いきなりチーム壊滅の危機!?ゴブリン本拠地急襲!!
――あの日、私は信じていた。
「大丈夫だよ。俺はアキナから離れないよ」
その言葉を。
その優しさを。
そして、私たちが“同じ未来”を見ていることを。
だけど、裏切られた。
「……俺は、お前みたいな頭の悪い女は嫌いだ」
あまりにも唐突で、あまりにも冷たい言葉だった。
でも――分かっていた。
あれが本心じゃないことくらい。
私は…私たちはみんなのために戦ってきた。
創造神に選ばれ、大巫女になり、救世主として邪神と戦った。
そう信じていた。
けれど真実は違った。
私たち大巫女は“創造神の貢物”だった。
正義のために戦う少女が絶望する姿を、創造神は好んだ。
無垢な私たちが選ばれた理由は、それだけ。
そして――みんな、それを知っていた。
裏切られたのは私たちの方だった。
英雄なんて、最初から用意された“生贄”にすぎなかった。
それでも、見捨てない子がいた。
「大巫女は創造神を討つための“駒”だ。利用価値があるから優しくした――それだけのことだ」
アサヒ君はそう言って、すべての罪を背負った。
私を守るために。
私が死刑にならないように。
そして私は――その子を殺した。
世界を救うために。
英雄になるために。
……それが、私の罪。
その日からの毎日は、地獄だった。
眠れば悪夢。
目覚めれば後悔。
胸の奥に残るのは、あの子の温度だけ。
もし時を戻せるなら。
もし蘇ることができるなら。
もし、もう一度だけ会えるなら――
私は迷わず、アサヒ君の元へ行く。
――そして今、私はまた戦場にいる。
アサコ ― 数分前 廃墟の旅館・地下1階廊下 ―
足音を殺し、崩れかけた廊下を進む。
天井のヒビは深く、壁の隙間から吹き込む風は骨の芯まで冷たい。
まあ、倒壊する前に任務を終えれば問題ない。
窓から外を見たら、巨大な足跡があった。まるで隕石でも落ちたみたいだ。
アサコ(ここにもダイダラボッチの足跡か。観光地だった頃が懐かしいな)
三年前。
魔王が現れて催眠術で大巫女たちを操り、創造神を暗殺した。
だけどトモエが力を継ぎ、アキナが破壊神として覚醒したことで世界は辛うじて救われた。
……ただし、魔王の遺体は見つかっていない。
アサコ(今は関係ない。任務に集中)
今回の任務は、人質救出。
この廃旅館に巣食うゴブリンが女性を攫っているという情報が入った。
囮は破壊神アキナ。
救出班は私とトウカ。
役割は明確だ。
アサコ(しかしゴブリンね。日本じゃ珍しい)
六年前の邪神大侵攻の混乱で一匹だけ流れ着き、気づけば旅館一棟を本拠地に全国へ増殖中。
アサコ(猪みたいな見た目してるのに繁殖力はゴキブリ並み。趣味も悪いし)
だからこそ、今回の作戦で本拠地を叩く。アキナが暴れている間に、私たちが地下から人質を救出する――はずだった。
ゴブリンA「1階ロビーに侵入者ゴブ!容姿からは天乃アキナ!!」
アサコ(おや)
曲がり角の向こうから金属音と怒号。
覗くと――
ゴブリンB「アキナ!?魔王アサヒを倒した破壊神の小娘ゴブか!?」
ゴブリン隊長「狼狽えるなゴフ!精鋭重装部隊、前へ!」
……重装部隊?
鎧、盾、槍、大剣。
旅館の地下にいる装備じゃない。
アサコ(いや、国ひとつ落とせるレベルだろ、これ)
アキナがいても正面突破は無理。
私とトウカを合わせても無理。
撤退一択。
私は静かに後退し、トウカに合図を――
アサコ「あれ?」
いない。
さっきまで後ろにいたはずのトウカが、忽然と消えていた。
アサコ(そういえば、“アキナを一人にできない”って呟いてたな……まさか戻った?)
アサコ「マジか」
私の命、そんなに軽かったっけ?
ゴブリンC「ゴフ?」
曲がり角からゴブリンが顔を出す。
目が合った。
アサコ「マジか」
群れがこちらを向いた。アキナの暴れっぷりに釣られて移動中だったらしい。
最悪のタイミング。
アサコ「……クロイヌヤマトでぇす。宅配物をお届けに参りましたぁ。サイン、お願いしまーす…」
両手を広げ、にっこり笑う。
もちろん手ぶら。腰には刀。
どう見ても宅配業者ではない。
ゴブリンたち「……」
沈黙。
空気が凍る。
アサコ(……いや、なんで宅配で切り抜けようとした、私)
羞恥で死にたくなる。死なないけど。
ゴブリンB「うおおおおおっ!!」
斧を振りかざして突っ込んでくる。
アサコ「わっと」
軽く跳ねて距離を取る。足場は悪いが問題ない。
ゴブリンA「新しい侵入者フゴ!神祓特務隊フゴ!!」
神祓特務隊――
神の力を持つ少女たちによる戦闘特化部隊。
ちなみに私はその一員。
高校一年、神祓学校所属。
授業と任務の両立は地獄だが、給料は破格。
アサコ「はぁ……これ、私一人でやるのか。割に合わないな」
ため息をひとつ。ゆっくりと刀を抜く。刃が鞘を離れる音が廃墟の静寂を裂いた。
ゴブリン隊長「殺すなフゴ!生きて捕らえて人質にするフゴ!!」
ゴブリンたち「フゴッ!!」
一斉に突撃してくる。その勢いは確かに脅威だ。
だが、恐怖はない。
アサコ(さて、どうしたものか……)
私は静かに構えを取り、ゴブリンの群れへと歩を進めた。
――この瞬間、地獄の幕が上がる。
……というか、お互い地獄を見る。
補足
【秋山 朝子】
黒髪ポニーテールの高校一年生。神武剣流派の最後の弟子で、神祓特務隊に所属する実力者。
長身でボーイッシュな見た目から“王子様”と呼ばれるが、実は成績が壊滅的で退学寸前。
このままでは退学=大巫女資格の剥奪という危機的状況にある。
戦場では冷静沈着、教室では補習地獄。常にピンチと隣り合わせの少女。
【神祓特務隊】
神祓特務隊:神使と契約した少女たちによる、対邪神・魔族専門の戦闘部隊。神祓高等学校に所属する生徒の中でも、特に戦闘適性の高い者が選抜される。任務は命懸けだが、報酬は高額。
制服は軍服とセーラー服が合わさったような服装。
【ダイダラボッチ】
ダイダラボッチ:魔王が召喚した超巨大神使。元は日本神話に登場する伝説の巨人だが、本作では“世界を滅ばす兵器”として登場。足跡ひとつで山が崩れる。




