どんどん空中を上昇して行き、やがて虚空に消えた。
その様子を見届けた、2003年の雪村の精神体も、自分の世界に帰って行った。抜け殻になった17歳の雪村は、正気を取り戻した。
「アレ?何でボクは、朝っぱらから鶴舞公園に居るんだ?……まあいいか、ついでに散歩してから、帰ろうっと。」
彼は、このような異変に、すっかり慣れっ子になっていたのである。
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数日後の木曜日。
昼休みに、高校の校舎の屋上に集まった、仲良し男女4人組が居た。
それは、鈴木圭子、佐倉瞳、花井実、町田加恋だった。
「なあんか、もう一人、いつもここに、居たような気がするのよねえ。」と瞳。
「渡辺正人くんの事かい?彼なら春休みに旅行に行ったまま、今でも行方不明だよ。」と実。
「そのせいかしらね?何だか心に、ポッカリ穴が開いたような気分だわ。」
そう言ったのは委員長だった。
「私、ここに来ると、何か楽しい事があった気が、するのよねえ。」
そう言ったのは、加恋だった。
4人は一斉に「はあ~あ。」とため息をついたのだった。
全員、渡辺くんの記憶と共に、例のチカラも失っていたのである。
やはり、彼らのチカラは、四次元人の影響で発現したモノの様だった。




